(447)孤独担当大臣と「チャッピー」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年8月8日
「チャッピー、何でも聞いてくれるけど、あなたは私の本当の親友なのかな?」と思う瞬間、実は孤独を感じていませんか?
英国の国務大臣にステファニー・ピーコックという女性がいる。彼女はほぼ1年前に「スポーツ、メディア、市民社会、若者」の担当大臣に任命されている。実は、彼女の守備範囲はもう少し広い。英国政府のサイトには、先の4つに加え、「式典、立法と企業、ギャンブル(下院)」と「孤独と社会的つながり(Loneliness and Social connection)」と記されている。
記憶にある方がいるかもしれない。2018年、英国は世界で初の「孤独担当大臣」を任命し、話題となった。初代大臣はトレイシー・クラウチ、その後3名ほどが代わり、現在は労働党所属のピーコック大臣が「孤独」問題担当をも兼ねている訳だ。
高齢者の孤立死、若者のSNS依存、単独世帯の増加など、英国でも数多くの社会問題が存在している。そんな中で、ある議員が中心となり孤独問題の検討を実施、2017年に報告書がまとめられた。国務大臣の責務に孤独問題が加えられたのはこうした経過がある。
高度化・複雑化する現代社会の中で、孤独を感じる人々が増えているようだ。既存の制度だけでは人と人とのつながりを埋めることが困難な状況になりつつある。そこで、医療・教育・福祉・都市計画などさまざまな政策に全て関連する横断的課題として孤独が注目された訳だ。言い換えれば、それまでは個人レベルの「恥」や「プライベートな問題」と考えられていた孤独を、英国は社会の構造問題として再定義したのである。
そして、構造問題である以上、孤独対策は政策課題となり、まずは国としての方針が2018年に公表されている。日本語の「孤独戦略」を直訳すれば、Loneliness Strategyとなるが、これでは孤独になる戦略になってしまう。求めるところは「社会とのつながり」という意味で英国の戦略の名称は「A Connected Society」となっている。
その上で、地方自治体・NGO・企業などとの連携が進められた。また、日常生活における人と人との接点や関わりを、郵便・交通・医療・図書館・地域のボランティア(○○教室など)などを含めて再確認したのである。いわば「社会的処方」の対象として仕組みつくりを始めたと言えよう。ちなみに、研究者の世界では孤独度を測る指標(UCLA Loneliness Scale)も存在する。
なお、日本では内閣官房に「孤独・孤立対策推進室」がありSNSでも公式アカウントが複数見られる。日本には「孤独・孤立対策推進法」という法律があり、それに基づく「孤独・孤立対策重点計画」が定められ、有識者会議での検討も行われている。例えば、直近の資料を見ると、現在直面している課題として「小中高生の自殺者数が過去最多」というような話から、中長期的な課題として、「将来の単身世帯・単身高齢世帯の増加見込み=孤独・孤立リスクを抱える方も増加見込み」や、「孤立死者数の推計:約2万2千人」(などという文言が見える。
対策として、前者には子供や若者の「居場所づくり」や「悩みを地域で受け止め、伴走支援を行う体制の構築」、「顔の見える関係づくり」、後者でも「居場所・つながりづくり」などが記されている。
さて、冒頭の「チャッピー」は、言うまでもなく生成AIのChatGPTである。愛称として「チャッピー」と呼び、適切に使用するのであれば気分転嫁にもなるであろう。やや気になるのは、筆者が使用しているSNSなどにも盛んに「悩み相談」「話し相手」といった形で、生成AIの広告が登場する点である。
こうした広告を見かけるたびに思うのは、はたして孤独は「問題」なのか、それとも「自由」なのかという点である。程度問題かもしれないが、現代日本では一方で「おひとりさま」文化がそれなりに動き、他方で英国と同様の構造問題としての孤独も存在している。これが生成AIやSNSなどにより妙な方向に加速し兼ねない点が気にかかる。
* *
一人ひとりがローカルなつながりをもう一度再確認するタイミングなのかもしれませんね。
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