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【徹底解説・インボイスの実態】零細事業者ほど大打撃 凍結・延期の政治決定を 京都大学大学院教授 藤井聡氏2023年8月28日

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今年10月から新たな税制のインボイス制度が導入されようとしている。国民にどのように関係するのか「徹底解説・インボイスの実態」として藤井聡・京都大学大学院工学研究科教授に寄稿してもらった。藤井氏はインボイスによって大きな経済被害が起こるとして「大至急、凍結・延期を政治決定すべきだ」という。

京都大学大学院教授 藤井聡氏京都大学大学院教授 藤井聡氏

一言でいうと過激な「消費増税」だ

岸田文雄内閣は今、今年10月に消費税についての「インボイス」制度を導入すべく、準備を進めている。

インボイスと言えば、一般の国民にしてみれば、聞き慣れない、何のことだか分からない制度であるから、特に賛成も反対もないという方が大半であろう。が、一言でいって、年間の売上高1000万円以下の農業事業者を含めたあらゆる業種の零細事業者を特にターゲットとした、過激な「消費増税」だ。したがってこれが導入されれば、零細事業者の多くが大打撃を受け、倒産・廃業が多発することは必至だ。そしてそれに加えて大企業においても収益が減少し、一般の消費者にとってはさらに物価が高くなるという最悪の帰結をもたらすものでもある。

ついてはここではまず、このインボイスなる制度によってなぜそうなるのかを、順をおって分かりやすく解説しよう。

【ステップ1:売り上げの1/11を業者が納税している】

消費税を納めているのは消費者でなく「業者」だ。具体的計算方法は、売り上げの10/110(=9.1%)を計算し、その金額を事業者が税務署に収めている。業者がその9.1%分の税金を価格に上乗せしたと思っていようが思っていなかろうが、とにかく売り上げの9.1%を納税する、というのが消費税の「本質」である。

【ステップ2:仕入れ分の消費税は、払わなくてもいい】

ただし、そんな業者も「仕入れ」の時には、仕入れ業者に消費税を払っている。だから、仕入れ分の消費税は仕入れ業者に既に払っているため、その分は税務署に払わなくてもいい、という事になっている。厳密に言うと、業者は売り上げから仕入れ分を差し引いた利益、すなわち「粗利」の9.1%を税務署に払っている。したがって消費税とは要するに「粗利税」のことである。だから業者は「節税」の観点から、仕入れ分の領収書をずっとため、それを使って「粗利」の金額を計算上を減らす事を通して消費税=粗利税の納税額を減らしている。

【ステップ3:ただし、零細業者は、消費税が免税となっている】

ただし売り上げ1000万円以下の零細農家を含めたあらゆる事業者は粗利の9.1%を支払うことが免除されている。つまり粗利税率が0%である。売り上げが1000万円を超えればその粗利税が9.1%になる。この制度は、所得税の累進制と同様に、税を払う能力がある主体からより多く税を徴収する、という理念に基づく極めて一般的な制度である。

【ステップ4:零細業者がインボイス登録すれば、粗利税率が0%から9.1%に増税される。登録しなければ、取引先が減少・消滅する】

以上が、インボイスとは何か、を理解するための、消費税=粗利税についての基礎知識だ。そしてインボイス制度が導入されると、次のような事が起こることになる。

まず業者は「ステップ2」で解説した通り、領収書を使って消費税=粗利税を減らせるのだが、そのためにはその領収書が「インボイス登録業者からの領収書である」ことが必須となる。その結果、各業者は「節税」の観点からインボイスに登録していない業者からモノを買わなくなる。

そうなると零細業者は、取引先を増やすために「9.1%の消費税=粗利税を払う覚悟」でインボイス登録せざるを得なくなる。ただし、納税を回避するためにインボイス登録を避ければ、今度は「取引先が減る」リスクを背負う事になる。つまり、インボイス制度が導入されると、零細業者は、登録して税金を払うか、登録を回避して取引先を減らすかの、最悪の二者択一を迫られる事になる。

