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市場メカニズム依存症がもたらす災禍 【小松泰信・地方の眼力】2025年11月19日

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食べ残し多い都会の隅で餓死 川越 麦そよぐ(毎日新聞・11月16日付・仲畑流万能川柳より)

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米価高止まり

 農林水産省は11月14日、全国のスーパー約1000店で11月3~9日に販売されたコメ5キロ当たりの平均価格(税込み)が4316円になったと発表した。2週連続の上昇で、過去最高値を更新するとともに、4000円台は10週連続。新米価格の高止まりや随意契約による備蓄米の流通量減少が、その背景にあるとみられている。昨年同期間が3458円であるから24.8%の上昇。2024年の上半期が2000円台前半であったから、倍近くの価格となり、いわゆる「高止まり」状態。

戸惑う農家

 この「高止まり」状態を受けて、九州の生産者や流通業者の間で戸惑いが広がっていることを報じているは西日本新聞(11月19日付)。増産で2025年産が余り、価格下落の可能性が出てきたことに加えて、「増産」を掲げた石破政権から高市政権に交代した途端、「増産」方針が撤回され、コメ政策の先行きが混迷を深めているからだ。
 福岡県糸島市の生産者は「米価高騰は流通業者が(同業他社と集荷価格の)綱引きをした結果。需給を反映した価格になっていない」と憤り、「(60キロ当たり)2万~2万5000円で集荷してくれたら、後は政府の支援で条件が悪い中山間地でも稲作を続けられる」と、持続的稲作が可能と考えられる集荷価格を例示している。
 米国産のカルローズ米が、1キロ当たり341円の関税を加えても5キロ3000円台で店頭に並んでいることから、国産米が輸入米に市場を奪われかねない状況も伝えている。
 「カルローズ米が新米と同じくらい売れている」(九州の大手流通業者)。
 「備蓄米の販売が9月でほぼ終わり、代わりに輸入米の販売が伸びている」(九州経済産業局調査室長)。
 「牛肉のように、コメも国産と外国産が店頭に並ぶのが当たり前になるかも」(コメ卸売業者)。
 記事によれば、コメ不足による価格上昇を受け、九州の主食用米の作付面積は25年に14年ぶりに増えた。26年産の作付けを農家が決めるのは年明けで、「引き続き生産過剰気味になるのでは」との農家の不安の声を紹介し、「消費者の国産米離れを防ぎ、コメの生産を守る一過性ではない農政が求められる」と締めている。

朝令暮改農政

 中国新聞(11月15日付)の社説は、今年8月に当時の石破政権が表明したコメ増産の方針を、わずか3か月で事実上撤回したことを「朝令暮改」と断じ、同じ自民党政権で方針が唐突に変われば「『猫の目農政』のそしりは免れまい」と指弾する。
 高市総理が、防衛力強化など安全保障政策に熱心であることから、「食料安保をどう考えているのか。有事で輸入が止まってもコメがあれば飢えはしのげると国民は信じてきた。米価は昨夏以前に比べ2倍近い高値だ。主食を買い求める際、財布と相談しなければならない状況はやはり問題ではないか」と迫る。
 鈴木農相は10月22日の大臣就任記者会見で、「今現状で不足感は解消されたというふうに私は認識をしております」と語るとともに、記者からの「まだ高止まりしている平均価格などは今後下がっていくと考えていらっしゃるという理解でよろしいのでしょうか」との問いに、「価格については、私は申し上げません」とコメントを拒否した。
 これに関して社説子は、「コメが十分あるなら、なぜ米価は下がらないのか」と追い打ちをかける。
 加えて、高市政権が物価高対策を最優先事項としているにもかかわらず、鈴木氏が「(コメ)価格はマーケットの中で決まるべきものだ」と強調していることを取り上げ、「国が生産目安を示したり、米価維持を目的に生産調整を続けたりすることと大きな矛盾がある」と追及の手を緩めない。
 「政治が今やるべきなのは農業の持続性確保だ。担い手育成や暑さに強い品種への改良、過疎高齢化が進む中山間地域の農業支援など、課題は山積する」とした上で、「農家保護は必要ながら、食料の安定供給も政治の使命だ。生産者と消費者双方が納得する政策を示してほしい」と訴える。

ライスサイクルと市場メカニズムの欠陥 

 結論を先取りすれば、市場メカニズム依存症の政権に、生産者と消費者が納得する価格も政策も期待することはできない。
 確かに経済学によれば、「市場メカニズムは、需要と供給の情報を価格に集約し、資源配分を効率化する」と教えている。
 しかし、生産者の多くが今年の価格を前提に来年の作付を決定し、消費者は生産された年の価格を見て購入量を決めるような、農畜産物においては、市場メカニズムに全面的依存した結果は、価格の不安定化、すなわち乱高下となる。
 コメを例に取れば、生産者は高米価の翌年には作付を増やす。結果、生産過剰となり価格が下落する。低米価に懲りた生産者は次年には減産する。今度は、供給不足によって価格は高騰する。このサイクルを「ライスサイクル」と呼ぶことにする。
 机上の経済理論は、このサイクルを安定した価格形成に向けた「調整過程」と呼ぶが、生産者はもとより消費者、さらにはコメを加工・利用する実需者(外食・中食・食品加工業)にとっては大迷惑なプロセスであることは容易に想像される。
 消費者はコメ価格の乱高下に振り回され、不足時には再び「米騒動」が勃発する。「コメ離れ」の恒常化すら想定される。
 実需者は調達コストの変動リスクにさらされ、価格転嫁やメニュー構成の再設計を迫られる。最悪の場合、廃業の危機にすら直面する。
 そして、米価の変動にバクチ的な興味を覚える農家を除けば、不安定化に疲弊し稲作を断念する農家が続出する可能性大。それは、地域農業の担い手減少や耕作放棄地の増加をもたらし、地域経済に少なからぬ悪影響を及ぼす。
 もちろん、長期的な食料安全保障の基盤を今以上に脆弱化させるが、稲作が多くの多面的機能を創出していることを考え合わす とき、市場メカニズム依存症がもたらす災禍は極めて大きい。
 米の価格安定は、生産者を守るためだけでなく、消費者、実需者、そして地域全体の安定に直結する公共的課題、といっても過言ではない。政策はこの根本構造を直視したものでなければならない。
 ゆえに政府は、生産者、消費者、実需者が納得する価格による主食の安定供給に向けて、市場メカニズムの欠陥を補完するための施策、具体的には在庫調整、高度な需給見通し、明確な作付誘導、そして価格保障や所得補償などを行わねばならない。

 「地方の眼力」なめんなよ

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