種子から食卓までがテーマに 国際稲研究会議20182018年10月24日
既報(10月15日)のように、シンガポールで国際稲研究会議(INTERNATIONAL RICE CONGRESS:IRRC2018)が、10月15日から開かれて、多くの議論がなされ、17日に終了した。
会期中は米を食べる国々の人たちや、水稲(ライス)やそれに関連する諸分野について研究している研究者、肥料、農薬や農業機械関係に携わる人、農業政策に携わる国や行政機関の職員などおよそ2000人が参加した。
会場にいると、「米」という穀物は、日本だけのものではなく、世界の多くの人たちにとっても重要な食糧だということを実感する。
◆IRRIとCORTEVAが連携協定に調印
会期中は、後述するように米の種子から消費者の食卓まで、米に関するあらゆることが検討されていたが、もう一つ多くの人が関心を寄せたことがあった。
それはIRRI(国際稲研究所)と、ダウデュポンの農業分野を担うCORTEVA(コルテバ)が、15日に会場内で連携協定に調印したことだ。この連携によって、両者は互いに持つノウハウを活用することで、多くの収量が期待できる種子や乾燥に強い品種を開発すると共に新たな栽培・防除技術を開発することで、水稲の世界に貢献していきたいと考えている。
◆あらゆる課題について検討
今回の研究会議では、8つの大きなテーマと各テーマごとに示されたキーワードをもとに様々な報告や意見交換が行われた。
それは米の種子の保管から品種改良など種子の問題から、農地や天候さらに肥料、農薬、農業機械、そして栽培方法、収穫の仕方と収穫された米の保管、ジェンダー平等問題や家族経営の在り方、農業者の労働問題、収穫された米を販売会社や加工業者あるいは消費者に届けるまでの物流や金融問題にいたるまでの、米にかかわるあらゆる問題が俎(そ)上にのっていた。
会場はメインの大きな会場と50人から100人程度が入れるミーティングルーム(30部屋以上)に分かれていた。メイン会場で講演をしたCORTEVAシニア副社長であるKryata Harden女史は、現在の世界の農業の現状と課題を報告するなかでジェンダー問題や小規模な家族経営のあり方や労働力問題への対応が重要だということを強調した。
ミーティングルームでは、別掲のような8つのテーマにそい、各テーマのなかから3つまでのキーワードを選択して報告の範疇を示して1RRC2018の科学委員会に提出し、受け入れられるとプレゼンテーションができるようになっている。 写真(左)は、16日に30部屋ごとにどういうプレゼンが行われるかを示したパネルだが、1時間から2時間ごとにテーマがかわるので、この3日間でいくつのプレゼンが行われたのかは正確には把握できなかった。テーマによって違うのだろうが、イノベーションについてのプレゼンが行われた部屋(16日16時ころ)は椅子席が80席だったが、立見も多く100名程度が聴取していた。この部屋では、インドや中国、バングラデッシュの現状と今後の報告がされていたが、CORTEVAのRajan Gajariaビジネスプラットホーム担当副社長は発言を求められ、「水稲は弱い産業」だから、他の地域や生産者の知恵をコンバージョン(conversion)することとコラボレーション(collaboration)、コンシューマ(consumer)の「3つのC」を成り立たせる必要があることを強調した。
その他のプレゼンはすべて聞くことが不可能なので、8つのテーマとそのキーワードを別掲しておく。ここに世界で1.5億haも栽培されている水稲にあらゆる問題・課題がほぼ含まれているといえる。
この会議を取材して、大変に残念だったことがある。
それはここで報告されていた多くの課題について報告したり、ヒントを提示できる力が「瑞穂の国」日本にはあるにも関わらず、ほとんどそうした動きがみられなかったことだ。確かに何人かの農水省の職員や農研機構の人らしい姿は垣間見たが、表舞台には立っていなかったのではないだろうか(もしいたら「ごめんなさい」)。
水稲は、麦・大豆・コーンとともに、世界の大事な食糧だが、あらゆる面を含んで日本はトップクラスにあることは間違いない。人口増加などで、「世界の食糧をどうするか?」は、文字通り世界の最重要課題の一つだといえる。そこに日本が果たすべき役割があるのではないだろうか。主催者がIRRIだから出てこないのではという人もいたが、そんな小さなことは捨てて、アジアやアフリカの人たちに「瑞穂の国」の経験や技術を伝えることで、世界的に日本の信頼が高まるのではないかと痛感した。
(関連記事)
・国際稲研究会議2018 8つのテーマとキーワード(18.10.24)
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(2)病理検査で家畜を守る 研究開発室 中村素直さん2025年9月17日
-
9月最需要期の生乳需給 北海道増産で混乱回避2025年9月17日
-
営農指導員 経営分析でスキルアップ JA上伊那【JA営農・経済フォーラム】(2)2025年9月17日
-
能登に一度は行きまっし 【小松泰信・地方の眼力】2025年9月17日
-
【石破首相退陣に思う】しがらみ断ち切るには野党と協力を 日本維新の会 池畑浩太朗衆議院議員2025年9月17日
-
米価 5kg4000円台に 13週ぶり2025年9月17日
-
飼料用米、WCS用稲、飼料作物の生産・利用に関するアンケート実施 農水省2025年9月17日
-
「第11回全国小学生一輪車大会」に協賛「ニッポンの食」で応援 JA全農2025年9月17日
-
みやぎの新米販売開始セレモニー プレゼントキャンペーンも実施 JA全農みやぎ2025年9月17日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」ダイニング札幌ステラプレイスで北海道産食材の料理を堪能 JAタウン2025年9月17日
-
JAグループ「実りの秋!国消国産 JA直売所キャンペーン2025」10月スタート2025年9月17日
-
【消費者の目・花ちゃん】スマホ置く余裕を2025年9月17日
-
日越農業協力対話官民フォーラムに参加 農業環境研究所と覚書を締結 Green Carbon2025年9月17日
-
安全性検査クリアの農業機械 1機種8型式を公表 農研機構2025年9月17日
-
生乳によるまろやかな味わい「農協 生乳たっぷり」コーヒーミルクといちごミルク新発売 協同乳業2025年9月17日
-
【役員人事】マルトモ(10月1日付)2025年9月17日
-
無人自動運転コンバイン、農業食料工学会「開発特別賞」を受賞 クボタ2025年9月17日
-
厄介な雑草に対処 栽培アシストAIに「雑草画像診断」追加 AgriweB2025年9月17日
-
「果房 メロンとロマン」秋の新作パフェ&デリパフェが登場 青森県つがる市2025年9月17日
-
木南晴夏セレクト冷凍パンも販売「パンフェス in ららぽーと横浜2025」に初出店 パンフォーユー2025年9月17日