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【大新聞の農業改革報道】協同を否定する日経の改革論2016年4月19日

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全国紙の異常なキャンペーンの狙い

 このままでいいわけがない、何ごとにも改革が必要だ、とはその通り、時代を見極め的確に針路を切り開くことは大切だ。JAグループも創造的自己改革を掲げて実践に取り組んでいる。安倍政権は農業の成長産業化を政策の柱としていることから、一般紙、経済雑誌でもこのところ「農業・農協改革」の記事や論説が多い。しかし、それらの改革論には問題も多い、その典型が「農業者の協同」を否定する論調だ。その主張の真の狙いは何か、われわれは改めて認識して農業者のための地道な改革に取り組む必要がある。田代洋一大妻女子大・横浜国立大名誉教授は背景に競争こそ成長だという新自由主義があると分析する。

◆大都市住民に刷り込み

日経新聞 農村では地方紙等が読まれるが、大都市圏は全国紙の世界で、それが世論の大勢をリードする。とくにサラリーマンは通勤電車で日本経済新聞(以下「日経」)を愛読する。
 その日経は、TPP「大筋合意」に際しては、「打撃を受けそうなのはコメと畜産」、「安保と両輪、中国けん制」とTPPの本質の一面を突いた(10月6日)。また讀賣新聞(以下「読売」)も、2015年末の政府試算について「生産量が減少しないことを前提条件に置くなど、内容の甘さもぬぐえない」とした(12月25日)。
 それぞれ見るべきところは見ていたといえるが、2016年に入ってからは様相が変わった。日経は、「農業を解き放て」(1月)、「食と農」(2月)、「農業改革 岩盤に挑む」(3月)、「暗闘 農政改革」(4月)と毎月のように農業「改革」キャンペーンを張り、萬歳氏から代わった奥野JA全中会長をたびたび登場させている。
 社説では、「米議会のTPP早期承認を期待する」(1月14日)、「日米はTPPの発効急ぎ拡大を主張せよ」(2月5日)、「意欲的な農家と企業で農地を生かせ」(3月8日)、「競争力ある農漁業への改革を緩めるな」(4月7日、内容は後述)と、ほぼ月初めに農業をとりあげるローテーションを組んでいる。
 TPP報道では読売がトップをいったが、今や農業をめぐる報道では日経が先頭を走り、サラリーマン諸氏に毎朝、農業・農協「改革」を吹き込んでいる。


◆TPPと資材価下げ圧力

田代洋一大妻女子大・横浜国立大名誉教授 特徴的なのは、日経に代表されるマスコミが、小泉進次郎・自民党農林部会長や規制改革会議、産業競争力会議といった官邸筋と三位一体になって、生産資材価格の引下げ、指定生乳生産者団体制度の廃止を掲げて、農業・農協攻撃をしている点である。その背景はTPPである。TPPのツケを農協に回し、TPPをテコに農業者の協同を叩き潰そうとしている。
 それだけではない。農水省は准組合員の利用規制の在り方に関する調査を開始したが、そのなかには農業者の所得増大にJAがどれだけ貢献したかのチェックも含まれている。生産資材価格の引き下げが准組利用規制導入の判断条件になるわけだ。
 TPPと生産資材価格の問題はどう関連するか。牛肉のマルキン制度を例にとってみよう。同制度は生産費と枝肉価格の差額の一部を補てんするものだが、TPP国内対策で補てん割合を9割に引き上げた。原資の75%は政府負担だから、政府による直接支払はトータルで差額の0.9×75%=67%になる。ということは、牛肉の関税が例えば100円引き下げられた時に、輸入肉は100円値下げできるが、国産肉は67.5円までしか引き下げられないということだ。
 国内産の価格競争力は32.5円低下する。その分は、「体質強化対策による生産コストの低減・品質向上」(農水省)でカバーしろというわけだ。具体的には、第一に農業者の自助努力、第二に「農業者のみでの努力では解決できないコスト構造の原因を究明し、解決策を見出す」(規制改革会議等の答申原案)ことである。この第二にあたるのが生産資材価格の引下げだ。要するに「国内対策」の足らざるを「農協が生産資材価格を引下げて何とかしろ」というわけだ。
 関連して日経は、農協とホームセンター利用の生産者との「トラブルが相次いでおり」、公正取引委員会が生産資材トラブルを解消するために監視態勢を強化する旨を報じた(4月10日)。公取が政治がらみで登場するのはいつものことだが、ホームセンターを利用する農業者はいても、そのことで農協との「トラブルが相次いでおり」というのはちゃんとウラをとった報道だろうか。
 農協とホームセンター等の生産資材価格の比較が今後の焦点になりそうだが、価格は季節需要や地域特性、品質との相関であり、単純な比較は「安物買いの銭失い」になりかねない。要は丁寧で科学的な説明であり、大口利用に対するメリハリのある割引だ。


