JAの活動:第62回JA全国青年大会特集 Keep on going ~未来(あす)へ向かって~
海外視察で広い視野を 「JA青年の船」を復活させたJAしまね・萬代宣雄組合長2016年2月16日
2013年、青年農業者が積極的に海外に目を向けようと、いうJA版「青年の船」が、JA全中とJA全青協の主催する「青年農業者のリーダー育成・交流研修会」として復活した。農業青年が海外視察して見聞を広げ、寝食をともにすることで人間関係をつくり、将来の農業、農協を担ってもらおうというもので、提案者のJA島根中央会の萬代宣雄会長にその思いを聞いた。
昭和42年、明治百年記念で総理府主催の「青年の船」事業があり、たまたま農協青年部の活動をしていて、行ってみないかと声を掛けられた。1月に日本をたち、東南アジア7か国、53日間の洋上研修に参加したが、当時はまだ海外に行く機会は少なく、貴重な体験だった。
途中、まだアメリカに占領後の統治下にあった沖縄も行ったが、そのときのバスガイドさんが、占領の嘆きを涙ながらに訴えていたのが印象に残っている。沖縄師範健児の塔やひめゆりの塔などもみて、沖縄の胸の内に触れることができたと思っている。
また、インド、セイロンでは、嫁の仕事が燃料となる牛の糞を集めることだとか、生活・風習の違いを目の当たりにした。
そのとき思ったのが、一人でも多くの若者が、こうした経験をしてほしいということだった。
そこで当時の出雲市農協、県農協中央会に働きかけ、全中が動いて40年代の後半、農協青年部の「青年の船」事業がスタートした。
第1回は全国の青年部の仲間約200人でソ連へ行ったが、その後、それは途中でなくなってしまった。
しかし、時代が変わっても農協の職員、農業青年が海外に行って、視野を広げることはいいことだ。生活や文化の違いなどは、テレビや本ではわからないことが多い。
また、何日も寝食を共にすることで、仲間意識が育つ。いろいろなことを相談したり、意見交換したりして友情が芽生える。そのことはやがてJAや組合員のためになる。
せっかくのそうした機会をなくすのは惜しいことだ。そこで平成23年に全農の副会長に就任したのを機に、各連合会を回って、青年の船復活を訴えた。連合会はそれぞれ自分でやっている。なかには、なにをいまさらという反応もあった。
だがその多くは同じ業務による縦の研修であって、業務の枠を超えた研修ではない。現場の農業者とも親しくなったり、農村の現状を知ったりするものでもない。これではいけないと思い、さらに全中や連合会に訴えてようやく実現できた。
かつての青年の船のように長期間の洋上研修ではなく飛行機による移動だが、現地では必ず日本大使館を訪れるようにした。大使の話を聞いて、夜の懇親会にも出席してもらっている。
この全国レベルの研修と同時に、平成24年から島根県でもJA独自の「しまね協同のつばさ」を企画し、東南アジア等に、農業者を派遣している。1県1JAの構想もあったので、仲間意識を深める狙いもあった。
また訪問先には、できるだけ全農に関係する事業所や会社もいれるようにしている。中国を訪問した際には、全農と長い付き合いのあるリン鉱石の鉱山を訪問した。当時、尖閣諸島の問題で日中関係が険悪で心配していたが、行ってみるとまったく問題ないばかりか大いに歓迎された。
そして、こうした現場では全農の職員が体を張って仕事をしている。これは行って見て初めて分かる。日本の農家にわかってもらいたいことである。
これからも、こうした精神を受け継ぎ、若い農業者が海外を経験できるように、JA版「青年の船」(青年農業者のリーダー育成・交流研修会)の事業を続けてほしい。
(談)
◆ ◆
復活した「青年農業者のリーダー育成・交流研修会」は海外の食料・農業事情や協同組合運動の取り組みなどを学ぶとともに、全国から集まった青年農業者同士の交流によってJA青年組織とJAグループへの結集、地域農業のリーダーとしての意識を高めてもらう狙いがある。また、この研修にはJA、連合会の中堅職員が参加することも特徴で、組合員とともにJAグループの次代をどう描くか議論する場ともなる。
2013年はベトナム・タイ・シンガポール、14年は米国・メキシコ、そして15年はオランダ・ドイツが研修先となった。
(写真)昨年12月のドイツの酪農家視察時
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