【今川直人・農協の核心】農福連携(1)2025年4月14日
農福連携の原点がここに
「1997年の家族会発足から20年、精神障害者と呼ばれる人たちと共に歩いてきました。『力の弱い野うさぎが、遠くの人参畑まで出掛けていって人参を手に入れるには、途中で出会う外敵から身を隠せる草むらが必要なのです』という中井久夫先生の文章から"草むらの会"と言う名前をつけ...
一生、完治という事の少ない人達が少しでも相対的貧困に陥る事のないよう、もう一度彼らの再生を願って...家族のみならず親戚へも影響を及ぼしてしまう、それは社会の根強い偏見がある事に他なりません。
偏見を取る為には、もっと彼らが胸を張って堂々と出ていける社会、そして彼等が望んでいる、生活を充実させ、経済的にも自立して生きて行ける社会を作る事だと思います。
より社会への信用と信頼を得る為、より安定した組織作りのため、...農福連携、企業連携、地域連携、ソーシャルファームを掲げ社会福祉法人草むらを設立します」
八王子市の社会福祉法人「草むら」 (理事長 風間 美代子氏)の「設立趣意書」の抜粋である。障害者支援に関わる関係者とくに近親者の、自然を相手にする農業への思い、農福連携を障害者就労支援の第一に考えていることがよくわかる。ソーシャルファームとは就労に困難を抱える人もサポートを受けながら共に働いている海外に多数存在する社会的企業。
福祉主導の農福連携
昨秋、居住地(小金井市)の関係機関から「農福連携のことなら八王子」と言う情報を得た。JA八王子に紹介されたのが社会福祉法人「草むら」の就労継続支援B型事業所の一つ「夢畑」(所長河野祥子氏)内の認定農業者(株)グリーン・ガーラ社長荒井康弘氏であった。視察した11月はしいたけ、野菜の出荷最盛期であった。八王子市は都内最大の農業地帯である。
農福連携の「福」の主体NPO法人「多摩草むらの会」は2004年に設立された。同会は2016年に農地所有適格法人(株)グリーン・ガーラを設立(2019年認定農業者に)、2018年に認定NPO法人格を取得、社会福祉法人「草むら」を設立する。作目は菌床しいたけ、野菜・畑作物が中心である。販路は企業の協力もあって多岐で、農協出荷もその一つである。利用者(障害者)を指導する職員は都農業会議所が紹介した就農希望者(夢畑は4名)、市内医療機関との連携も強い。メディアの報道、内外団体・都知事等の視察、福祉関連各種の夥しい受賞等高い注目度と評価である。
理解・意識から実践へ
意識改革は行動の変容つまり実践によって証明されるとする立場がある。「福祉」はとくに直接の関わりすなわち実践が問われる分野である。近親者の障害者再生への願いは切実である。就労支援は互恵的である。就労継続支援事業B型(雇用・就労共に困難)の工賃(賃金)の中で農業部門は平均を上回っている。習熟度に応じて変動することなどを考慮すると、障害者が相対的に農作業に適していること及び農家の対応が良心的であることがうかがい知れる。グリーン・ガーラは福祉に内包される農業で、支援事業所に作業を委託する形をとっている。他県の一般農家では出来高や面積請負など交渉で決める例が多いようである。関係者の農福連携への期待は大きい。
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