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今世紀末に4度上昇も 「気候危機」にどう向き合う 気候変動適応センター・上田健二副センター長に聞く2023年8月22日

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災害級の猛暑やダブル台風の襲来など、予想外の事態に「日本列島」が直面し、「気候危機」が叫ばれている。こうした事態にどう備えるか。国立環境研究所気候変動適応センター副所長の上田健二氏に緊急インタビューした。

――気候変動適応センターの活動は。

国立環境研究所気候変動適応センター 上田健二副センター長国立環境研究所
気候変動適応センター
上田健二副センター長

近年の気候変動政策の大きな転換点は、2015年に採択された「パリ協定」です。そこでは世界平均気温の上昇を産業革命前との比較で2度未満(理想は1・5度未満)に抑えるという温度目標を掲げ、また、気温上昇の原因となる温室効果ガスの排出を今世紀後半に実質ゼロまで下げることを目標に掲げています。

逆に言えば、この目標が達成されても、1・5~2度の気温上昇がありえます。今よりも暑くなります。そこで、気候変動に備える(『適応』する)ことも重要になります。実はパリ協定でも、こうした適応の能力向上が謳われています。

当センターは、2018年12月1日に施行された「気候変動適応法」と合わせて、同日に設立されました。「気候危機」にどう向き合うかという今回のテーマからすると、温室効果ガスの削減、つまり気候変動の「緩和」策に加え、「適応」策も重要であり、これらは車の両輪といえます。

私たちは、この適応の強化のために活動しています。

情報アクセス100万件

――設立から5年間の取り組みの成果は。

法律ができるまでは「緩和」の方が脚光を浴びていましたが、この5年間で気候変動への「適応」について一定の理解が広がってきたと思います。社会実装もされつつあります。この法律では、適応の総合的推進、情報基盤の整備、地域での適応の強化、適応の国際展開の四つの柱があります。このうち情報基盤の整備という点では、当センターの運用するウェブサイト「気候変動適応情報プラットフォーム(A―PLAT)」へのアクセス数で見ると、当初の目標「年間50万アクセス」に対し、4年目ですでに100万を超えています。

地域での適応の強化という点では、気候変動適応法に基づき、各地域での適応計画の策定を進めており、7月現在で計235件が策定済み(都道府県47件、政令市19件、市町村169件)です。努力義務ではありますが、全国の自治体総数は1700余りですので、引き続き計画策定を推進していきます。また、法に基づく地域気候変動センターは全国57カ所に設置されています。

これまでの5年の活動で、自治体レベルで一定のアクション(行動)につながってきたと思いますが、今後は、それぞれの地域の優先度に合わせた踏み込んだアクションや、国民レベルのアクションなど、より深いアクションにつなげていきたいと思っています。

――「君たちはどう生きるか」が問われている訳ですね。

残念ながら今後も気候変動が進むことは間違いありません。現在でもすでに、産業革命前より1・1度ほど気温が上昇しています。ここから先、例えば2度の気温上昇に抑えるにも、全世界でかなりの緩和の努力が必要です。影響を最小限に留めるには1・5度までとすべきですが、緩和のハードルがさらに高く、率直に言ってかなり難しい。今のままの傾向で行けば、今世紀末に4度上昇という予測もあります。

現在の、たった1度の気温上昇でも、すでに全世界で大きな被害が出ています。今後さらにリスクは高くなります。私たちは、緩和と適応の両方を進めなければなりません。

――農業にはこれからはどういった「適応」が求められますか。

今後の気候変動によって、全体としては気温が上昇しながら、気象の振れ幅が非常に大きくなります。世界的には記録的な熱波や寒波、大雨や干ばつなどがすでに指摘されていますが、比較的気候が温暖な日本でも、猛暑や大雨、突風、大雪など、突然の気候変動や極端現象が増え、従来の経験値では測れなくなります。特に、農業の場合、露地栽培が大半なので、天候に左右されやすく、その「適応」が中心となります。分かりやすい例では、より高温に耐えられる品種の開発などです。

適応は総力戦であり、農業者・農協・農業試験場・農研機構・農水省など、関係者の連携が大切だと思います。先ほどお話した当センターの情報プラットフォーム(A―PLAT)において、農研機構等とも連携し、農林水産業での適応策についても紹介しています。特に、分野ごとの適応策をグラフィカルにまとめた「インフォグラフィック」も作っていますので、ぜひご覧いただきたいと思います。

ピンチをチャンスに

――インフォグラフィックの農業分野では、米・麦・大豆など基幹作物や、花き、リンゴ、ブドウ、日本梨などについて、高温に強い耐性品種改良など幅広く「適応」策が紹介されています。

例えば米については、全国ですでに多くの品種が開発され、市販されています。高温による白未熟粒の発生は等級にも影響するからです。インフォグラフィックでは、米など広域的な作物がカバーされている一方で、地域の作物はまだまだこれからです。

私も仕事で中四国エリアに4年間いましたが、みかんなど果樹農家さんの強い危機感が印象に残っています。

果樹は木を植えてから果実を収穫できるまでに8年から10年かかるため、将来の気候変動を見据えないといけません。愛媛県県南予地域では、平均気温の上昇による温州ミカンの高温障害の多発を受けて、夏場の高温にも強いブラッドオレンジ「タロッコ」を導入し、今では市場で高い評価を受けています。

このように、付加価値のあるおいしい高温耐性品種に転換することでピンチをチャンスに変えた事例は各地で見られます。果樹に限らず、ピンチをチャンスに変える新しい発想、いわば「プラスの適応」が重要だと思います。

適応力、協働が大切

また、品種改良だけでなく、農作業者の健康については、熱中症対策が最も重要です。現在は、環境省と気象庁が「熱中症警戒アラート」を発表し、適切な熱中症予防行動を早め早めにとるよう呼びかけています。農水省でも、事業者向けの「MAFFアプリ」を通じてアラートを出しています。

業種ごと、地域ごとに、適応策には、もう一歩先の深いアクションが求められると思います。地域の優先課題をどうするか、各地で知恵を出し合い、協働して取り組むことが大切です。そういう観点では、これからますます協同組合運動は、気候変動に対する地域での適応力を高めていくうえで、重要な役割を担っていくと考えています。

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