Z-GIS 農業の戦略づくりに不可欠2019年3月18日
エクセルとの連携でほ場管理を効率化するクラウド型のシステムであるJA全農 営農管理システム「Z-GIS」は平成30年4月にサービス提供を開始。今年1月には専用Webサイトをリニューアルしてさらに利用しやすくなったことからJAや生産法人での注目が集まっている。担い手への農地集積や世代交代の進行など、農業構造が変わるなか、新たな時代の地域農業づくりに「Z-GIS」は有効なツールになる。JA全農耕種総合対策部アグリ情報室に改めてその特徴と活用法などを聞いた。
◆営農記録を「財産」にする
Z-GISは、ほ場の位置情報とエクセルをリンクさせて管理する。ほ場ごとに作付けした作物の種類や品種、作業内容など、管理したい項目をエクセルに記入欄(列)を増やして簡単に追加することができる。記録した情報はパソコン画面の地図上にわかりやすく「見える化」できる。つまり、これまでカレンダーやメモ帳、白地図などに手書きしていた記録や予定を電子化し分かりやすく視覚化するツールである。
しかもそのデータを「Z-GISクラウド」に保管して複数で共有できるとともに、事務所のパソコンだけなく現場からスマートフォンやタブレットでデータにアクセスできる。
JA全農は普及に向けて昨年4月から全国で57回の研修会・デモンストレーションを実施してきている。参加JA数は延べ179、参加者数は延べ1579人となった(31年2月6日時点)。
講師を務めるアグリ情報室の大武勇氏は、研修会ではしばしば「Z-GISを利用すると、親父しか知らない田んぼがなくなります」と切り出すという。
「まさに頭のなかにしかなかった記録、情報をパソコンのデータとして蓄積していこうというツール。最初は品種、田植え、中干し、稲刈りの日付など簡単な入力から始めて、翌年は施肥量や収量を記録するなど、徐々に情報を増やして前年と比較すれば自分の肥培管理の課題も見えてくる。親父の頭の中や、手書きメモ程度でしかなかった情報を『財産』として蓄積し、引き継ぐことができるわけです」と大武氏は強調する。
しかも、クラウドで管理するから集落営農の仲間や従業員ともデータを共有することができる。スマホを使ってほ場からもアクセスできるため、効率よく的確な作業の管理などにも有効だ。
(写真)JA全農耕種総合対策部アグリ情報室 平野幸教室長
◆将来ビジョン描く武器
ほ場ごとの作付計画や作業内容など記録していくのは、これまで記帳運動として取り組んできたことでもあり、Z-GISはそれをパソコンとICT技術を使って記帳し管理するものともいえるだろう。しかもほ場にどんな項目を紐付けるかは、エクセルを活用しているため簡単に追加できる。
アグリ情報室の平野幸教室長は「Z-GISにはエクセルを使うことによる自由度の高さがある」とその特徴を指摘するとともに、もうひとつ「数千から1万ものほ場を管理できる」ことも他のサービスにはない強みだと強調する。
(写真)第28回JA全国大会会場で説明する大武氏
これまでは白地図を使って営農計画を策定したりブロックローテーションを調整したり、さらには地権者と耕作者の貸借関係といった情報管理などを手作業で行ってきた。Z-GISを使えばこれらが効率化されるだけでなく、膨大なほ場情報を管理できるから、JAの営農企画部門などの地域農業戦略づくりに役立つ。平野室長によれば、Z-GISを使ってほ場ごとに生産者の年齢、5年後見通し、10年後見通しを記入して将来をシミュレーションしている例もあるという。
「リアルに厳しい将来見通しが示される地域も多いかもしれません。しかし、では、どうするのか、誰に任せるのかを考えていく情報を作成したことになります。『見える化』するツールがないと地域の未来は語れなくなってきました。Z-GIS活用は必須だと思います」。
そのほか新たな使い方はいろいろありそうだ。Z-GISは品種や栽培方法などで地図をきれいに色分けできる。たとえば多様な米を特徴ある栽培方法で生産していることも地図で示すことができる。JAとして販売戦略と連動させて活用し、卸や実需者に示して産地への理解を深めてもらうツールにもなるのではないか。
