自己改革の一層の加速を 組合員との話し合いさらに(上) 農協研究会JA改革で議論2016年12月8日
政府の「農業競争力強化プログラム」が先月決定したことで、「農協改革」の攻防は一段落した格好だが、多くの問題は先送りされる一方で、政府の改革路線は確実に進んでいる。その中でJAは、いま何をすべきか。農業協同組合研究会(会長=梶井功・東京農工大名誉教授)は12月3日、東京都内で定例の研究会を開き、JAの自己改革の課題と方向について、JA全中、JA全農、農林中金の取り組み状況、および政府の農協改革への対応について意見交換を行った。このなかで組合員との話し合い、全農の経済事業改革の「見える」化の一層の加速化、農業者のためになる信用事業の中金への譲渡のあり方などが議論の的になった。
◆組合員の評価武器に
研究会では「JAグループの自己改革の課題と方向」で、JA全中の比嘉政浩専務が、これまでのJAグループの取り組みを報告。このなかで同専務はJAの自己改革の遅れを指摘。全中の調査によると、自己改革取り組み施策を中期経営計画および単年度事業計画に反映させたJAは「ほぼすべて反映」「一部反映」が8割強あるものの、実際に明確な改革工程表を策定しているのは3割にダウン。「策定していない」JAが3割ある。
また日本農業新聞の農政モニター調査では、今回の政府の「農協改革」で重視している組合員の意見を聞くことについて、「分からない」(聞かれていない)が4割を占める。こうした状況から同専務は、これからの課題として、組合員との話し合いと同時に、組合員がJAをどう評価しているかの把握、組合員や対外への情報発信など「組合員を巻き込んだ取り組み」「組合員目線からの取り組みの点検・見直しが必要」と指摘した。
また農協法に基づく5年後の検討条項を踏まえ、全中は「JAの自己改革の今後の進め方」について組織協議中であることを前提に比嘉専務は、自己改革工程表の取り組みと実践、准組合員を含めた組織運営のあり方、組合員・役職員向けの学習資材の作成・活用、総合事業の意義の明確化などを挙げる。特に信用事業について、兼営の意義の明確化を念頭に、次期JA全国大会に向けて、農業者所得増大に向けた取り組みを宣言することを検討していることを明らかにした。
また、平成31年度をめどに、担い手を中心とする大宗の組合員を対象に、自己改革にかかる評価調査の実施も計画している。その前に抽出予備調査を行って調査の質を高め、政府との交渉の材料にする考えだ。特に「政府は世論を見ており、JAに対する組合員の評価を高めるため、組合員との話し合いを徹底しなければならない。1000万人の組合員の声を武器に勝負したい」と、決意を示した。
◆モデルJAで先行
JA全農の吉永正信専務は「経済事業の今後の取り組み」で話した。同専務は平成28~30年度の「3か年事業計画」を説明。1.持続可能な農業生産・農業経営づくり、2.海外事業展開、3.元気な地域社会づくりへの支援の3つを報告。持続可能な農業生産では、マーケットインへの事業転換、生産から販売のトータルコストの低減などへの取り組みを説明し、55JAと大規模の60経営体をモデルとして転換することなどを明らかにした。
買取販売の拡大にも取り組む。28年産米の買取販売目標30万tで、32年度は70万tを目指す。ただし、実需者などの買い手との契約にもとづき、買取によって農業者の所得向上につながるような仕組みでなければ、買取拡大の意味はないとし、「JAと一緒に具体策を確認しながら進めなければならない」と述べた。
◆所得増大へ金融支援
JAバンクの自己改革では、農林中金の矢島仁常務がその対応について報告した。同常務は農業法人満足度(CS)の向上について話し、スピード、業務知識、提案力の充実、それに担保・保証の柔軟性を挙げる。特にJAバンクは地銀との市場シェア争いが激しくなっており、「農業法人の金融満足度は約6割で、これは地銀に比べ1年遅れの水準。JAも努力しているが地銀は一歩先を行っている」とし、「地銀は役員が積極的に訪問活動している。輸出や6次化産業など提案や営農相談などで、地銀に負けない質と量が必要」と、訪問満足度の向上を、重要な課題として掲げる。
具体的な自己改革方策では、1.JAが営農経済事業に全力投入できる環境整備、2.農業と地域・利用者をつなぐ金融サービスの提供・地域貢献を挙げる。つまりJAグループが目指す農業所得の増大と地域活性化への金融面からの支援である。
代理店方式はこの中に位置づけられ、営農経済事業の強化に向け、信用事業の負荷を軽減したいJAの選択肢の一つとしている。矢島常務は「小規模JAでは信用事業は負担がかかり、ワンショップでサービスを続けられないところも出てくる」と説明。この場合、信連または農林中金は、代理店扱いの貯金・貸出金等(従来のJAの信用事業)で得られる収益から、必要な経費を差し引いた水準で代理店手数料をJAに支払うことになる。
(写真)講演者の写真(3人) 比嘉JA全中専務、吉永JA全農専務、矢島農林中金常務
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(171)食料・農業・農村基本計画(13)輸出国から我が国への輸送の状況2025年12月6日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(88)ジチオカーバメート(求電子剤)【防除学習帖】第327回2025年12月6日 -
農薬の正しい使い方(61)変温動物の防除法と上手な農薬の使い方【今さら聞けない営農情報】第327回2025年12月6日 -
スーパーの米価 前週から23円上昇し5kg4335円 過去最高値を更新2025年12月5日 -
支え合い「協同の道」拓く JA愛知東組合長 海野文貴氏(2) 【未来視座 JAトップインタビュー】2025年12月5日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】『タコ市理論』は経済政策使命の決定的違反行為だ 積極財政で弱者犠牲に2025年12月5日 -
食を日本の稼ぎの柱に 農水省が戦略本部を設置2025年12月5日 -
JAの販売品販売高7.7%増加 2024年度総合JA決算概況2025年12月5日 -
ポテトチップからも残留農薬 輸入米に続き検出 国会で追及2025年12月5日 -
生産者補給金 再生産と将来投資が可能な単価水準を JAグループ畜酪要請2025年12月5日 -
第3回「食料・農林水産分野におけるGX加速化研究会」開催 農水省2025年12月5日 -
新感覚&新食感スイーツ「長崎カステリーヌ」農水省「FOODSHIFTセレクション」でW入賞2025年12月5日 -
(464)「ローカル」・「ローカリティ」・「テロワール」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月5日 -
【スマート農業の風】(20)スマート農業を活用したJAのデジタル管理2025年12月5日 -
「もっともっとノウフク2025」応援フェア 農福連携食材を日替わりで提供 JA共済連2025年12月5日 -
若手職員が"将来のあるべき姿"を検討、経営層と意見交換 JA共済連2025年12月5日 -
IT資産の処分業務支援サービス「CIRCULIT」開始 JA三井リースアセット2025年12月5日 -
「KSAS Marketplace」に人材インフラ企業「YUIME」の特定技能人材派遣サービスのコンテンツを掲載 クボタ2025年12月5日 -
剪定界の第一人者マルコ・シモニット氏が来日「第5回JVAシンポジウム特別講演」開催2025年12月5日 -
野菜との出会いや季節の移ろいを楽しむ「食生活に寄り添うアプリ」リリース 坂ノ途中2025年12月5日


































