【JA全農米穀部山本貞郎部長に聞く】産地への生産提案進め 実需者ニーズに応える(2)2018年11月20日
・買い取りへの転換も促進
・インタビュー
―販売事業での取り組み状況はいかがですか。
昨年からの全農改革のなかで米穀事業では、▽実需者への直接販売、▽買い取りの拡大という2本柱を立てました。
このうち実需者への直接販売については初年度の29年産は100万tをめざして取り組み、現時点で102万tとなっています。30年産は125万tを目標に取組んでいます。
この取り組みのなかには先ほどのような実需者からのニーズに基づいて生産者に契約栽培の提案をして直接販売に結びついたものもありますが、29年産ではこれまで進めてきた特定契約をより進化させる取り組み、つまり、自ら実需者に足を運びながら、一方で既存の卸との結びつきをもとに実需者と契約していくというのも実需者への直接販売の取り組みだと整理し拡大をはかってきました。
そのうえで、30年産からはさらに実需者と結びついた契約を拡大するため、卸業者に対し30年産の播種前・収穫前契約、あるいは31年、32年にわたる複数年契約の積み上げにあたって、実需者との結びつきを前提とすることをご理解いただき、実際に事前契約で締結したということです。
なお、事前契約の取り組みは、数量全体は現時点で138万tとなっています。29年産は131万tでしたから7万t伸びたということです。
事前契約は安定的に取引をしていただく柱となるものと位置づけています。これがなければ出来秋の収量で価格や契約できる数量に大きな変動が起こるので、私たちとしては取引先に安定して数量を確保でき、産地側にも安心して作付・出荷してもらえる方策と位置づけています。そのなかで複数年契約の30年産米契約実績は86万tとかなり伸びてきています。単年で終わらず翌年も翌々年もその産地銘柄との契約を続けてもらえるという取り組みが評価されてきたと考えています。
―買い取り販売はどのような状況ですか。
買い取り販売は29年産では目標を30万tとし現時点での実績は36万tの見込みとなっています。30年産米は50万tを目標としています。
この事業は全農が出来秋に買い取ることで生産者からリスクを切り離す取組みです。買い取りへ一気に移行するのは難しい場合もあるため、産地の実情に応じて共同計算を早期に精算するという取り組みも進めていきます。
共同計算は、その年産米の販売が完了してから会計を閉めますが、販売完了が長引けば翌年の10月を越えて米の受け渡しが続き、生産者への最終精算はさらにその先ということになります。
それを販売完了前の時点で全農が一旦すべての米を買い取って、販売先とも結びつけコストも確定させて最終精算するなど、共同計算が中心の県であってもこうした方法で早期精算をしようと進めています。手法は産地によって検討しながら、ともかく買い取りの方向へ舵を切ってもらうということを基本に今年は50万tまで積み上げようということです。
―米穀事業改革のなかで集荷の取り組みはどう改革を進めていますか。
集荷というものを運動論的に位置づけ、米を出荷し系統に結集しようという理念はそれで間違っていませんが、これまでの取組みで集荷がどうなったかといえば、残念ながら集荷率は落ちてきているのが実態です。
われわれは今回の改革と同時に集荷についての発想を切り替えなければならないと考えています。生産現場では担い手が増えていますから、そういう大規模な担い手が自ら販売するか、それともわれわれJAと手を組むかと考えたとき、JAを選んでもらえるような事業の発想が必要です。これまで話したように、今までは卸のニーズを聞いてそれを生産現場にフィードバックしていましたが、さらに踏み込んで実需者のニーズを直接聞き、それを生産者に生産提案するという姿に変えていきたい。その際にJAと協力して大規模生産者に響くような提案をしていくというのが集荷の発想転換の大きな柱です。
JAと全農の提案に対して、生産者の方からいい提案だと評価いただくことができれば、自ずと生産者・JAとの信頼関係も強化でき、JAの集荷拡大にも結びつく。このように従来と考え方を変えることがJAならびに連合会の集荷につながっていくと考えています。
そのうえで従来のような集荷対策、つまり、担い手ニーズにあった集荷対策、たとえばフレコン集荷や庭先集荷など効果のある取り組みを複合して集荷の拡大をしていきたい。実需者ニーズをふまえて生産提案する、このことがJA・全農の機能を発揮して生産者を支えていくことになり、生産者の利益になると考えています。
―ありがとうございました。
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