公認会計士監査への移行を支援-31年度予算2018年8月29日
農林水産省は31年度農林水産関係予算要求の骨子を8月24日の自民党の関係会合で説明した。強い農業のためのスマート農業の実現などを重点事項とするとともに、農協の監査コストの合理化の促進のための予算も要求する。
農協は31年度事業から公認会計士監査に移行することになる。農水省が説明するスケジュールは3月決算組合の場合、31年6月の通常総会・総代会で公認会計士を決定し、監査契約を締結することになる。
その後、監査計画を策定し内部統制にしたがって業務遂行されているなどの評価を行う期中監査も行われ、32年3月の31年度決算に対して期末監査が行われ財務諸表の適正性がチェックされ6月の総会・総代会で監査意見が表明されることになる。
会計監査の手法は金額が大きい、取引頻度が高くミスが生じやすいなど財務諸表の適正性に重大な影響を与える可能性の高い勘定科目について重点的にチェックするリスクアプローチ監査となる。たとえば、本所・支所ごとに発注業務をばらばらに実施していると、監査ではそれぞれをチェックする必要があり、監査時間が増大しコストが増える。
これに対して各取引についての発注業務を本所が一元的に実施していれば監査では本所での発注業務のチェックのみとなるため監査時間が減少しその分、コストが減る。そのため業務処理や会計処理が正しい手順で行われるよう、組織の各部局職員に共通するルールや手順書を整備してそれを着実に運用するよう内部統制をJAは進めている。
24日の会合で自民党の農協改革等検討委員会(吉川貴盛委員長)は、JAが監査コストの引き下げ努力をしており監査コスト低減について「農協の主体的な取り組みを後押しするコンサルについて必要な支援を行う」として政府に要望した。
これに対して農林水産省が示した31年度予算概算要求では「監査コストの合理化を図るため農協の主体的な取り組みを支援する」として2億円を計上する考えを示した。
改正農協法の付則では「政府は監査を受ける農協の実質的な負担が増加することがないことに配慮する」と規定している。
また、農水省は都道府県中央会の法人税の取扱いについての考え方を示した。
都道府県中央会は平成31年9月末までに農協連合会に組織することになっている。
現在は都道府県中央会は収益事業のみ課税されそれ以外は非課税(別表第2扱いの法人)となっている。一方、農協連合会はすべての事業が課税対象となり、収益が出れば課税される(別表第3扱いの法人)。このため自民党は組織変更後もこれまでどおりの扱いとなる税制改正要望を行うべきだとし、農水省もその方向で税制改正要望を行うことを明らかにした。
◆准組問題は組合員判断
会合では公認会計士監査移行への支援や税制改正要望を含め、自民党農林・食料戦略調査会、農林部会、農協改革等検討委員会として「農協改革の推進に関する決議」も採択した。
そのなかで准組合員の利用規制の検討については「農業者の所得向上を図るとの農協改革の原点をふまえ、JAグループの自己改革の支障とならないよう、農協組合員の判断に基づくものとすること」と決議した。
二階俊博幹事長は6月7日のJAグループの政策提案集会で「准組合員の規制や信用事業の代理店化については、今進めている改革の支障になるという不安の声を現場から多く聞いている。われわれはそのようなことを押し付けるつもりは一切ない。組合員が判断すればいいことで、このことはしっかり党として約束する」と発言したが、それを今回の決議で採択したかたちになった。
農水省は准組合員の事業利用量調査を今年1月から全国のJAの協力を得て実施している。信用事業、共済事業、購買事業(生産資材、生活物資、ガソリンスタンド)を対象に正組合員、准組合員、員外者別に貯金残高や、共済掛金、供給高などを調べている。
また、決議では農協の公認会計士監査への移行にともなって財務諸表の信頼性が高まるとして、農水産業貯金保険の保険料率の引き下げを検討することも政府に求めている。
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