【いつまで続く? 気候危機】「二季」へ向かう日本 三重大学教授 立花義裕氏2025年12月24日
2025年夏の平均気温は観測史上最高を記録。熱中症、そして米や野菜など農産物にも被害が出た。「気候危機」が叫ばれる今、地球、そして日本に何が起きているのか。三重大学大学院生物資源学研究科地球環境学講座教授の立花義裕氏が連載コラム「いつまで続く? 気候危機」で解説する。
三重大学教授 立花義裕氏
2025年の新語・流行語大賞トップ10に選出された「二季」。私はいち早く「二季」化の問題点を指摘し、文字通り異常気象の「異常さ」の啓発を行ってきた。温暖化で、四季の移ろいが崩れ、暑く長い夏と冬のみの二季の国になりつつある。
日本は、四季を愛でる文化が千年以上も根付いている。美しい日本の四季と、それにシンクロする固有の文化と風土、そして、季節の神事や行事がある。四季を守るために、二酸化炭素を減らそう。そう思い始めた人も増えている。40℃超えが当たり前を望む人は皆無だ。二酸化炭素削減は、待ったなしなのだ。
「緊急銃猟/クマ被害」や「古古古米」も選ばれた。これらも、「二季」化が背景にある。里に出る熊が増えている一因は,猛暑によって山の幸が減少したからだ。数年続く猛暑は、米の不作ももたらした。それが米の需給バランスを崩した。
人類が余剰に排出しているCO2による温暖化が、生産者と消費者双方の生活を脅かしているのだ。だから、私たちは自分で自分の首を締めているようなものなのだ。それに気がつかさせられた1年だった。
日本では、熱中症で失われる人命が、ほぼ毎年1000人を越え、2024年は、2000人を越えた。このままでは、熱中症が日本の死亡原因の主因の一つとなる時代が近い。農業従事者など、屋外作業を生業とする人々が特に危ない。
世界の中で、最も二季化が進行しているのは、日本だ。その理由は、日本周辺の海面水温の上昇にある。地球温暖化に伴い海面水温が上昇しているが、中でも日本周辺の海面水温の上昇率は世界平均の3倍も早い。
熱せられた海から立ち上る熱気が空気を温め、その温まった空気が日本列島に流れ込む。これが暑さの一因だ。熱容量の大きい海水は一度温まると冷めにくく、風呂の湯と同じように高温状態が長く続く。したがって、夏に高かった海水温は9月、10月に入っても下がらず、「暦の上での秋」になっても暑さを長引かせる。
加えて、海の上の空気は湿っており、水蒸気を多く含んだ空気が陸地に流れ込むことで蒸し暑さが加わる。水蒸気が多いと、放射冷却が抑えられるために、夜でも暑くなる。水蒸気も二酸化炭素と同じように赤外線を吸収する温室効果ガスなのだ。これが、長引く夏の直接的な要因であり、二季化の主因である。四方を海に囲まれている日本の宿命、それが二季化なのだ。
では、なぜ日本周辺の水温上昇が世界一なのか?詳細は、2025年7月に上梓した『異常気象の未来予測』(ポプラ新書)に書いたが、手短に説明しよう。その理由は、日本が世界一広い太平洋の西端に位置しているからだ。日本列島には、世界でも最も速い海流の一つである黒潮がぶつかっている。黒潮の源流域は世界一高温の海のインドネシア北の沖合の西部熱帯太平洋だ。
赤道付近から北上する熱くて速い黒潮が、冷める間もなく日本にぶつかっている。温暖化する世界一熱いインドネシア沖の海の影響を、日本は直接受けるのだ。インドネシア沖の海が世界一高温となる理由は、熱帯では東から西に向かう貿易風が吹いているから。熱帯太平洋に拡がる高温の海水が、貿易風によって、西へと吹き寄せられ、インドネシア沖にそれら熱水が貯まる。世界一の熱水の貯蔵庫から、日本に向けて熱水が直送されている。それが黒潮である。
農業関係者を困らせる二季化は、海からやってくる。漁業者は、森林や陸の状態を気にしている。それは、豊かな海は、陸の栄養分が川を通じて、海にもたらされるからだ。同様に、農業関係者も、もっと海に関心を持って欲しい。地球は、人体の部位や臓器のように、全てがシステムとして繋がっているのだから。
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