韓国初の全国組合長選挙2015年3月26日
高い投票率、組合へ大きな期待
韓国で初めの全国同時組合長選挙が3月11日行われ、農協(畜産協同組合を含む)1109、非会員6、水産業協同組合(水協)82、山林組合129など計1326の組合で組合長を選出した。今回の選挙は、国の基盤産業である農林漁業の未来を決定する試金石になるものと受けとめられ、投票率が80%を超える高い関心を集めた。
コメ市場の全面的開放など、内外の農林漁業の環境が急速に変化するなかで、今回の選挙が農・畜協と水協、山林組合の発展に影響を及ぼす転換点になるからである。また、農林漁業従事者である組合員が選択する指導者である組合長の役割が重要で、協同組合の未来が明るくなるか、憂鬱になるかの境目であると考えられているからである。
◆ 組合員の8割投票
韓国中央選挙管理委員会は、今回の全国同時組合長選挙の農林漁業者の組合員の総選挙人の数は229万7075人で、このうち184万3283人が投票に参加し、投票率が80.2%だったということを明らかにした。これは、過去10年間に行われた個々の組合長選挙の平均投票率78.4%よりも高く、昨年6月4日に実施された全国同時地方選挙の投票率56.8%に比べても非常に高いレベルである。
全国1326組合で3000人を超える候補者が選挙戦を繰り広げた今回の選挙で、組合別では選挙人194万8766人のうち159万2946人が投票した農協の投票率が81.7%で最も高く、水協が79.7%、山林組合が68.3%であった。
今回、投票率が高くなったのは、組合長選挙が全国同時に実施されることで国民の関心を呼び集めたうえ、統合選挙人名簿を使用して投票者に分かり易くしたためと分析される。また、世界各国とのFTA(自由貿易協定)の締結で危機感を感じた農林漁業者の組合員たちが、農山漁村の経済を担当してリードしている組合長にかける期待が大きいためと分析されている。
このような関心は、投票結果に現れた。全体組合長1326人のうち約半数(612人)が、新しい顔ぶれになった。現職組合長2人のうち1人は苦杯を飲んで、新しい当選者が出たということである。相対的に若い候補者が多く当選した。組合別で新任組合長は、農協が517人(46.6%)で最も多く、水協38人、山林組合57人だった。農協の新任組合長の当選率が従前(最近の10年間の平均41.2%)に比べて高くなったことについて、農協の関係者は、「候補者の多くの関心と変化を望む組合員の意志が反映された」と説明している。
今回の組合長選挙は、従来の選挙が各組合別に実施されたため効率的でなく、公正な選挙管理に限界があった上に、地域別に組合長選挙が年中実施されることで過熱し、不正、談合選挙が行われることを防止するため、「公共団体など委託選挙に関する法律」と「農協法」などの規定に基づき、今年から全国同時に実施することになったのである。また今年、組合長選挙を行うことになったのは、大統領、国会議員、地方自治体選挙との重複を避けた。選挙日を3月11日に決めたのは、農繁期と農協などの決算期日程などを考慮したためである。
◆ 公正かつクリーン
一方、韓国史上初めて行われた今回の全国同時組合長選挙は、中央選挙管理委員会と政府関係省庁、検察.警察、農協.水協.山林組合の3つの協同組合中央会の協力体制のもと、公正かつクリーンに行われ、協同組合の選挙文化を一段階上げたという評価を受けている。
しかし、現行の選挙運動の方式が、現職の組合長に著しく有利で、組合員たちの「知る権利」の拡大が不足したという批判もある。公正な選挙をもとにしっかりとした組合長を選出しようという同時選挙の趣旨とは異なり、実際には、組合員が候補者の政策を適切に把握する十分な機会がなかったという指摘がある。
課題.問題も提起
従って、合併で規模が大きくなった組合の組合員にとって、現在のような選挙のやり方だけでは候補者の人柄や選挙公約などを見極めて投票することは困難で、組合によっては、所見を発表する機会を提供することが必要だという指摘があった。
また、いくつかの農協では、高齢化などで農業に従事しない無資格の組合があり、これが紛争の火種となっている。メディアの行き過ぎた報道で、公明選挙を促すのではなく、選挙の過熱をあおっているのではないかという問題も提起された。
(郭重燮・韓国名誉特派員)
(写真)
公明選挙を呼び掛ける組合長選挙のキャンペーン
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