JAの活動:沖縄復帰50年~JAおきなわが目指すもの~
【特集:沖縄本土復帰50年】ファーマーズマーケットで「格闘」 ファン獲得 次世代担う農業人(はるんちゅ)(2)2022年5月27日
父親の栽培転換を機に就農
仲宗根工・うりずんファーム代表(「ちゃんぷるー市場」生産者会会長)
仲宗根工さん(38)は沖縄県中部地区の沖縄市で就農して11年目となる。就農前は海洋土木員として全国の港湾で公共事業に携わっていた。
就農するきっかけは東日本大震災。3.11は八戸港の船の上。津波が目の前に迫った。
それからしばらくして沖縄で観葉植物を栽培していた父親から連絡が入る。自粛ムードの広がりを受け、観葉植物から野菜栽培へ転換するといい、これを機に就農を誘われた。いずれは沖縄に戻りたいと考えていたこともあり農業人となった。
野菜づくりは軽石「パミスサンド」に葉野菜の苗を植え、自家配合の液肥で育てるという父親が導入した新しい栽培技術で行っている。県内では30戸ほどの農家が導入している。
ハウスの面積は2棟合わせて2700坪(1坪3・3平方メートル)。現在8人を雇用している。この栽培方法で計画的に栽培し、毎日、JAのファーマーズマーケット「ちゃんぷるー市場」に出荷している。
仲宗根さんは日曜日を除いて毎日、午前3時前から収穫し、8時半から出荷に間に合わせるよう作業をしているという。
ファーマーズマーケットは「格闘できる場」
JAのファーマーズマーケット「ちゃんぷるー市場」
沖縄に戻ってから県内の野菜農家を視察したが、このパミスサンドを使った葉野菜の栽培なら「勝負できる」と考えた。現在はフリルレタス、サラダ菜、サントウサイ、ハンダマなど8種類ほどの野菜を栽培している。年間の出荷点数は7万点ほどになる。ちゃんぷるー市場への出荷がもっとも多い。一番高い値段をつけられるからだ。
それを実現できたのは「ファーマーズマーケットに鍛えられたから。自分にとって毎日格闘できる場です」という。
毎日必ず複数品目の野菜を出荷してきた。今、県内生産者をリードしていると自負しているのがハンダマの栽培。おひたしにしたり、レタスと混ぜて生で食べることもできることが分かった。これを毎日出荷し続けた。前日に50束売れたら翌日は70束を棚に並べた。お客さんは毎日来るわけではない。たまに来た人にもハンダマが並んでいるよう心がけた。
半年間、これを続けるとファンができ、そのうち地域の居酒屋でハンダマを使ったメニューが掲げられるようになった。しかも値段は自分で決めている。決して安い値段ではなく経営が成り立つ価格としている。それでも毎朝出荷される新鮮さと味の良さでファンがついた。
「毎日、出荷することが具体的な成果になって表れてきました」と仲宗根さんは話す。居酒屋がメニューとして採用したのは信頼の証しであり、新たなニーズを作り出したともいえるだろう。
ちゃんぷるー市場の出荷者は1350人。生産者会の会長も務め、技術講習会やパッキングや、農薬などの管理講習会などの開催を会長として支援する。
「競争はやはり大事です。品質も向上するし売上げも伸びます」
パミスサンドでの栽培は年8回から9回転。販売状況を見ながら品目を選んでいく。ただ、冬場はパミスサンドは露地栽培にくらべてコスト高になるため露地栽培農家のほうが有利だ。仲宗根さんは夏場の売り場でしっかり販売することを軸にしている。
◇ ◇
こども食堂支援に農福連携にも挑戦
生産者会として子ども食堂の支援も行っている。週に2回、農家が品質に自信のある新鮮な野菜を提供しちゃんぷるー市場がまとめて提供している。また、仲宗根さんはうりずんファームで収穫体験も実施している。野菜を食べないという子どもたちも自分で収穫したものは食べる。親子で喜んでもらい、ちゃんぷるー市場のファンになってもらえれば、という思いだ。最近ではコロナ禍で激務が続く医療関係者に息抜きの意味あいも込めて収穫体験に招いた。
新しいチャレンジも始めた。農福連携である。実は2棟あるハウスのうち新しいハウスの栽培台は車椅子で作業ができる高さにした。
ハウスを新設するとき、今までどおりの農業でいいのかという思いから、パラリンピックの映像と車椅子を利用していた義理の父親のことを思い出したという。
仲宗根さんは就農後、JAの支店の青壮年部が開いた婚活イベント「はるこん」に参加し、農業体験を通じた第一号カップルとなり、ハウスを訪れた義理の父親が楽しそうにしていたことを思い起こした。
そこで将来は障がい者の働く場になることもめざし、福祉施設との連携を進めることにし、先日、障がい者が収穫作業体験に訪れた。
車椅子利用者2人と足に障がいを抱えた人2人が訪れ、短時間だったが仲宗根さんの指導のもと体験をした。足に障がいのある人たちのサポートにとまどったり、脳梗塞後の後遺症で手をあまり動かせない人もいるなど、実際に作業をしてもらうとさまざまな課題も見えた。その人のペースを尊重することも大事だ
仲宗根さんは障がい者の作業に立ち会って「自分でできることを広げることが幸せ度を広げることなる」ことを実感した。食料の提供にとどまらず、農園を通じて農業の可能性を追求、その一つとして仲宗根さんはバリアーフリー農場をめざす。
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