協同組合の存在価値を考える 日本協同組合学会の杉本貴志会長が講演 日本共済協会2025年9月26日
(一社)日本共済協会は9月19日、オンラインで第40回となるセミナーを開き、関西大学商学部教授で日本協同組合学会会長の杉本貴志氏が「協同組合の存在価値とは何か 協同組合共済が果たすべき役割を考えるために」をテーマに講演した。
関西大学商学部教授・日本協同組合学会会長 杉本貴志氏
SDGs達成に協同組合は不可欠
杉本氏は冒頭、国連による2回目の国際協同組合年(IYC)をはじめとする国際的な動きを紹介し、「SDGs達成のためには、協同組合を中心に社会連帯の協同経済を構築する必要がある」との認識が広がっていると述べた。前回のIYC当時は、政府機関や協同組合間の連携が十分でなく、「適切な施策が難しかった」と振り返った。現在は日本協同組合連携機構(JCA)が設立され、7月5日に開催された「協同組合フェスティバル」では「協同組合を外部に広く知ってもらい、理解を深めた」と評価した。
一方で、全労済協会の調査によれば、協同組合に対する国民的な認知や社会活動への貢献の理解は依然として低く、韓国の学会との共同調査でも「営利企業との差異が見えない」結果が示された。杉本氏は「組合員や利用者が何を期待しているのか」、営利企業とは異なる、「(倫理的に)正しく人々や組合員を本当に考えた供給ができているか」と問いかけた。
具体例として、子どもたちにニンジンを食べてもらいたいとの願いから開発された生協の野菜ジュース「ミックスキャロット」の大ヒットを紹介した。大手食品メーカーも追随し「市場を変え、食生活も変えた」ことから、「生協が果たすべき役割であり、存在意義につながる」と強調した。
国民は「助け合い」を求めている
こうした取り組みの阻害要因として、協同組合事業に「規制がある、認可事業だから」との制約にとらわれ、営利企業と同様の商品やサービスが中心となっている現状に懸念を示した。これに対して、労働金庫によるNPOへの融資や、粗品に代えてフィリピンの子どもたちへの食料支援を行った事例から「協同組合だからこそできる取り組み」の重要性を述べた。
また、共済事業では、欧州では禁止されている性別による保険料格差が日本では残り、「民間保険会社との競争で保障が細分化し、助け合いの精神が出にくい」と指摘。さらに、危険業種に従事する人が保険や共済に加入できない現状にも触れ、「共済が支えるべき領域ではないか」と問題提起した。
一方、国民意識では、「自己責任を求める人は3割未満で、助け合いを求める人が7割以上」との調査結果を紹介。協同組合が目指す方向と一致しているのに理解が広がらないのは、「事業偏重で運動が衰退しているため」とされがちだが、むしろ「連帯の欠如に課題があるのではないか」と指摘した。
具体例として、東日本大震災の被災地で買い物バスを運行し被災者から喜ばれた一方、地元商店街からは「再建を阻害する」との抗議も受けた事例を紹介。「善意であっても予期せぬ批判を受ける」可能性に触れ、協同組合同士にとどまらず「地域の人々を巻き込んだ取り組みで協同組合への理解が広がり、地域貢献につながる」と述べた。実例として、大阪で「協同組合だけでなく幅広いつながりを作っている」という「OcoNoMiおおさか(おおさか地域協同組合連絡会)」の取り組みを紹介した。
地域に不可欠な存在に
2012年の協同組合基本法制定以降、発展を続ける韓国の事例も紹介した。ソウルのみならず地方都市にも運動が広がり、大邱広域市では、発達障がいを持つ児童も預かる保育所や学童保育、自由に過ごせる「小さな図書館」、働く場となるカフェ、さらには放送局まで協同組合によって運営されている。
韓国ではこうしたネットワークにより、協同組合が地域の「コミュニティの持続可能性に不可欠な存在」を目指している。日本においても協同組合が「地域にとって欠かせない存在となることを期待している」と結んだ。
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