【地域を診る】能登半島地震から2年 復興法人制度活用の提案 京都橘大学学長 岡田知弘氏2026年1月16日
今、地域に何が起きているのかを探るシリーズ。京都橘大学学長の岡田知弘氏が解説する。能登半島地震から2年。関連死や人口流出が止まらず、復興はいまだ途上にある。被災地の現実と復興政策の課題を見据え、「面的復興」の必要性を考える。
京都橘大学学長 岡田知弘氏
2024年元日に発災した能登半島地震から、まる2年が経過した。しかし、被災者の生活再建も、街や村の再建もまだまだのようである。
第一に、もっとも衝撃的なデータは、震災関連死の増加である。石川県内だけの数字であるが、昨年1月7日時点での関連死者数は270人であり、直接死の268人とほぼ同じ数であった。それが、昨年12月26日時点では456人となっていた。しかも、240人が審査待ちであるとも報道されている(日本経済新聞、2026年1月3日付)。ということは、最悪、直接死者数の2・5倍以上の関連死者数になる可能性がある。
石川県が昨年12月25日に発表したデータによると、449人の関連死者数の約95%が70歳以上の高齢者であった。亡くなった時期は、発災後1週間から半年の間に8割が集中していた。原因として最も多かったのは地震・余震のショックや肉体的・精神的負担の88%であり、これに電気・水道等の途絶による肉体的・精神的負担の52%、社会福祉施設の被災による介護機能の低下の47%、避難所等生活の肉体的・精神的負担の39%が続く(複数回答)。最後に、死因としては心血管疾患の30%、呼吸器疾患の28%、老衰等の20%が多かった。仮設住宅建設が一段落した2024年9月に能登半島を襲った大水害も影響しているといえる。だが、その被害も含めて、明らかに医療や介護のケアが必要な高齢弱者に被害が集中していることがわかる。改めて医療・福祉機能の維持だけでなく、被災後の手厚い支援が求められているといえる。それは、以前に本コラムで指摘したように、被災地地元での雇用機会や食材等販路の確保にもつながる。この点は、重要な教訓となろう。
第二に、応急仮設住宅が完成し、1万8千人近くの被災者が仮の住居を得たが(その居住性に問題があるものの)、この一年の間も奥能登の被災地からの人口流出が続いていることである。石川県が発表した「市町別推計人口」に基づいて、2024年1月1日から25年12月1日までの人口推計を見ると、珠洲市が17・8%減、輪島市が15・4%減となっており、七尾市以北6市町合計の減少率も9・5%に達する。珠洲市は総人口が1万人を切って9640人に、輪島市は2万人を切って1万8535人となった。被災後1年11カ月経過したが、人口減少に歯止めがかからない状態にある。
第三に、人口を維持するためには、被災者の就業と所得の場を再生あるいは新たに生み出す必要がある。ところが、この動きが微弱な状態にある。一般報道では、被災地の事業所の8割が営業再開したとされているが、そもそも残存している事業所がどの程度あるのか、またその再開度がどれほどなのかが問題である。時事通信が本年1月1日に報道した記事を見ると、地元の興能信用金庫(本店は能登町)の調査によると、奥能登4市町で震災直後から25年11月末日までに廃業した事業所は408事業所に達する。一年前までの廃業事業所数の2・9倍に達しているうえ、震災前の総事業所数の15・2%に及ぶという。人口減少が加速しているために、後継ぎ問題も含めて将来への展望を失った経営者が多いという。
その問題に加え、今回の中小企業の復興支援事業が奥能登の経営者にとって、相見積もりを義務付けた申請手続きや本審査までの時間の長さなど制度的障害があった。また、熊本地震までは存在していたグループ補助金制度が活用されず、あくまで個別経営体の申請を基本にしたことも大きな問題であろう。熊本地震では、東日本大震災のグループ補助金制度を発展させ、地域内の製造業や商業だけでなく、農業法人、医療法人、福祉法人なども横断的に支援する仕組みをつくっていた。申請を検討する過程で少なくとも地域の未来を議論する機会があった。
これが、能登半島地震では活用されなかっただけでなく、財政制度等審議会財政制度分科会の提言に基づいて財務省が率先して復興政策の「選択と集中」を前面に立てたために、被災地の現場での復興マインドの委縮につながった面がある。しかも、県の創造的復興プランでは、被災地での被災者の生活再建の展望よりも、関係人口の拡大やデジタル化等の政府重点施策が優先されたことも大きい。
東日本大震災後に、私も加わった日本学術会議東日本大震災復興支援委員会では、遅々として進まない被災地での復興を加速するために「復興法人」制度の創設を提言した。被災して傷ついた民間企業等の投資力がまだ回復していない段階において、自治体が主導して、地域内での経済循環を組織し、横断的な産業復興と就業・所得機会を創出し、また地域内の経済主体の連携を図りながら復興をリードしていく存在である。自立できる経済主体が育ってくれば、その役割を低めていくという構想である。財源としては税金だけでなく、クラウドファンディングも活用し、被災地の市街地と集落とをつなぎ、面的に復興させていくことをねらっている。政府が、「積極財政」や「戦略」を重視するというのであれば、これくらいの支援をなすべきではなかろうか。
重要な記事
最新の記事
-
米コスト指標「2万円は適切」 農業用施設の規制緩和も要望 農業法人協会が政策提言2026年3月13日 -
JA全青協 次期会長に星敬介氏2026年3月12日 -
次世代のJAを築く 「JA経営マスターコース」修了式 大賞論文はJAしまねの神移氏 JA全中2026年3月12日 -
米生産「732万t」 27年6月末在庫、暴落した年超える水準に 26年産作付意向2026年3月12日 -
静岡県で豚熱 国内102例目を確認2026年3月12日 -
茨城のトマト生産の法人が破産 負債約18億円 病原ウイルス被害で生産激減2026年3月12日 -
食えない木の皮・幹・花【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第380回2026年3月12日 -
いちごのハダニ類 東海・南九州の一部地域で多発 病害虫発生予報第10号 農水省2026年3月12日 -
「地味弁」新レシピ公開 新生活応援プレゼントキャンペーンも実施中 JA全農2026年3月12日 -
【人事異動】JA三井リース(4月1日付)2026年3月12日 -
【人事異動】日本農薬(4月1日付)2026年3月12日 -
【役員人事】ジェイカムアグリ(4月1日付)2026年3月12日 -
会場準備は予定通り 大阪・関西万博の経験を反映 2027年国際園芸博覧会協会2026年3月12日 -
バッテリー刈払機「BCi260-PRO」シリーズ新発売 ハスクバーナ・ゼノア2026年3月12日 -
東京農大と包括連携協定 国際的な農林水産業研究の高度化と社会実装を加速 国際農研2026年3月12日 -
実践型「農機メンテナンス講習会」開催 アグリショップ唐沢農機サービス2026年3月12日 -
高温対策バイオスティミュラント「なつつよし」販売開始 クミアイ化学2026年3月12日 -
日本の米づくりの課題解決へ 新会社「JR東日本豊里創生」設立 JR東日本グループ2026年3月12日 -
「日本雑穀アワード2026」金賞受賞13商品を決定 日本雑穀協会2026年3月12日 -
令和6年能登半島地震・能登半島豪雨災害へ 募金8211万円 コープデリ2026年3月12日


































