TPP交渉差止・違憲訴訟の会が発足2015年1月27日
TPP(環太平洋連携協定)は交渉が秘密裏に行われていたり、投資家が国家を訴える権利を認める条項が盛り込まれようとしている。国民の知る権利や司法権などを侵害するとして、TPP交渉の差止と違憲訴訟を求める市民運動組織が1月24日、東京都内で設立総会を開いた。
昨年9月に準備会を発足させ学習会や賛同者の拡大などに取り組み、同日の総会で「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」として正式に発足した。
呼びかけ人には、故宇沢弘文氏や歌手の加藤登紀子氏、ジャーナリストの堤未果氏、東大の鈴木宣弘教授など53人(1月20日現在)が名を連ねている。会員は約2400人で、うち原告希望者は約700人になっているという。
TPP交渉は秘密交渉で情報は開示されおらず、協定調印後も4年間は秘密保持の義務が課せられる。さらに投資家対国家紛争解決制度(ISD)条項は、国の主権を損なう可能性もある。
これらは国民の知る権利(日本国憲法21条)を侵害し、また農産物の関税引き下げ、食品の安全、医療制度、公共事業など多岐にわたる分野の協定は、生存権(同25条)、幸福追求権(同13条)、司法主権(同76条1項)をも侵害するとしている。
会では14人で構成する弁護団を結成(共同代表・岩月浩二弁護士)し、▽TPP交渉の差止、▽TPP交渉の違憲確認、▽損害賠償(1人1万円)請求を裁判所に起こす準備を進めている。
◆5月初めに最終合意か?
総会ではニュージーランド・オークランド大のジェーン・ケルシー教授(=写真左)が講演を行った。
ケルシー教授は、1月26日から米国で行われている首席交渉官会合をNGO団体とともに注視するため、渡米前に日本に立ち寄った。教授はTPP交渉について、3月にシンガポールで閣僚会合が開かれ大筋合意し、5月初めにも首脳会合で最終合意する可能性を指摘した。米国が次期大統領選前の妥結をめざして柔軟性を発揮しているとの見方も示した。
ただ、議会がオバマ大統領にTPA(貿易促進権限)を与えるとの見方があることについては、下院民主党議員のほとんどと共和党も含めて反対していると指摘した。理由は交渉過程などが秘密になっていることへの反発だ。
秘密交渉については米国とEUで交渉されているTTIPについて、EUが協定署名前に合意内容と交渉過程に関わる文書を公表することを決めたという。米国でも情報開示への圧力が強まっているほか、豪州でも条約交渉には議会上院が議会に意見を聞くよう求める動きも出ているなど、大きな通商交渉をめぐる情勢の変化も指摘した。
総会では幹事長の山田正彦元農相が大筋合意をした後の早い段階に訴訟を起こす考えを示した。当面は1万人の会員と原告団となるよう拡大に取り組む。
代表には原中勝征・前日本医師会会長が就任した。
会の公式サイトは、http://tpphantai.com
(関連記事)
・「今を紡ぎ、次代につなごう」JA全国女性大会(2015.01.23)
・【鼎談】人と人のつながりを活かして、地域を引っ張る女性リーダーに(2015.01.21)
・農業は地域の総合産業 黒田義人・JAえひめ南(愛媛県)組合長(2015.01.20)
・財界のための農協監査(2015.01.19)
・あらゆるものを「商品化」 アメリカ発の株主至上主義 ジャーナリスト・堤未果さん(2015.01.26)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日