また、営農組合や法人にとっては農作業受託をするケースも増えてくると考えられるが、依頼されたほ場かどうか、現地でスマホで確認して間違いなく作業するなどに役立つ。また施肥作業の受託も増えるとなると、施肥量の記録も必要で、それにはZ-GISが役立ちそうだ。
平野室長は人工衛星を使った生育情報のセンシングが今後本格化すると見通し、そうしたリモートセンシング技術とZ-GISを結びつける検討も始めるという。
「先端技術を導入するときの現場の受け皿となるツールとしてZ-GISを最右翼に位置づけたい」。
なお、Z-GISに欠かせない地図情報である筆ポリゴン情報は、所定の手続きで農林水産省に依頼すれば入手できる。全農も全国の筆ポリゴンを入手済みである。
また、4月からはZ-GISに気温、降水量、積算温度のグラフと週間予報を表示する新機能が追加される。
Z-GISの利用料金は100ほ場ごとに月額200円と「業界最安値の誇るべき価格」。持続的な地域農業を戦略的に構築するため、Z-GISを生産から販売まで広く視野にいれて活用することが期待される。
(関連記事)
・Z-GIS公式ウェブサイト開設!(19.01.28)
・農業の新しい時代に対応 Z-GISの活用を促進 JA全農営農管理システム操作研修会(18.09.20)
・利用拡大する全農の「Z-GIS」(18.07.31)
・神出全農理事長が「AG/SUM」で講演(18.06.12)
・営農管理システム「Z-GIS」が運用開始 JA全農(18.04.24)
・全農が目指す農業ICT(18.02.20)
・名称を募集 全農版クラウド型地図情報システム(18.01.15)
最新の記事
-
シンとんぼ(46)食の安全とは(4)毒性についての理解2023年6月3日
-
トマト病害虫雑草防除のネタ帳 施用法②【防除学習帖】第202回2023年6月3日
-
有機農業とは83 有機質資材を活用した施肥㉑【今さら聞けない営農情報】第202回2023年6月3日
-
「日本の農業高校とも交流したい」イタリアの農業専門学校 ローマ在住ジャーナリスト・茜ヶ久保徹郎【イタリア通信】2023年6月3日
-
メディアの「売れる記事」は間違った世論を誘導する【原田 康・目明き千人】2023年6月3日
-
農業理解に"つながり"大切 JA東京スマイル・眞利子伊知郎組合長(1)【未来視座 JAトップインタビュー】2023年6月2日
-
農業理解に"つながり"大切 JA東京スマイル・眞利子伊知郎組合長(2)【未来視座 JAトップインタビュー】2023年6月2日
-
農産物の大規模輸出産地づくり支援へ JAグループが初の合同説明会 全国から125団体参加2023年6月2日
-
【人事異動】農水省(6月5日付)2023年6月2日
-
「世界卓球選手権ダーバン大会」で活躍 日本代表10人が全農を訪問2023年6月2日
-
JR大阪駅でみのりみのるマルシェ「大阪の実り」10日に開催 JA全農2023年6月2日
-
ウクライナ危機で「水産物の安定供給脅かされるリスク顕在化」 「水産業の食料安保」を特集 水産白書2023年6月2日
-
国産練乳を使用「Panest×ニッポンエール練乳蒸しパン」新発売 JA全農2023年6月2日
-
【JA人事】JA八千代(千葉県)新組合長に鈴木秀昭氏(3月24日)2023年6月2日
-
【JA人事】JAかみはやし(新潟県)阿部元広組合長 を再任(5月27日)2023年6月2日
-
JAアクセラレーター第5期に採択「ISSA KITCHEN TOKYO」事業展開を加速 RelieFood2023年6月2日
-
(334)健康は「権利」?「義務」?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年6月2日
-
ヤマスイグループの株式を譲受 農林中金キャピタル2023年6月2日
-
農業の困りごとを相談「スーパー農家 トミさん/Agri-GPT」無料プラン提供2023年6月2日
-
旬のさくらんぼ「佐藤錦」のショートケーキなど期間限定で登場 銀座コージーコーナー2023年6月2日