世界の食料需給は1・7倍に 2050年の世界の食料需給見通し2019年9月24日
農林水産省は、9月17日、世界の超長期食料需給予測システムによる2050年の世界の食料需給見通しの予測結果を公表した。
同省は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書(2014年公表)を踏まえ、民間事業者に委託し、学識経験者の助言を得て「2050年における世界の食料需給見通し」としてとりまとめたもの。
世界全体の食料需給見通し
この需給見通しの概要は次のとおり。
◆長期的な食料安保政策に重要な基礎
国際的な食料需給は、低所得国の経済発展、人口増加に伴う需要量の増大、地球規模の気候変動の影響などを背景として、中長期的には逼迫する懸念がある。多くの農産物を輸入する日本として将来の世界の食料需給動向を見通すことは、長期的な食料安全保障政策の方向性を検討するための重要な基礎となる。
この見通しは、今後、想定される世界の気候変動の影響、人口増加、経済成長などの一定のシナリオに基づき、予測期間中、対象国・地域において基準年次(2010年時点)の政策や生産性の向上、技術進歩が継続することを前提として予見される将来の食料需給の一つの方向性を示すもの。
なお、この見通しでは、気候変動の前提として2010年から50年にかけて世界の平均気温が2℃上昇するシナリオを採用している。
◆低所得国の需要が大きく伸長
気候変動の前提として、2010年から50年にかけて世界の平均気温が2℃程度上昇するシナリオを採用した場合、世界の農地面積は0.73億ha拡大し、16.11億haとなる。オセアニア、中南米、アジアでは増加するが、北米、アフリカでは農地面積が減少するなど、世界の農地の分布が変化する。
人口増加と経済発展により2050年の世界の食料需要量は10年比1.7倍となる。特に、低所得国の伸びが大きい。畜産物の消費が増え、低所得国の伸びが大きくなる見通しが予測された。
こうした食料需要の増加に対して、収穫面積はほとんど増えないが、単収が増加し生産量は増え、穀物の生産量は2010年比1.7倍、油糧種子は同1.6倍に増加すると予測している。ただし、単収の増加は、「経済発展に伴う技術進歩等による生産性の伸び、気候条件を考慮して予測」とあるものの、それ以外の説明は公表された資料にはない。
また、日本の主要農産物の輸入先である北米、中南米、オセアニア、ならびに欧州では、経済発展に伴う農業投資の増加により生産量、純輸出量がさらに増加する。
その一方、アフリカ、中東では、経済発展に伴う農業投資の増大により主要作物の生産量は増加するものの、人口増加などにより需要量の増加が生産量の増加を上回り、純輸入量が大幅に増加する。アジアでは米の生産量、輸出量は増加するが、食生活の多様化などに伴い小麦、大豆の需要量が増大し輸入量が増加する。
この見通しから農水省は、今後とも取り組むべきこととして次の2点を指摘している。
○大量の農産物を輸入する日本は、国内生産の増大を図りつつ、日頃から世界の農作物の需給状況や見通しなどの情報を幅広く収集する必要がある。
○アフリカなど食料輸入の増加が見通される開発途上の国々に対して、生産性向上に向けた技術支援を継続的に行い、世界の食料安全保障に貢献することが重要である。
◆主要作物の見通し
なお、この需給見通しでは、主要作物の需給見通し、地域別の食料需給見通しを行っている。その概要は次のとおり。
【小麦】
高所得国では、生産量が増加する一方、経済発展の鈍化により需要量の増加は少ないことから、純輸出量が増加する見通し。
低所得国では、生産量が増加する一方、人口増や経済発展により需要量が生産量の伸びを超えて増加することから、純輸入量が増加する見通し。
【とうもろこし】
中所得国では、アジアにおいて畜産需要の増大による飼料用需要量が大幅に増加するものの、中南米を中心に生産量の伸びが飼料用需要の伸びを上回ることから、50年には中所得国全体として輸出超過に転じる見通し。
低所得国では、生産量が増加するものの、経済発展による需要量の伸びを上回ることができず、純輸入量が増加する見通し。
【大豆】
大豆は北米・中南米を中心に生産・輸出されており、主に油脂用および飼料用としての需要が多い。
世界レベルでは、収穫面積と単収が増加し、2050年の生産量は10年比1.5倍に達すると予測。
高所得国では、生産量は増加するものの、経済発展の鈍化により需要量は横ばいで推移するため、北米を中心に純輸出量が増加する。
中所得国では、人口増や経済発展による需要量の増加が生産量の増加を上回り、純輸入量が増加する。
◆地域別の見通し
日本の主要農産物の輸入先である北米、中南米、オセアニアなどでは、主要農作物の生産量および輸出量がさらに増加し、世界の食料供給基地としての地位を高める見通しだ。
アフリカ、中東では、経済発展に伴う農業投資の増大により主要作物の生産量は増加するが、人口増加などによる需要量の増加を上回ることができず、輸入量が大幅に増加する。
アジアでは、米の生産量、輸出量は増加するが、食生活の多様化などに伴い小麦、大豆の需要量が増大し輸入量が増加する。
なお、詳細は農林水産省のホームページで入手できる。
重要な記事
最新の記事
-
(394)Climate stripes(気候ストライプ)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年7月26日
-
地域医療の実態 診療報酬に反映を JA全厚連が決議2024年7月26日
-
取扱高 過去最高の930億円 日本文化厚生連決算2024年7月26日
-
【人事異動】JA全厚生連 新理事長に歸山好尚氏(7月25日)2024年7月26日
-
【警報】果樹全般に果樹カメムシ類 県下全域で最大限の警戒を 鳥取県2024年7月26日
-
【注意報】イネに斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 山形県2024年7月26日
-
今が旬の「夏酒」日本の酒情報館で提案 日本酒造組合中央会2024年7月26日
-
ヤンマーマルシェ、タキイ種苗と食育企画「とりたて野菜の料理教室」開催 カゴメ2024年7月26日
-
「ごろん丸ごと国産みかんヨーグルト」再登場 全国のローソンで発売 北海道乳業2024年7月26日
-
物価高騰が実質消費を抑制 外食産業市場動向調査6月度2024年7月26日
-
農機具王「サマーセール」開催 8月1日から リンク2024年7月26日
-
能登工場で育った「奇跡のぶなしめじ」商品化 25日から数量限定で受注開始 ミスズライフ2024年7月26日
-
東京・茅場町の屋上菜園で「ハーブの日」を楽しむイベント開催 エスビー食品2024年7月26日
-
鳥インフル 米国オハイオ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2024年7月26日
-
大玉すいか販売大幅減 小玉「ピノ・ガール」は前年比146.8% 農業総研2024年7月26日
-
千葉県市原市 特産の梨 担い手確保・育成へ 全国から研修生募集2024年7月26日
-
水産・農畜産振興 自治体との共創事例紹介でウェビナー開催 フーディソン2024年7月26日
-
新規除草剤「ラピディシル」アルゼンチンで農薬登録を取得 住友化学2024年7月26日
-
自由研究に「物流・ITおしごと体験」8月は14回開催 パルシステム連合会2024年7月26日
-
高槻市特産「服部越瓜」の漬け込み作業が最盛期2024年7月26日