貯金保険制度 保険料率引き下げ 農業振興に投資を2019年4月2日
貯金者を保護するため、JAなど農水産業協同組合(組合)が負担している農水産業協同組合貯金保険制度(貯保制度)の保険料が、2019年4月1日から、一般貯金保険が現行の0.014%から0.008%に引き下げられた。(決済用貯金は0.018%から0.0013%)に。3月18日の農水産業貯金保険機構(貯保機構)の運営委員会で決定し、29日、農水大臣、財務大臣及び金融庁長官の認可を得た。保険料率の変更は平成16年度以来のことで、JAにとって大きな負担軽減になる。
貯保制度は、組合が貯金等の払い戻しができなくなった場合に、一定額の保険金を支払うことで貯金者を保護し、信用秩序を維持することを目的とする。そのため、貯保機構は対象組合から保険料を徴収し、「責任準備金」として積立ててきた。平成15年度以降、経営破綻の組合がなかったことから責任準備金は確実に積み上がり、30年度末で約4300億円になる。
運営委員会は、JAや漁協などの経済事業リスクをどうみるかについて検討したが、経済事業資産は平均的JAで資産の1.1%程度であり、過去の貯保制度の発動実績には経済事業のリスクに起因するものも含まれていることなどを考慮した。
また、JAバンクは、行政庁の処分基準である自己資本比率4%よりも厳しい8%以上の確保を自主ルールとしており、1707億円(平成30年3月末残高)のJAバンク支援基金もある。これらセーフティネットが適切に機能しており、現状では過去の発動実績を相当上回るような貯保制度の発動が必要な事態が直ちに生じる可能性は低いと判断した。
保険料率は、銀行などを対象とする預金保険機構を参考に、今後の責任準備金の積み立て目標額を5000億円として算出した。これはJAバンク貯金100兆円の0.5%に当たり、預金保険機構が預金額1000兆円に対して責任準備金5兆円としていることを踏まえた。
目標達成までの期間をおおむね10年としているが、今後の貯金保険事故の発生状況、公認会計士監査の結果、貯金の動向、JAバンクの今後の健全性などを踏まえて責任準備金の積立目標額および保険料率の妥当性を検討する。この場合、当面3年間の保険料率を決めた上で、毎年検証を行う。
◆ ◇
貯金保険制度の保険料については、全国の組合長らで組織する新世紀JA研究会(代表=八木岡努JA水戸組合長)を始めとする、JA関係者が長年要望してきた課題である。単純計算して、これまでJA平均で2000万円以上の保険料負担になっており、同研究会では、これを凍結し、資金を有効に活用するよう働きかけてきた。特別相談役・名誉代表の萬代宣雄氏(前JAしまね組合長)は、「10年来の運動の成果である。支援していただいた皆さんに感謝します。われわれは完全凍結を訴えたが、その実現にむけ、さらに運動を続けたい。負担が減った分を、意識的に農業振興や組合員のためになる事業に使って欲しい」と呼びかけている。
(関連記事)
・種子法・貯金保険制度・准組問題で新世紀JA研が要請(19.02.13)
・【貯金保険機構】目標額決め減額検討へ(18.12.20)
・貯金保険機構が保険料検討へ 新世紀JA研究会の要請で(18.06.06)
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