腸内細菌の胆汁酸耐性を解明 農研機構、オランダの大学と共同研究2020年12月24日
農研機構は12月22日、オランダのワーヘニンゲン大学との共同研究で、ヒトの疾患改善効果が期待される腸内細菌「アッカーマンシア・ムシニフィラ」(以下、A.ムシニフィラ)の胆汁酸に対する耐性の仕組みの一部を世界で初めて解明したと発表した。
共同研究では、肥満やII型糖尿病などの疾患予防効果が期待される腸内細菌A. ムシニフィラに対し、腸内細菌叢の形成などに関与している胆汁酸が、同菌の育成や遺伝子の働きに与える影響を調べた。その結果、胆汁酸9種のうち、デオキシコール酸がA. ムシニフィラの生育を促進し、逆にグリコデオキシコール酸など6種が生育を阻害することが分かった。
さらに生育阻害作用を持つ胆汁酸に対し、A.ムシニフィラが耐性を持つ仕組みを調査。胆汁酸混合物(ウシ胆汁抽出物)を添加した培地で生育させたA. ムシニフィラで働く遺伝子を網羅的に調べた結果、物質を細胞内外に輸送するABCトランスポーターおよびRND型トランスポーター遺伝子群が強く働いていることが判明。各トランスポーターの阻害剤はいずれもA. ムシニフィラの胆汁酸への耐性を低下させた。これらの結果から、トランスポーターによる輸送がA. ムシニフィラの胆汁酸耐性に関与していることが推測される。
同時に胆汁酸混合物によって、細胞膜を構成するホパノイドの合成経路に関連する遺伝子群が強く働いていることが分かり、ホパノイド合成経路の阻害剤も、A. ムシニフィラの胆汁酸への耐性を低下させることが判明した。これにより、ホパノイドが維持する細胞膜構造が、A. ムシニフィラの胆汁酸耐性に関与していることが推定された。
今回の研究結果から、A. ムシニフィラは各種トランスポーターやホパノイドを利用して、生育阻害作用を持つ胆汁酸に富んだ腸内環境に適応していることを明らかにした。
また、A. ムシニフィラは健常者に比べ、肥満度指数や血糖値の高いヒトは少ないとされており、肥満やII型糖尿病の改善に利用できることから、今後の研究により、胆汁酸とA. ムシニフィラの相互作用が解明されることで胆汁酸を介したA. ムシニフィラの育成を制御する技術開発が見込め、将来的には腸内環境抑制機能を持つ食品の開発にも期待がかかるとしている。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(167)食料・農業・農村基本計画(9)肥料高騰の長期化懸念2025年11月8日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(84)グルコピラノシル抗生物質【防除学習帖】第323回2025年11月8日 -
農薬の正しい使い方(57)ウイルス病の防除タイミング【今さら聞けない営農情報】第323回2025年11月8日 -
【注意報】冬春トマトなどにコナジラミ類 県西部で多発のおそれ 徳島県2025年11月7日 -
米の民間4万8000t 2か月で昨年分超す2025年11月7日 -
耕地面積423万9000ha 3万3000ha減 農水省2025年11月7日 -
エンで「総合職」「検査官」を公募 農水省2025年11月7日 -
JPIセミナー 農水省「高騰するコスト環境下における食料システム法の実務対応」開催2025年11月7日 -
(460)ローカル食の輸出は何を失うか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年11月7日 -
「秋の味覚。きのこフェア」都内の全農グループ店舗で開催 JA全農2025年11月7日 -
茨城県「いいものいっぱい広場」約200点を送料負担なしで販売中 JAタウン2025年11月7日 -
除草剤「クロレートS」登録内容変更 エス・ディー・エス バイオテック2025年11月7日 -
TNFDの「壁」を乗り越える 最新動向と支援の実践を紹介 農林中金・農中総研と八千代エンジニヤリングがセミナー2025年11月7日 -
農家から農家へ伝わる土壌保全技術 西アフリカで普及実態を解明 国際農研2025年11月7日 -
濃厚な味わいの「横須賀みかん」など「冬ギフト」受注開始 青木フルーツ2025年11月7日 -
冬春トマトの出荷順調 総出荷量220トンを計画 JAくま2025年11月7日 -
東京都エコ農産物の専門店「トウキョウ エコ マルシェ」赤坂に開設2025年11月7日 -
耕作放棄地で自然栽培米 生産拡大支援でクラファン型寄附受付開始 京都府福知山市2025年11月7日 -
茨城県行方市「全国焼き芋サミット」「焼き芋塾」参加者募集中2025年11月7日 -
ワールドデーリーサミット2025で「最優秀ポスター賞」受賞 雪印メグミルク2025年11月7日


































