国際協同組合年2025で危機を好機に 日本共済協会が「IYC2025の意義」セミナー(2)2025年3月21日
日本共済協会は3月19日、東京都千代田区のJA共済ビルでセミナー「IYC2025の意義について」を開いた。共済や協同組合の関係者らで会場は67人、オンラインで303人の合計370人が参加・視聴した。
相互性の原則で未来を切り開く
国際協同組合保険連合
国際協同組合保険連合のリズ・グリーンCEO
国際協同組合保険連合(ICMIF)からはCEOのリズ・グリーン氏と、チーフ・メンバーシップ・オフィサーのベン・テルファー氏が「ICMIFのグローバルな視点から見た現代の協同組合保険組織」をテーマに講演した。グリーンCEOは最初に、講演の内容を「危機の時代に協同組合や共済の組織は立ち向かい、乗り越えてきた。グローバルな視点から、その歴史や拝啓、協同組合主義をどのように進めていくか」と説明した。
ICMIFは1922年に設立され、本部は英国マンチェスター。ベルギーとカナダ、日本に地域代表事務所がある。現在、世界55カ国に210団体のネットワークを持つ。2023年度の保険料収入は2280億ドル、雇用者は21万9481人、会員・契約者3億1631万3388人、総資産1兆6300億ドル、投資は1兆3400億ドル。
ICMIF戦略(2023~26年)は①パーパス:より安全で、よりレジリエントな世界の構築②ビジョン:保障、予防、影響力を通じた包摂的なレジリエンス③ミッション:目的主導型のレジリエントな未来を構築、維持するために、会員を鼓舞し、支援する、と説明。「多様でグローバルな会員ネットワークを通じて、非競争環境における、戦略的な知識の共有と協業を促進」している。
国際協同組合保険連合のベン・テルファー氏
2022年の世界の協同組合・相互扶助の保険セクターは保険料収入が1兆4100億ドル。世界の保険料収入の年成長率(2021~22年)1.8%減に対して、同セクターは0.9%減にとどまり、市場シェアは生命保険・損害保険合計で26.3%。シェアは北米(39.4%)や欧州(32.6%)は高いが、アジア・オセアニア(9.7%)、アフリカ(3.7%)は低く、日本は14.6%。ラテナメリカ(10.8%)は「急速に拡大」している。世界の45%の国では現地法で認められておらず、中国が2015年、エストニアとルーマニアは2019年に現地法が制定され、ブラジルは「最近、法制度がまとまった」という。
未来に向けた重要な6つのトレンドも紹介した。①相互性の原則を活用し「目的主導型」の戦略を組み込むこ②若い有能な従業員を引き付ける独自の従業員価値③サステナビリティを業務運営と連携させた長期的な価値創造④デジタルツール導入などによる顧客体験(CX)やビジネスモデルの再構築⑤AIを活用するしたデータ主導による業務革新⑥気候・経済変動やサイバー脅威など新たなリスクに対処する地域社会への支援。
戦略的優位性を提供する現代の協同保険会社の10の特徴も挙げた。①目的主導型アプローチ②会員中心主義③協力的な文化④倫理的で透明性の高い活動⑤長期的なサステナビリティ⑥適応性と革新性⑦社会へのプラスの影響⑧地域社会との関わり⑨テクノロジーの統合⑩価値観主導のブランド。
セミナーの様子
これらを実践する5つの実例も、動画を交えて紹介した。農業中心の損害保険相互会社FMG(ニュージーランド)、農民が設立した協同組合Coーoperators(カナダ)、公共部門の雇用者・従業員の生命・損害保険を扱うBeneva(同)、教育関係者の損害保険を扱う相互会社MAIF(フランス)、1200万人の顧客を持つ損害相互保険の協同組合Achmea(オランダ)。
国連機関とのパートナーシップも進めている。国連環境計画(UNEP)とはリスクの定量化システム、国連防災機関(UNDRR)とも予防や強靭化、被害を最初化するシステムを開発し、民間に広く提供している。国連開発計画(UNDP)とは気候変動や自然災害に対して被害のレジリエンスを高めるプロジェクトを展開し、保険イノベーション・チャレンジ基金(IIC)創設で発展途上国での包括的な保険適用範囲の拡大を目指している。
最後に、IYC2025について「世界の危機的な状況を好機に変え、共済や協同組合主義を広げ、世界を安全でレジリエントに変えたい」と結んだ。
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