2024年度の新規加入が増勢に 若者と女性に年金制度のメリット訴求 農業者年金基金2025年8月19日
独立行政法人農業者年金基金(黒田夏樹理事長)は、農業者年金制度による老後の生活安定と地域の農業者確保に資するメリットを打ち出し、若い農業者と女性農業者の加入を呼び掛けている。
農業者年金制度は「農民にもサラリーマン並みの年金を!」と求める運動の高まりを背景に、1970年に農業者年金基金法に基づき創設された。サラリーマンの厚生年金部分にあたり、自営農業などに従事する個人が任意で加入し、国民年金(基礎年金)に「農業者老齢年金」として上乗せされる。
同制度は「農業者の老後生活の安定と福祉の向上を図り、農業者の確保に資するという位置づけで、担い手確保のための年金として日本で唯一の農業者向け公的年金制度」(黒田理事長)だ。ただし「制度の存在や内容について認知度が低い」ことが大きな課題となっている。
農業者年金制度のイメージ
少子高齢時代でも強い
旧制度は、現役世代の保険料で年金を賄う世代間扶養の「賦課方式」だったが、農業従事者の高齢化で支えきれなくなり、2002年から新制度がスタートした。積立額を自分で決める「積立方式」とし、年金額は「確定給付型」から「確定拠出型」に変更。同基金の運用結果に応じて年金額が決まる「少子高齢時代でも強い制度」となった。
2024年度は旧制度・新制度を合わせて約24万人に年間約615億円の年金を支給。新制度の加入者累計は13万8383人で、このうち5万8000人以上に71億円を給付した。
同基金は2027年度末までに若い新規加入者(20歳以上39歳以下)を5500人以上、女性を3400人以上確保し、新制度の加入者累計を15万人にする目標を掲げている。
2024年度の新規加入者は、若い農業者が前年度1202人から1286人に、女性も705人から831人に増加。目標に対する進捗率はともに約45.2%となり、「過去6年間はマイナス基調が続いていたが、7年ぶりの増勢」となった。これは、年金業務を一部委託している、農業委員会やJAの戸別訪問活動などの成果とみている。
兼業でも加入可、保険料国庫補助も
新規加入促進に向け、同基金は「積立方式」「確定拠出型」にとどまらないメリットを打ち出している。
一つは、農業者なら広く加入できることで、年間60日以上の農業従事など加入資格に合致すれば「専業でも兼業でも加入できる」。農業経営者の配偶者、パートやアルバイト、後継者とその配偶者なども加入可能だ。
「農業者老齢年金」と「特例付加年金」
担い手の負担軽減策として、固定保険料月額2万円のうち最大1万円の国庫補助を受けられる「政策支援加入」もある。20年以上の加入や経営継承を条件に、「農業者老齢年金」に加えて運用益も含めたこの場合「特例付加年金」が上乗せされる。「農業経営の若返りを持続的に図り、次世代へ繋げる」ことを目的とした制度だ。
そのほか、保険料を1000円単位で自由に選択できるほか、終身年金で80歳までに亡くなった場合は、受け取った年金額相当が「死亡一時金」として支給される。
税制面での優遇も大きい。①保険料は家族分も含めて全額社会保険料控除②運用益は非課税③年金は公的年金控除の対象④死亡一時金も非課税、といった措置を受けられる。
資産運用のマイナス分補填も
年金資産の運用は安全性を重視し、直近10年間の平均運用利回りは年率2.75%、新制度発足以降23年間の平均は2.89%を確保している。運用益が相場環境によってマイナスになった場合は補填される仕組みで、65歳以上の年金裁定時と年度全体の運用結果に応じて適用される。
例えば、現役加入者の資産を運用する「被保険者のポートフォリオ」では、2024年度の運用収入はマイナス0.59%となったが、その分が補填され、加入者への実績は0.00%とされた。
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