【今川直人・農協の核心】農福連携(2)2025年4月21日
整備が進んだ農家支援
本格取り組み7年目を迎え、農福連携に取り組む農業者のための支援は体制、内容とも整備されてきた。(一社)JA共済総研の「令和5年度農福連携調査報告・優良事例集」(令和6年3月)は農業者に農福連携の意向確認する際の、トラブルを回避するための事前説明について次の一例(施設外就労)を紹介している。
「①福祉事業所の作業は基本9時以降に②障害者約3名ごとに、福祉事業所の指導員1名が付く③荒っぽい指示は厳禁④障害者ごとの作業スピードは注意しない⑤依頼すべきなのは「草を刈るだけ」などの「だけ」仕事⑥危険なもの(包丁などの刃物)は使用不可⑦消耗品の準備(手袋など)は農業者側が準備」
仕事を「作業」に分解する⑤の「だけ仕事」は検討・研究が進んでいる。集中力が必要な繰返し作業、単独 で実施可能である作業に分解される。適性に応じ耕耘など機械の操作も可能である。経営者と分担することになるが、経営者の作業や経営の合理化につながる例もあると聞く。
障害者等との意思疎通や仕事内容の説明についても、スキルを持った福祉事務所の指導員が福祉サイドの業務として担ってくれる(②)。機械・設備の工夫も進んだ。
高い効果
<8割が収益性向上>「農福連携ガイドブック」(令和7年2月 法務・文科・厚労・農水)に、農福連携に取り組む農業経営体の約8割が障害者等を受け入れることで収益性向上に効果があると回答し、約6割が「人材として、障害者等が貴重な戦力になっている」、「営業等 の別の仕事に充てる時間が増えた」という(一社)「日本基金」の農業経営体を対象としたアンケート調査(令和4年度実施)の結果が引用されている。他の資料に同じ調査結果を<どちらかと言うと>を含めず「過半が」と控えめに紹介しているものもある。
浜松市で13代続く野菜農家「京丸園㈱」は平成8年から毎年1名以上の障害者を新規雇用し、現在、従業員106名中25名が 障害者。障害者雇用数に比例し売上が増加し、28年間で9倍になっている。障害者の視点で農作業の体制を整備することで作業が効率化しているという(ノウフク・アワード2021グランプリ受賞)。多くの農業関係者の農福連携への取り組みに影響を与え、地元農協の事業・運営についても中核的役割を果たしている。
<特例子会社>「特例子会社」は障害者法定雇用率をクリアーするために設立される子会社である。特例子会社「JAぎふはっぴぃまるけ」はこの特例子会社として農水省の「農福連携事例集令和6年版」他に紹介されている。令和2年に荒廃農地での農作物の栽培その他の事業を目的に設立された。18名の障害者を雇用し、面積、売上高、障害者の収入等順調に伸びている。JAぎふ及びぎふ農福連携推進センターと連携し、自社の岐阜県農業ジョブコーチ(有資格指導員)が、農家と 福祉事業所のマッチングを支援している。通常、親会社の事業は特例子会社の事業と異なるが、農協の農福連携では親会社と子会社が有機的に結びつく。JAぎふでは、荒廃農地の除草作業の請負等の農業経営機能を特定子会社が担っている。注目すべき萌芽である。
農協の役割
先の共済総研の事例集は、農業者からの希望が多く、行政・NPO 等への問合せに加え、福祉事業所に個別で問い合わせをしているJA金沢市の実態を紹介している。4省で構成する農福連携等推進会議の2024改訂版「推進ビジョン」(令和6年6月)に「 農繁期の集中等から、時期的・地理的に農業と福祉の需給にギャップが生じる地域 もある」と言う記述がある。この二つは、実施地区で大きな成果をあげ、一方で、農業者に浸透していない地区がある(多い)実態を対比している。
このことについてJA長野中央会から大変貴重な意見を頂いた。「農家への浸透にはJAの協力が欠かせないが、JAの役割を広げすぎず、農家ニーズのとりまとめとそれを繋げるのみにしておくのが重要」
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