◆TPPと指定団体廃止論

 指定団体廃止論もTPPでにわかに浮上した論点である。全国10の指定団体(農協)にバター、脱脂粉乳、チーズ等の加工原料乳を委託販売した酪農家に対して、その低乳価を補てんするために加工原料乳生産者補給金が支払われる。TPP合意で乳製品の特別輸入枠の設定や関税撤廃することに伴い、補給金制度の対象に液状乳製品等を含める国内対策が打ち出されたが、その制度改正の機に乗じて、規制改革会議が、指定団体制度は販売の自由を奪うものとして、廃止を答申に盛り込むことにした。
 指定団体制度には二つの機能がある。一つは、競争力の高い北海道は加工原料乳、低い府県は飲用乳という機能分担を果たすよう仕向けることで、地域間調整を行うこと、二つは乳業メーカーとの価格交渉力の発揮である。
 TPPで加工原料乳の価格低下が起こるのは必至だが、そうすると北海道から府県への飲用仕向けの経済的圧力が強まる。輸送コストを含めると北海道と府県のコストはほぼ均衡するという農水省の説明を盾に規制改革会議事務局は、指定団体制度を廃止しても南北間のダンピング競争はおこらないとしているが(3月31日農業WGの提言)、むしろコスト均衡なら北海道が府県に飲用乳を供給しても採算がとれることを意味する。
 つまり指定団体制度の廃止は、TPPによる乳製品輸入増大の矛盾のはけ口を玉突き的に作るものと言える(海外→北海道→府県)。もちろん北海道がそれを望んでいるわけでなく、ホクレンも廃止反対の先頭に立っている。
 これに対して、前述の4月7日の日経社説は、指定団体制度という「硬直的な制度は需要の変化に追いつけず、生産者の所得拡大を妨げている」、「半世紀も続く制度はさまざまな既得権益を生み、改革を阻む『岩盤』になった」としている。読売の社説も「酪農の競争力高める契機に」(4月10日)とした。


◆競争万能の新自由主義

 このように、特に社説は露骨に規制改革会議等の主張を支持している。そこに共通するのは協同の否定である。農協の生産資材価格が高いとするのも、実は農協を通じる共同購入の否定であり、指定団体制度の廃止論も広域規模での農協を通じる共同販売の否定である。そこには競争を万能とし、協同を否定する新自由主義の思想が一貫している。
 しかし困難打開の鍵をにぎるのは協同である。TPPは米産地等に「脱コメ」を迫っている。その行きつく先は園芸作である。野菜産地などではTPPで撤廃される関税率はそもそも低いが、TPPによる生産シフトで野菜等の産地間の過当競争が強まる将棋倒し効果を恐れている。それを防ぐのは今や、農協の全国一丸となった需給調整機能しかない。指定団体制度も酪農の衰退傾向に歯止めをかけ、バターの品不足等にも応える鍵である。
 協同を否定する三位一体の攻撃をどう跳ね返すか。4月1日の日本農業新聞はモニター意識調査の結果として「農業政策での自民党への期待度は、全般的な自民党支持率を常に下回る状態が続いている」とした。要するに個々の政策に対する不満は高いが、それが政党支持率の高低に反映していないのだ。これが農政に限らず日本の現状だ。
 なぜそうなるのか。第一は不満の受け皿となる政治勢力の結集が弱いことだ。第二は経済成長への期待が高いことだ。TPPを「悪い協定」とこき下ろしたJ・スティグリッツやヨーロッパの反政府派は、金融緩和で緊縮財政を打破し、そのマネーで介護、医療、教育、子育てを追求する経済成長戦略を打ち出している。その一部はアベノミクスとも重なる。要するに成長か否かではなく、いかなる成長かのつば競り合いなのである。農業も食料自給率や雇用力を高め内需依存型成長の一翼を担っていく必要がある。そのための協同の力を否定するマスコミへの警戒が必要である。
(写真)日本経済新聞、田代洋一大妻女子大・横浜国立大名誉教授

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