スマート農業イノベーション推進会議(IPCSA)が始動 技術実証から普及、課題解決の場へ 農研機構2025年8月26日
6月27日に設立総会を開いたスマート農業イノベーション推進会議(IPCSA:イプサ)は、スマート農業技術活用促進法などに基づき、技術開発と普及の好循環をつくるプラットフォームを目指している。同会議で農林水産省とともに事務局を担う農研機構・本部スマート農業施設供用推進プロジェクト室の根角厚司室長に、今後の取り組みを聞いた。
IPCSAの構成員と運営
農水省は2013年に「スマート農業の実現に向けた研究会」を設立し、2019年からスマート農業実証プロジェクトを開始。2024年にはスマート農業技術活用促進法を制定し、実証から普及への展開を進めてきた。「実証だけで終わらせず、生産者に使ってもらう必要がある。新しい技術を導入するには生産現場も大きく変わる必要がある」と、技術開発とともに普及を重視している。
農研機構は技術開発と普及を加速するため、同プロジェクト室を設置。施設を共同利用し、専門家の支援(技術相談)も得られる体制を整えた。さらに農水省とも「幅広い関係者が議論する場の必要性」を共有し、昨年9月の準備会を経てIPCSA設立に至った。
現場の課題を共有 多様な主体によるプラットフォーム
ICTやAIの進展でスマート農業の製品・サービスは増えている。しかし、現場での普及には、有用性、コスト、操作性、サービス間の情報連携といった課題が立ちはだかる。こうした課題に対応するため、IPCSAは生産者の要望を基点とした技術検討や分野ごとのプラットフォームを作り、実機展示や体験イベントなどを通じて、現場に根差した普及を進める。
生産者、開発・供給事業者、研究者や学生など多様なプレイヤーが参加し、「スマート農業で日本の農業を守るため意見を出し合う」場だ。事務局は農水省大臣官房政策課技術政策室と農研機構プロジェクト室が担い、コンサルティング会社の支援も受けている。30代前半のメンバーを中心に、イベントなどを積極的に展開する体制だ。
運営委員は作物の営農類型ごとに日本を代表する生産法人の代表が就任。活動の柱である技術検討では、水田作、畑作、露地野菜・花き作、施設野菜・花き作、果樹・茶作、畜産・酪農の現在は6分野でプラットフォームを設置。生産者の要望を起点に技術開発側とマッチングを進める。作物ごとに課題が異なるため、議論をより細かく深め、生産者と企業が主体的に協働する姿を目指す。
情報の収集・共有にも注力し、勉強会やセミナー、シンポジウムを開催。業界内だけでなく「国民の理解、コンセンサスが必要」として情報発信にも力を入れる。
全国規模の活動としては、10月1~3日に千葉市の幕張メッセで開かれる「第15回農業WEEK」(RXジャパン主催)と連携し、隣接する豊砂公園で「スマート農業タッチ&トライ2025」を実施。農業者だけでなく一般参加者も体験できる企画とし、理解醸成を図る。「啓発教育も大きな役割。農業にわくわく感や生活の充実感を持ってもらい、次世代の担い手育成につなげる」とする。
また、各地の農政局が開く「スマート農業推進フォーラム」も、パネル展示だけでなく実機展示を重視。北海道から沖縄までの各地域での開催を支援する予定だ。
体験・教育・人材育成で未来の担い手を育てる
人材育成も重要テーマで、独自研修の実施を計画。AI時代でも利益を生むためには「正しい情報の収集」が不可欠であり、地域ごとに必要な情報も異なる。こうした基盤を支える人材を育て、企業間の人材交流も積極的に進める。
体験型取り組みとして農業シミュレーションゲームの活用も検討。欧州では教育に使われており、新バージョンにはアジア・モンスーン地域向けコンテンツが加わった。ゲーム内にリアルなスマート農業を再現することで、バーチャル体験による教育効果とともに、スマート農業への理解を深めてもらうことを期待している。
今年秋から冬にかけては会員専用サイトを開設する予定だ。プロフィールを登録し、情報交換やマッチングの場とする。会員は8月1日現在で1049人となっており「将来的には倍増を目指す」。個人、企業・団体を問わず入会可能だ。
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