【ステップ5:零細ではない「業者」の納税額も増えてしまう】

ちなみに、業者のなかには下請けを気遣って「インボイス登録しなくても、取引を続けますよ」という「優しい」業者が出てくることになる。しかし、そういう業者は、インボイス登録しない業者から買った時の領収書が、消費税の節税に使えなくなる。結果、その領収書の金額の9.1%を、その業者が支払う事になる。

【ステップ6:その結果、消費者にとっての物価も上がる】

このように、零細農家を含めた零細業者たちはインボイスで大打撃だが、それ以外の「業者」もまた、インボイスのせいで「増税」される事になる。その結果、あらゆる業者の納税額が増える事になる。そうなると、それを「価格に転嫁」する企業も数多く出てくる事になる。その結果、インボイスのせいで、物価はさらに高騰する事になる。

あらゆる業者と消費者がダメージ

以上、いろいろと細かいメカニズムについて説明したが、この問題は次の様に考えるとより簡単にご理解頂けるようになるのではないかと思う。

そもそも、売り上げ1000万円以下の零細業者には、消費税についての納税義務がなかったところ、インボイス制度が入れば、その分もガッツリ財務省が「巻き上げる」ことができるようになる。

そして、そうして財務省が吸い上げる「増税分」を、零細業者、業者、そして消費者の三者でそれぞれに負担する、という事になるのであり、したがって、あらゆる業者と消費者全員が、インボイスによってダメージを受けるのである。

ただし、この三者の中で誰が一番負担増になるのかといえば、言うまでも無く「零細業者」だ。なぜなら、零細業者はほとんどのケースで「下請け事業者」なのであり、元請けの事業者、例えば、零細農家の場合なら、スーパーや飲食店等から、農産品を「買ってもらう」立場だからだ。商売において、売る者と買ってもらう者とでは、圧倒的に買ってもらう者の方が、強い立場にたっている。買う者は、「あなたがインボイス登録しなければ、私はあなたから買わないですよ」あるいは「インボイス登録して納税額があなたは増えるのだろうが、それは私は知らない。その分、価格に上乗せするっていうなら、私はあなたから買わないですよ」と言うことができるからである。

農家もダメージ避けられず

もちろん、今、零細農家も含めてあらゆるビジネスが絶好調であるなら、どんな事業者でも、インボイス分で増える納税分を支払うことはできますから、インボイス制度導入されても、特に気にしないですよ、ということはできるだろう。しかし、今日本は四半世紀以上もデフレが続いた中、コロナショックとウクライナショックのダブルパンチの中で、あらゆる業界のビジネスが大変苦しい状況に追い込まれている。そんな中でインボイス制度が導入されれば、「致命傷」を受けて倒産・廃業する事業者が、続出することは必至だ。

ところが、冒頭で解説したように、インボイス制度の恐ろしさを知る国民は、多くの農業関係者たちも含めて限られている。その結果、知らず知らずの内に、多くの農業関係者は、より高い税金を吸い上げられる事になり、ただでさえ苦しい農業ビジネスがさらに苦しくなることは必至なのだ。

例えば、800万円の粗利を挙げている零細農家の場合、インボイスに登録してしまえば約73万円もの大増税になるのだ。ただでさえかつかつで農業を続けている農家にとって、73万円の増税は、致命的なダメージをもたらすであろう。

もしそういう零細農家を救うために大手メーカーがインボイス登録しない農家からも農産品を買う決定をしたとすれば、今度はその大手メーカーが、その零細農家が払うべきであった73万円の納税額を、全ての取引農家について「肩代わり」することになり、大手メーカーも経営上、大打撃を受ける事になるだろう。

延期「判断」心から祈念

これだけの大ダメージを与えるインボイス制度を、この不況と物価高のダブルパンチであらゆる業界が疲弊している最中の今年の10月に導入するという政治決定は、まっとうな政府においてはあり得ないとしか言いようがない。

インボイス制度の凍結、もしそれが難しくとも、経済が回復するまでは「延期」するのが絶対的に求められる政治決定なのだ。

岸田内閣のまっとうな政治判断を心から祈念したい。もし、それができぬというのなら、そういう政治決定を行った政権は、交代してもらう以外に、日本の農業を含めたあらゆる産業を守るために、是が非でも必要だ、ということになるであろう。

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