トランプ大統領の登場と農協改革のゆくえ【普天間朝重・JAおきなわ専務】2017年3月21日
世の中一体どうなるのだろう。この1月トランプ大統領が誕生したが、その動向は一言で言えば「過去の蓄積の否定と極端な政策」である。前者は、(1)TPPからの離脱(TPPの賛否は別にして)、(2)オバマケアの廃止、(3)NAFTA(北米自由貿易協定)の見直しなど。後者は、(1)極端な移民排斥とその一環としてのメキシコ国境への壁建設、(2)歴史上もっとも大規模な軍事費の増額、(3)歴史的な減税の実施、など。これが今の"流行(はやり)"なのか。
規制改革推進会議(以下「推進会議」)が主張する農協改革がまさにそれだろう。
(1)准組合員の利用制限、(2)信用・共済事業の代理店化、(3)全農の株式会社化、など。沖縄農業の戦後復興に多大な功績を残し、初代琉球農連会長として農協運動をけん引してきた山城栄徳氏がもしも墓からよみがえり、そんな変わり果てた農協組織を見たら、ショックのあまりすぐに死んでしまうだろう。
※ ※ ※
昨年11月、協同組合がユネスコの無形文化遺産への登録が決定した。無形文化遺産とは、「慣習、表現、知識、技術などで、世代から世代へと伝えられ、コミュニティなどによって不断に再現されるもの」と定義されており、今回の登録理由が、「(協同組合は)共通の利益と価値を通じてコミュニティづくりを行うことができる組織であり、様々な社会的な問題への創意工夫あふれる解決策を編み出している」と評価されてのものであるにもかかわらず、我が国ではこれを解体しようとしている。
今回の推進会議の主張は、「群盲、像をなでる」「木を見て森を見ず」的な発想に覆われているように思える。
例えば、全農の買取販売への転換については、確かに"一部"のJAで全量買取により農家の経営安定に貢献している事例はあるかもしれないが、"すべて"となると困難と言わざるを得ない。買取販売の重要性はそのとおりで、JAおきなわでも中期計画で買取販売を平成27年度の15億円から3年後の30年度には倍の30億円に増やす計画ではあるが"すべて"ではない(委託販売も80億円を計画)。
メディアにしてもそうだ。あるテレビ番組では一部の農家の事例を紹介しながら「バター不足の原因は全農にある」として生乳の指定団体制度の問題を指摘し、ある週刊誌では「"儲かる農家"への最短ルート/補助金ゼロ、JAルートゼロ」との表現で、あたかもJAを利用しない方が儲かるかのような論調を展開しながら、「全国JA存亡ランキング」なるものを設定し「"脱・全農"のJAが上位独占」として全農を利用しないJAを革命戦士でもあるかのように持ち上げている。それはあくまで"一部"であって「"脱・全農依存"の時代が到来している」(同週刊誌)わけではない。
協同組合120年、戦後農協70年の歴史と蓄積を否定し、わずか5年でこれを解体しようという極端な政策は、もはや"流行"では済まされない。
とはいえ現在、JAグループに対して様々な批判があるのも事実で、我々としては自己改革を確実に実行しなければならない。
※ ※ ※
「体を張れ、前に進め、道を開け」。これがJAおきなわ経済事業の行動指針だ。
要するに、体を張らなければ何も動かない、まずは動け(失敗を恐れるな)、そうすれば自ずと道は開ける、ということだ。
中期計画初年度の平成28年度も、(1)買取販売の出口としての関西営業所の開設、(2)海外輸出PT・生産資材価格低減PTの設置、(3)外国人研修生受け入れのためのベトナム仲介業者との協定締結など、自己改革を急ピッチで進めている。
JAグループの先人たちが仮に墓からよみがえってきたとしても、「JAはよくやっている」と褒めてもらえるような組織にしたい。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日