増加する移民・難民 食料安保の新たな課題2017年11月9日
世界で増加している移民・難民に焦点を当て、農村の生活向上策や農業強化対策が、移民とその発生国、通過国への支援になるとして各国が政策を検討する必要があると今年10月開催のG7農業大臣会合は強調した。移民問題が農業大臣会合で取り上げられたのは初めてのことだという。
世界の栄養不足人口は8億1500万人、9人に1人は栄養不足であり3人に1人は栄養不良の影響を受けている--。イタリアのベルガモで10月14~15日に開かれたG7農業大臣会合のコミュニケでは改めて世界全体の飢餓・栄養不足人口について記した。
とくに栄養不足人口が多いのがアフリカのサブサハラ地域。2014~16年で2億5000万人が栄養不足になっており、04~06年以降で3300万人も増加したという。
一方、世界人口は2050年に約100億人まで増加すると予想されていることから、貧困と不平等を緩和する努力がさらに必要であることに加え、農業生産量と生産性の持続的な増大が必要になると強調した。
同時に今回は移民についても触れた。国際移住者の数は2015年には2億4400万人に達し、2000年以降41%も増えた。このうち1億5000万人が移住労働者で、2100万人が難民だという。中東からヨーロッパへと向かう人々など難民は増えている。
コミュニケでは「増加する移民は、食料供給や持続可能な農業への圧力となり得る」ことを指摘した。貧しい農村部から人々は職を求めて都市部や海外に押し寄せるが、農村部ではそのためにいっそう人手不足となり農業生産力が低下することになる。同時に押し寄せた移民によって都市の食料供給が不足するという悪循環に陥る。農水省国際部によるとこのような、いわば負の連鎖が農業大臣会合でテーマとなったのは初めてだという。
コミュニケではこうした問題を解決するため、農村地域の生活向上と農業システムの強化策を奨励し、移民発生国、通過国、目的国をどう支援できるかG7各国が検討することを望むと強調した。
そのほか農業者を強化するために、気候変動、動植物疾病、金融、市場など、所得や生活に影響を与えるリスクを管理する政策の重要性を強調した。また、穀物価格の高騰を機に整備された農業市場情報システム(AMIS)や農業リスク管理のためのプラットフォーム(PARM)のような世界的取り組みを引き続き支持する。
フードバリューチェーンの形成も重要だが、コミュニケでは小規模農家や女性、若者の農業者がしっかりフードバリューチェーンからメリットを受けとり、手取りが増加するように価格形成プロセスの透明性の確保や市場へのアクセス強化などへの取り組みも強調した。 大臣会合には議長国のイタリアのほか、フランス、ドイツ、カナダ、EUは農業大臣が出席した。日本は松島農林水産審議官が出席した。
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