JAの活動:農協時論
【農協時論】今こそ協同の力 JA愛知東前組合長 河合勝正2021年10月13日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々や農協のトップの皆様に胸の内に滾る熱い想いをお書きいただいています。
今回はJA愛知東前組合長の河合勝正氏にご寄稿いただきました。
JA愛知東前組合長
河合勝正 氏
日本のJAも73年の年を数え、私は間もなく後期高齢者になろうとしています。昭和30年代には1万2000あったJA数も今や560余りと合併が進み、今なお大型化広域化が進められてきています。その取り組みは実に様々で地域の実情に即した協同組合らしい特長ある事業展開がなされており、その評価は、広く海外でも認められ地域組合員からも一定の評価をいただいていることは何よりであります。
ところで、日本の現状はと言えば、随分と豊かになったことは認めるものの、感染症問題や異常気象問題、社会保障制度問題など、現代社会の行き詰まり感や不安感が増していることも現実となっています。
身近な生活の中に置いても、こうした経済や私たちの暮らしそのものがますます何か巨大なものに支配され、その見えない力によって追い立てられているようにも感じています。
今は一見、自由で豊かな社会に見えますが、一方では、果てしなく続く競争社会のもとで、家族や地域の絆が弱まり、少なからぬ人々が苛立ちと不安を感じながら暮らしているそんな声も聞こえて参ります。
こうした状況が続くことによって、農村と言えども一人一人を孤立させ、他人と心を合わせ助け合って生きて行くという、人間生活本来の暖かさを奪うような姿は想像したくありません。幸い、私共JA管内においては、温もりのある社会環境が維持できていると自負しています。人間生活にとって、どこまで行っても他人との協同のつながりなしに、一人では生きられないものです。
あらゆる物を、お金で換算し、自然界の掟をよそに、自分だけ、今だけのような冷たい社会や、繰り返される競争の激化によって、一部の少数の勝ち組と多くの負け組を生み出した社会構造の是正は急務と考えます。
幸い新岸田政権が発足しました。彼の政策理念(新自由主義を否定し成長と分配のバランスと格差の是正など)の実現に期待をかけています。大きな闇の力に屈しないようJAグループとしても、強い働きかけと強力な支援が必要ではないでしょうか。冒頭申し上げたように、日本の総合JAはすばらしい組織だと確信しています。とは言え、私自身もそうですが、今の社会を単に批判しているだけでは何の解決にもなりません。協同組合の思想と運動は、近代産業社会の矛盾が現れてくるに連れ、それを克服しようとの願いから生まれたものです。
存在理由のなくなった組織は滅びると言います。
協同組合は、地域において社会的責任を果たしてこそ、初めて真の報いが得られるものと思います。JA組織は人の集まりでは有りますが、組織が大きくなると仕組みで働かそうとするので人のつながりが弱まるとも言われています。組織が大きくなるほど、人と人との結びつきや触れ合いを重視した様々な工夫が必要と感じています。
また情報化社会が急速に進む中、個人の多様性と生活観の変化のスピードは、予想を越えるものがあります。組合員の目線が多様性を主張し、新たな意味合いをもった方向性や地域性に適合する機能発揮が求められているとするならば、今こそ時代にあった新たな協同に目覚め、タイムリーに危機回避に取り組むべきと考えています。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日