【西日本豪雨被災地ルポ】本格復旧はこれから 後片付けに追われる2018年8月28日
未曾有の被害となった7月の西日本豪雨(「平成30年7月豪雨」)から1か月半過ぎたが、被災地では、豪雨の後、相次ぐ台風の来襲という不安の中で、懸命な復旧作業が続いている。2階にまで水に浸かったり、天井近くまで土砂に埋まったりした家屋が多く、本格的な復旧までに、まだ相当の時間がかかりそうだ。被害の大きかった広島の呉市と岡山県倉敷市真備地区の現場をみた。
◆広島・呉市天応地区
(写真)土砂に埋まった民家
広島県呉市の天応地区は広島市と呉市の中間にある地区で、山が海に迫り、山から流れる小河川沿いに民家が並ぶ。同地区では地区の中心を流れる大屋川が流木等でせき止められ、大量の土砂とともに民家に流れ込んだ。
土砂は真砂土と言われる花崗岩が風化してできた砂状の土壌で広島県に多く分布しており、今回の水害被害の大きい県南部の被災地は河川の上流でこの真砂土の土壌が崩れ、水とともに民家に流れ込んだところが多い。普段はほとんど水の流れていない小さな沢が大きくえぐられ、山肌が剥き出しになったところが多く見られる。 氾濫した河川の下流にありながら被害を免れたJA呉市天応支店では、水害の1週間後から、地区の人々の要望に応じて事務所の2階を幼児や学童の一時的な預かり所として解放。家の片付けに忙しい親に変わり、7,8人のボランティアが多いときは60人ほどの小学生の勉強や、幼児の面倒をみている。ボランティアの「子どもおたすけ隊」の山本さなえさんは「市の施設は避難所になっており、JAの施設が借りられて助かります」と言う。
同支店の組合員は約600人で、うち正組合員は50人ほど。農地はわずかしかない典型的な都市農協だが、「地域の人に少しでもJAの存在を知ってもらう機会になれば」(洲崎和幸支店長)と、支援を惜しまない。今月いっぱいで終わる予定だったが、元の家に住めるまでの復旧の見通しが立たず、10月までの要望が出ているという。
(写真)会議室を学童保育園に解放したJA支店(呉市天応地区)
◆岡山・倉敷市真備地区
(写真)次々運び込まれるがれき
倉敷市の真備地区は岡山県の西部、中国山地から流れる大河・高梁川と、支流の小田川に挟まれた場所にあり、小田川の水が合流先の高梁川の増水した水にせき止められるバックウォーターという現象が発生し、行き先を失い、堤防を越えて流れ込んだ水が土手の内側を削り決壊させた。
このため浸水の範囲が広く、南北1km、東西3.5kmに達し、真備地区全域の4分の1にあたる1200ha及ぶ。深さは5mに達し、多くの民家が2階部分まで浸水した。周辺市町も含め、岡山県内全体では約1万4000棟が浸水し、同県では戦後最悪の被害となった。 倉敷市から高梁川に架かる橋を渡って真備地区に入ると、堤防のすぐそばが町の中心地で、密集した民家が並ぶ。被災から1か月以上経ち、多くは浸水した家具の片付けが進んでいるが、それががれきとして高架道の下や、空き地、市の公共施設の広場などに積み上げられている。泥水に浸水したうえ、農業用水路が壊れたため水田はひび割れし、稲は枯れている。ブドウのハウスも泥をかぶっているが、片付けは後回しになっている。
真備地区にあるJA岡山西の2つの支店とAコープも完全に冠水した。懸命の復旧作業で支店は9月3日に再開予定だが、Aコープ店の再開は、まだ見通しが立っていない。
(写真)泥水をかぶって干からびた水稲(倉敷市真備地区)
(関連記事)
・災害復旧で即戦力を急募 愛媛県(18.08.28)
・被災共同利用施設の再建支援-豪雨被害対策(18.08.09)
・被災共同利用施設の再建支援-豪雨被害対策(18.08.09)
・西日本豪雨の爪痕、各地で生々しく 農業被害の実態把握に懸命(18.07.27)
・豪雨被害を激甚災害に指定-政府(18.07.25)
・農林水産被害額1400億円超す-7月豪雨(18.07.25)
重要な記事
最新の記事
-
第21回イタリア外国人記者協会グルメグループ(Gruppo del Gusto)賞授賞式【イタリア通信】2025年7月19日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「政見放送の中に溢れる排外主義の空恐ろしさ」2025年7月18日
-
【特殊報】クビアカツヤカミキリ 県内で初めて確認 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年7月18日
-
『令和の米騒動』とその狙い 一般財団法人食料安全保障推進財団専務理事 久保田治己氏2025年7月18日
-
主食用10万ha増 過去5年で最大に 飼料用米は半減 水田作付意向6月末2025年7月18日
-
全農 備蓄米の出荷済数量84% 7月17日現在2025年7月18日
-
令和6年度JA共済優績LA 総合優績・特別・通算の表彰対象者 JA共済連2025年7月18日
-
「農山漁村」インパクト創出ソリューション選定 マッチング希望の自治体を募集 農水省2025年7月18日
-
(444)農業機械の「スマホ化」が引き起こす懸念【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月18日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲害虫の防ぎ方「育苗箱処理と兼ねて」2025年7月18日
-
最新農機と実演を一堂に 農機展「パワフルアグリフェア」開催 JAグループ栃木2025年7月18日
-
倉敷アイビースクエアとコラボ ビアガーデンで県産夏野菜と桃太郎トマトのフェア JA全農おかやま2025年7月18日
-
「田んぼのがっこう」2025年度おむすびレンジャー茨城町会場を開催 いばらきコープとJA全農いばらき2025年7月18日
-
全国和牛能力共進会で内閣総理大臣賞を目指す 大分県推進協議会が総会 JA全農おおいた2025年7月18日
-
新潟市内の小学校と保育園でスイカの食育出前授業 JA新潟かがやきなど2025年7月18日
-
令和7年度「愛情福島」夏秋青果物販売対策会議を開催 JA全農福島2025年7月18日
-
「国産ももフェア」全農直営飲食店舗で18日から開催 JA全農2025年7月18日
-
果樹営農指導担当者情報交換会を開催 三重県園芸振興協会2025年7月18日