【TPP】「米」も1100億円減少-鈴木教授が独自試算2016年1月15日
東京大学の鈴木宣弘教授は1月14日、TPP合意が農林水産業に及ぼす影響についての独自試算を発表した。上位50品目についての生産減少額を推定したところ農業で1兆2614億円となった。
昨年末に政府が公表した影響試算では33品目(農産物19品目、林水産物14品目)を対象とし1300~2100億円の生産減少額となるとした。関税削減による価格低下で生産額の減少が生じるが、体質強化対策による生産コストの低減と品質向上、経営安定対策などの国内対策で国産生産量は維持されると見込んだ。
鈴木教授は政府試算について「『影響→対策』の順で検討すべきを『対策→影響なし』とするのは本末転倒。価格が下がっても国内対策を前提にすれば生産性も向上し農林水産業の生産量と所得への影響は全くない、というのは無理がある」と強調している。
今回の試算で鈴木教授は生産額の推定に価格下落による生産量減少の影響も織り込んだ。
政府試算では米については生産額減少はゼロとしていたが、鈴木教授の試算では1197億円減少することが示された。
鈴木教授は米の在庫量と価格との関係を分析すると、近年では米在庫が1万t増加すると価格は60kgあたり41円下落する傾向を明らかにしていた。TPP合意では発効13年目以降は米国・豪州産米が7.84万精米t輸入される可能性がある。この量は玄米換算で8.62万tだから60kgあたり354円、3.2%の下落圧力になる。さらに価格下落による生産量減少率(米価格1%の下落により1.162生産が減少)が3.7%と見込まれることから、生産額の減少は6.7%となるという。ここから米の生産額は1197億円減少するとした。
生産減少額は生乳は972億円、豚肉2897億円、肉用牛1738億円、鶏卵1100億円など畜産への影響が大きい。また、果実も減少額が大きく、みかん911億円、ぶどう371億円などとなった。
農林水産物計で1兆5594億円の減少額。GDPを▲0.36%押し下げ。76万人の雇用が減少、多面的機能も2159億円減少すると試算した。
(資料)鈴木研究室グループが全国各県からの依頼に応じて検討を重ねてきた品目ごとの影響額の試算方法を集約して全国に適用したもの。
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