【TPP】農業・食品の除外こそ国益 鈴木教授2013年5月24日
TPP参加に反対する大学教員の会の呼びかけ人である鈴木宣弘・東大教授、醍醐聰東大名誉教授らが5月22日、TPP影響試算の結果を発表した。
◆経済満足度増加額少ない
鈴木教授は「GTAPモデルによるTPPの影響試算の再検討」を発表。
政府の統一試算ではTPP加入による経済効果としてGDPが0.66%(3.1兆円)増加するとしている(締結後10年間の累積の増加率)。
これを経済的満足度(「等価変分」という指標)の増加額でみると関税撤廃の「除外なし」の場合は4500億円であるのに対し、「農業・食品を除外」した場合は、5700億円となる。また、「自動車を除外」した場合は2100億円の増加額にとどまる結果となった。
また、経済満足度増加額は日中韓FTAでは7000億円、日中韓+ASEANで8500億円、RCEP(日中韓+ASEAN+インド、NZ、豪州)で8600億円と試算された。GDP増加率もこれらの経済連携の枠組みのほうがTPPよりも多いことは内閣府や鈴木教授の試算ですでに示されている。
◆関税撤廃の直接効果は2700億円
鈴木教授はTPPによる日本の経済的利益は、GDPの増加や経済的満足度の両方とも、他のアジア中心の経済連携協定よりも小さいと指摘。また、TPPについても、農業・食品分野を関税撤廃すると、日本の輸入増加で国際価格が上昇し、消費者の利益の増加よりも、農家の打撃と関税収入の減少のほうが大きくなってしまうなど、関税撤廃から除外したほうが日本の国益に合致すると強調した。
また、GDPが3.1兆円増加すると政府は試算しているが、関税撤廃の直接効果分は2700億円/年にとどまり、そのほかは「生産性向上効果」と「資本蓄積効果」だという。
鈴木教授は、競争の促進によって生産性が向上、所得増加が貯蓄と投資を生み出してさらなる所得増加につながるという効果を考慮することは否定しないとしながらも、政府試算は「輸入増加による価格下落率と同じだけ生産性が向上する」という強い仮定に立ったものであることを指摘した。
そのほか、GTAPモデルは国産品と輸入品がかなり差別化されており、国産品が対抗できる前提に立っていることも強調し、国産と輸入がかなり代替するとの仮定で計算すれば結果は大きく変化することも指摘した。
(関連記事)
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