コメの価格高騰・品不足の背景 家庭向け5万t増や精米歩留まり低下など 全農が推定2024年10月22日
JA全農はこのほど8月以降、量販店などの店頭で精米がなくなった背景について推定した結果を明らかにした。
全農によると、想定される要因のひとつとして精米歩留まりの低下を挙げる。
23年産米は猛暑の影響で水稲うるち玄米の1等比率が61.8%と直近10年平均と比べると20.0%ポイント低下し、2004年以降で最低だった。
これを受けて、大手卸売業者6社の23年産米の精米歩留まりは、過去10年平均91.4%より、主要銘柄別の単純平均で1.4%ポイントの低下となっている。
これに基づいて推計すると、精米の出来高を確保するために増えた玄米数量は7万tとなる。)

また、麺やパンが値上がりするなか、この夏以前まで米の価格には値ごろ感があったため家庭用消費は伸びていると言われてきた。実際、総務省の家計調査によると、2人以上世帯当たりの米購入量は23年7月から24年6月までの1年間で101.1%となり消費は堅調している。
全農は米穀機構(米穀安定供給確保支援機構)が公表している「米の消費動向調査」をもとに、米の需要実績に占める家庭用の数量から試算した。その結果、22/23年の家庭用数量472万tより5万t多い477万tとなった。

さらに同調査で示されている中食外食向けの米消費量が23年7月から24年6月の1年間で104.6%と伸びていることから、全農は1年間で10万t増加したと推計した。需要増のうち約3万tは訪日外国人の増加にともなうインバウンド需要が見込まれるという。
需要増は合計で22万tと推計された。これに南海トラフ地震情報や関東での台風接近があったことなどから8月中旬には米の販売量が前年比148.6%(8月19日~25日)となるなど、一時的に品薄となった。
農水省の公表データによると24年産米の卸出荷量は8月下旬から9月中旬にかけて前年比で2倍以上となっており、全農も「本会グループ卸を含む卸業者が前年産を大幅に上回るペースで24年産米を納品した」としており、9月中旬からは前年同水準となり「販売が概ね落ち着いている」としている。
農水省が公表した9月25日現在の予想収穫量は683万tで作況指数は102と見込まれている。農水省が7月に示した基本指針で示した主食用米の生産量669万tより14万t多い。これに基づくと来年6月末時点の民間在庫量は基本指針で示した152万tより多い166万tと推計される。
全農は米の需給について「消費の動向にもよるが不足感は解消するのではないか」とみる。1等比率が平年ベースに戻っているという産地の状況もあり、精米歩留まりの低下を招くことはないとの見方もある。米価格の上昇で消費減の懸念もあるが、5kg3000円だとしてもごはん一杯は約40円。食パン2枚(150g)は78円、スパゲティ(100g)は約66円、ゆでうどん(150g)は約88円だ。
全農は持続可能な農業経営のために適正な価格への理解を消費者に求め「再生産ができる水準を何とか割り込まないような価格を実現していきたい」としている。
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