JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
【農機】所有から共同利用へ JA全農生産資材部次長・冨田 健司氏2017年4月13日
協同の組織守り自主改革「活力創造プラン」に係る全農の対応
安いモデル農機開発
◆とりまく情勢
(1)農機が果たしてきた役割と課題
農機は、重労働からの解放と省力化(労働時間の大幅削減)、および適期作業・作業精度の向上(収益増と品質向上)に大きな役割を果たしてきましたが、一方で農機コストが高いという課題を抱えています。コスト高は、機械自体が高額であること、機械1台当たりの利用面積が小さいという事情によります(生産費に占める農機具費の割合は約20%で大きく変わっていない)。
(2)農機の需要動向
農家数の減少に伴い、国内農機需要は減少し、国内向け出荷台数も年々減少しています(トラクタ・コンバイン・田植え機の3機種で、平成2年の25万3000台から、平成27年の8万3000台へと7割減)。
(3)農機の「大型化」
農業経営体の減少が続くなかで、法人化や経営規模の拡大が進んでおり、これに伴い、農機の大型化が進んでいます(大型トラクタ約2割、大型コンバイン約4割)。
(4)米生産費に占める農機コスト
米生産費に占める農機具費の割合は約2割であり、労働費は減少してきているものの、農機具費の負担は変わっていません。この背景には、個人所有が中心で共同利用が少ないため、機械1台当たりの利用面積が小さく、これがコスト高の要因になっています。
(5)農機業界の動向
国内市場は大手4社の寡占化(国内需要の8割)が進み、国内メーカーは海外市場向け事業を拡大しています。国内向けには、農家の多様なニーズに応えるため、同じ馬力帯のトラクタや同じ刈り取り条数のコンバインでも仕様による型式数が多く、製造コストや流通・在庫コストのアップ要因になっています。
(6)系統農機事業の動向
系統農機事業は、全国1425拠点のJA農機担当者6587人(1拠点あたり4.6人)が農機の適正導入、修理整備等のアフターサービス機能を担っています。拠点集約等で効率的な体制づくりを進めていますが、5~6割のJA農機事業拠点が赤字の実態にあります。
全農は、修理・整備技術の向上や機械の「大型化」「高性能化」に対応できる担当者の育成のため、各種講習会・研修会を実施しています。
◆農機コスト引き下げの取り組み
低価格モデル農機の普及と、「所有」から「共同利用」への転換等により、農業生産費のうち大きな割合を占める農機コストの引き下げに取り組みます。
(1)農機事業の改革方向
新品供給主体の事業から、共同利用(シェアリース・レンタル)、セルフメンテナンス、中古流通等よって農機コストを引き下げる事業への転換をはかります。
(2)農機コスト引き下げの取り組み項目
農機コスト低減の3原則(価格農機価格の下げ、利用面積の拡大、使用年数の長期化)によって、以下のことに取り組みます。
機能を絞った低価格モデル
1.機能を絞った農機の共同購入
2.「所有」から「共同利用」への転換
3.農業者を支援する修理・アフターサービス体制の整備
〈機能を絞った低価格モデル農機(大型トラクタ)の共同購入〉
ア、 生産者モニターの意見を反映した「低コストモデル農機(大型トラクタ)仕様を決定し、メーカーに対して開発要求(平成29年度)。
イ、 全国の生産者から積み上げた実オーダーをもとにした合い見積もり・入札等による最も有利な条件での一括仕入れ(平成30年度)。
ウ、 大規模法人等から機械簡素化の要望の強かった大型トラクタから着手し、順次、機種・クラスを拡大。
〈「所有」から「共同利用」への転換〉
機械の共同利用を促進し、経営規模拡大、複合経営推進、新規就農等のための機械投資を抑制します。
ア、 農機シェアリース(大型コンバインの共同利用)の促進(平成29年度10チーム・50経営体を目標に取り組み開始)。
イ、 野菜機械レンタル事業の拡大(タマネギ・白ネギ用機械から着手し、順次、対象作物を拡大)。
〈生産者を支援する修理・アフターサービス体制の整備〉
ア、 生産者によるセルフメンテナンスの促進や部品の共通化・規格統一等による機械の維持コストの削減。
イ、 中古農機の流通促進(中古農機査定士の育成等)。
ウ、 迅速な部品配送、修理・整備対応を行う、アフターサービス体制の整備(農機技術担当者の育成、修理・整備施設の適正配置―JA拠点・圏域・広域による重整備センターによる効率的なサービス体制、広域部品センターの整備・運営)。
以上につき、肥料・農薬事業などと同様、JAと全農が農機コスト引き下げに向けた取り組みの考え方、実施具体策・スケジュールを共有して着実に実践して行きます。
このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。
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