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【JAの農産物輸出】JA常総ひかり ベトナムへ梨100トンで所得向上を実現2017年11月30日

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 茨城県のJA常総ひかりと下妻市果樹組合連合会ではベトナムへの梨の輸出が目標の100tを超え、11月9日には記念式典を開いた。今年1月に10年ぶりに解禁されたベトナムへの輸出にいち早く取り組み、全国初の100t超えを達成したことは多くのメディアでも取り上げられ話題となっている。今や「農業の成長産業化」のための戦略として「農産物輸出」は国も力を入れているが、では、成果を挙げた産地ではどんな取り組みがなされてきたのか-。現場を訪ねると、魅力ある産地として活気を取り戻し次世代につなごうという協同組合らしい10年間の実践の“果実”が見えてきた。“協同組合”であるJAが輸出に取り組む意味を考えてみた。

◆動き出した生産者

下妻の梨PRプロジェクトチームのみなさん。写真左から柴森正好さん、野村孝尚さん、河原井了さん、粟野寿広さん、大島裕人さん、磯山仁さん(写真左から)下妻の梨PRプロジェクトチームのみなさん。
柴森正好さん、野村孝尚さん、河原井了さん、粟野寿広さん、大島裕人さん、磯山仁さん

 

 「生産者が前面に出る。JAは裏方でありバックアップに徹する。これを大事にしてきました」とJA常総ひかり下妻支店営農課の上野博樹課長は力を込める。
 その生産者たちの集まりが下妻市果樹組合連合会である。昭和57年設立。生産者数は132名で梨の栽培面積は130ha、販売額約9億円となっている(28年度実績)。
 今では茨城県内の梨生産量第2位で輸出の牽引役となっているが、上野課長によると「10年前は下妻の梨といっても通らなかった」と振り返る。「その他大勢の梨のひとつ」に過ぎず、市場価格は低迷していた。現場では生産者の高齢化と老木化による収量減に悩み、若い生産者にとって先行きは不安だらけ。そんななか、下妻の梨の知名度を上げて市場に選んでもらえる梨づくりとPRに力を入れようと数人の若手生産者が立ち上がった。「そんなことをしても無駄」という一部幹部の声もあったが、JAも背中を押した。
 土壌診断による適正施肥や、今回のベトナム輸出実現の鍵にもなったフェロモン剤の集団設置による環境にやさしい防除の実践などで「下妻甘熟梨」として売り出し、地元量販店との契約にこぎつけた。生産者自ら店頭に立ち消費者との対面販売も行うようになった。こうした取り組みを引っ張っていったのが若手生産者が平成20年に結成した下妻の梨PRプロジェクトチームである。

 

◆手探りで輸出へ

茨城県指定・銘柄産地下妻の梨 JA常総ひかり梨第一選果場の看板 PRに力を入れたことで下妻の梨は知名度は上がってきたが、青森などのりんご輸出に刺激を受け、将来の国内消費の減少も見据えて、今度は輸出にも取り組もうという話になった。上野課長によると検疫や税関の手続きの知識もないなかでのまったくの手探り状態からのスタートだった。
 最初の取り組みは平成25年のバンコクの商談会への参加。生産者が商談会に出向き50kgの試食と価格アンケート調査をした。また、シンガポールでも生産者が対面販売し3日間で600kgを売り切り、順調に進み始めたようにみえたが、翌26年は390kg(タイ向け130kg、マレーシア向け260kg)と思うように伸びなかった。輸出手続きやバイヤーとのパイプづくりのノウハウが不足していた。
 そのころ下妻を訪ねてきたのが、27年に水戸に開設されたジェトロ茨城貿易情報センターの西川壮太郎所長である。
 上野課長は当初、ジェトロは商談会を開く程度の組織で産地とバイヤーの結びつけなどに関わらないだろうと冷ややかに見ていたという。ところが、西川氏は東南アジアへ梨を輸出しようと努力していると聞き、産地を訪ね生産者を回るようになった。
 「茨城の全市町村を回りましたが、生産者が一丸となってなんとか農業振興をしようという気持ちが下妻の農家から感じられました。PRする以上は自分も梨のことをよく知る必要があると思いました」と西川所長。
 そして具体的に動く。27年にマレーシアとの個別商談を西川所長がセット、それをきっかけに同国への輸出は一気に6700kgに拡大した。

