ルールに則さない輸出規制「実施しない」 WTO閣僚会議で合意2022年6月20日
第12回WTO(世界貿易機関)閣僚会議は15日まで予定を延長し6月17日の未明に食料安全保障宣言や漁業補助金などで合意し閉会した。食料安全保障宣言では、164の加盟国が全会一致でWTOルールに則らない輸出規制は行わないことに合意した。
閣僚会議はWTOの最高意思決定機関で通常は2年に1回開催されるが、第12回会議は新型コロナウイルス感染症の影響で延期され、4年半ぶりに開催された。議長国はカザフスタンで164加盟国の代表が参加した。
食料問題では「食料安全保障の不安への緊急対応についての閣僚宣言」を採択した。
そのなかで「国内生産と並んで、貿易は世界の食料安全保障の改善のために非常に重要な役割を有する」と貿易の役割を強調した。
また、加盟国は食料や農産品に加えて、肥料など投入財についても「世界市場の機能及び長期的持続力向上に取組む」とし、その際、後発開発途上国(LDC)や食料純輸入開発途上国(NFIDC)のニーズを考慮することも明記した。
輸出規制については「WTOルールに則さない輸出規制を実施しない」ことに合意。国民の食料供給に緊急対応が必要な場合などに限り、期間を限定し透明性を確保し、事前に通報するなどルールに則ることを盛り込んだ。
そのほか余剰備蓄がある場合はWTOルールに従って「国際市場に放出することを推進する」ことにも合意した。
WTO閣僚会議にはロシアも含めて全164か国が参加した。閣僚宣言ではロシアのウクライナ侵攻を非難する文言はないが、農産品貿易の混乱がとくに後発開発途上国に影響を与えていると明記したほか、肥料など農業資材価格の上昇、運送費のコスト上昇なども、世界の食料安保に影響を与えることも前文で強調している。
そのうえでWTOが定めたルールに則さない輸出規制は行わないことに全会一致で合意した。一方、加盟国も含めて現在、20数か国が食料などの輸出規制を実施しているともいわれている。宣言に法的な権限はないものの、農水省は「全会一致で宣言を出した責任があると国際的なプレッシャーにの一助になることを期待している」という。
また、国連のWFP(世界食糧計画)が行う人道目的の食料調達に対して「輸出の禁止または規制を実施してはならない」とする閣僚決定も採択した。
閣僚会議では農業分野の交渉についても「今後作業計画」について話し合われた。
農水省によると、途上国が食料安保のために公的備蓄を目的に食料を買い上げる助成金について現在は暫定的に認めているが、先進国の一部は備蓄を輸出に活用している例もあると批判して、削減すべき国内支持の問題として協議を求めているが今回も途上国と意見が対立。その他、将来の農業政策に関して各国の考えが異なり、合意に至らず議論を継続することになった。
漁業補助金では違法漁業に対する補助金の禁止や、乱獲状態にある資源についての補助金は資源回復のための措置を講じることを条件とするなど一定のルールが合意された。
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