津波被災農地 74%で営農再開-震災復興状況2016年3月2日
農林水産省は3月1日、東日本大震災から農林水産業の復旧・復興状況を発表した。
東日本大震災による津波被災農地は2万1480haだった。
被災農地については農業・農村の復興マスタープランに基づき計画的に復旧事業を進めてきた。進捗状況は岩手県67%(490ha)、宮城県88%(1万2660ha)、福島県33%(1820ha)、その他(青森県、茨城県、千葉県)は100%(950ha)となった。全体で営農再開した農地は74%となっている。ただ、被災農地のうち農地転用が行われたのが1270haあることから、これを除く復旧対象農地2万210haに対する営農再開が可能と見込まれる農地の割合は79%となる。 復旧が必要な主要排水機場は98か所で、このうち93%(91か所)で復旧完了または実施中となっている。1月までに82か所で本格復旧が完了した。農地海岸は127地区で復旧が必要で、このうち84%(107地区)で復旧完了または実施中となっている。
農業集落排水施設で被害にあったのは青森県から長野県まで11県401地区。このうち387地区(97%)で復旧完了または実施中となっている。1月までに原発事故による避難指示区域内や津波被災地区などを除き383地区で復旧が完了している。 がれきが堆積していた岩手県、宮城県、福島県(避難指示区域を除く)の農地は1万7500haあったが99%(1万7400ha)で撤去済みとなった。
農地の復旧にあわせて国の直轄事業や復興交付金などを活用して農地の大区画化への取り組みも進めている。計画は8990ha。このうち岩手県100%(50ha)、宮城県52%(3770ha)、福島県33%(660ha)となっており、全体では49%(4420ha)の進捗状況となっている。
◆先端技術の実証も
津波により東北一のイチゴ産地である宮城県亘理町・山元町の生産者380戸のうち356戸が被災した。農地としては96haのうち91haが被災と壊滅的な被害を受けた。
震災の年は10月までに阿武隈川沿いの耕作放棄地にパイプハウスを整備して生産・出荷を実施。その後、震災2年後の25年8月までに約40haのイチゴ団地を整備し、土耕栽培から高設養液栽培に切り替えた。あわせてイチゴ選果場を再整備し同年11月から本格的に出荷を再開し「仙台いちご」を復活させた。
そのほか被災地で成長力のある新たな農業を育成するため先端技術を駆使した大規模実証研究も実施している。土地利用型農業では大区画化したほ場で大型機械によるプラウ耕乾田直播や無人ヘリによる湛水直播など、生産コストの低減や収穫量の増加に向けた技術実証を行っている。
農水省によると、これらの技術によって水稲では労働費が大幅に削減され生産費が東北平均にくらべて約50%削減が可能なことが示された。また、麦や大豆ではプラウ耕によって根の生長に適する土壌となるため単収が大きく向上するという。
◆農地の除染地域差大きく
原発事故の影響を受けている福島県では津波被災からの営農再開農地も33%にとどまっている。農地の除染が100%完了した地域がある一方、避難指示区域、居住制限区域などの南相馬市は31%、浪江町は36%、飯舘村は50%などと大きな差がある。
原発事故の影響で生産断念を余儀なくされたこうした避難指示区域などでは営農再開に向けた環境が整っていない。農地の除染とあわせて、安心して営農できる環境づくりがなければ農家の帰還と営農再開ができないことから、福島県に基金を造成し除染後の保全管理(鳥獣被害防止対策など)、営農再開に向けた作付け実証、新たな農業への転換などを切れ目なく支援することにしている。また、福島県の農産物の魅力と安全性確保の取り組みなどを情報発信することもいっそう必要になっている。
(写真)イチゴ団地/JAみやぎ亘理提供
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