 

◆成果還元で全員参加へ

JA常総ひかり下妻支店営農課・上野博樹課長 こうした取り組みの上に今年のベトナム輸出の成果がある。
 実は、西川所長の前任地はベトナム、現地で販売されている中国産、韓国産より糖度の高い日本産の梨は喜ばれると確信していた。解禁に向け両国で検疫条件が協議されているなどの動きをJA、県とも共有し、輸出に必要な園地登録を進めたことが他産地に先駆けた取り組みとなった。
 園地登録に必要なのは病害虫から守るために園地に網掛けしていることと、園地から半径1km内でフェロモン剤防除をしていることなど。すでに触れたように下妻ではフェロモン剤の集団配置に取り組んできたからこの条件をクリアできた。解禁の一報が伝わるとベトナムの現地量販店から日本の梨を輸入できないかと働きかけがあった。それにいち早く応えることができたのが唯一、園地登録を済ませていた「下妻の梨」だったのである。3月、貯蔵してあった梨を現地に送ると「ぜひ」と返事が来た。

(写真)下妻支店営農課・上野博樹課長

 

 現地の量販店は国内に300店舗ほど展開。高級品を扱う店もあればごく普通のスーパーもあるという。輸出というと富裕層向けに優良品を販売するというイメージがあるが、この契約は秀、優、そして良品も含めて供給、大きさも加えると15区分にもなるが生産者自身が価格交渉にも立ち会って販売を決めてきた。価格は1kg1200~1300円。5Lサイズだと1個650円と国内価格の倍だという。「それでも一個だけなら背伸びをして買うのが今のベトナムです」と西川所長は話す。
 ただ、今年、ベトナム向け輸出で園地登録できたのは17人の生産者だった。果樹組合は100名以上いる。輸出販売した代金が果樹組合側に支払われたころ、上野課長が園地登録した生産者たちに相談すると、「清算はプール計算でいい。果樹連として取り組んだことだから」とみな口を揃えた。
 輸出という新たな挑戦も"協同組合"としての事業であることが忘れられていない。
 生産者への振り込みが終わるとJA支店にこんな電話がかかってきた。「今年の相場ならこんなにもらえないはず。間違いじゃないのか...」。上野課長らがベトナム輸出も含めた共同計算の結果だと伝えると、輸出は一部の人の話で、自分には関係がないと思っていた人たちの意識が変わった。
 「おれらも協力しなけりゃ。課長、どうすれば園地登録できるんだい?」。
 果樹組合では来年、組合員全員が自分の園地を一部分でも登録することを目標にしている。全員参加で底上げをはかる。
 この輸出にGAP取得は必要はないが関心は一気に高まった。先を見据え「GAP、やったほうがいいべ」と講習会開催を生産者から求められるようになったという。園地の環境整備にも気を配るようになった。

 

◆農産物輸出は地域活性化の手段

ジェトロ茨城貿易情報センター・西川壮太郎所長 輸出に実績を上げている果樹組合とJAだが、背伸びをして伸ばそうとはしていない。ベトナムへも来年は120t~130tと考えている。下妻の梨の生産量は3000t。うち2000tはお盆前に売れてしまう。残り1000tが輸出の対象になるが、基本は国内販売だ。
 輸出も含めたPRによって通常「幸水」の平均単価1kg300円のところ「甘熟梨」は460円を実現するなど、国内市場でも評価が高まり所得増を実現した。知名度が上がって直売所の売上げも増えたという。また、輸出では各国1社をパートナーとして限定して契約、値崩れを防ぐ。
 上野課長は「生産者の意識が変わったことが何よりも大きい。自分たちで価格も決め、決められた量を確実に出荷する。輸出は生産者を主役にした産地活性化の手段です」と話す。
 改植のため苗木注文は年間100本程度だったのが、最近は1000本近くになっているという。
 ジェトロの西川所長は「何度も相手国に出向きトライアンドエラーを繰り返してきた成果」と評価し「輸出によって国内での評価が高まることが大事。下妻の生産者に自信と誇りが出てきた。大事なことは生産者が豊かになり地域が活性化すること。そのためにどんな輸出ができるのかを私たちは考えています」と強調している。

(写真)ジェトロ茨城貿易情報センター・西川壮太郎所長

 

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