適切な価格形成 国も支援を 「畜安法」見直し求める意見も 畜産部会2022年12月15日
農林水産省は12月14日、食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開き、加工原料乳生産者補給金などの単価や数量を諮問した。畜産部会は諮問を妥当とする答申を行い、同日、農水省は畜産物価格を正式に決定した。畜産部会では飼料価格高騰とコロナ禍による需要低迷などで厳しい状況にある生産者から窮状と将来への不安を訴えるとともに、消費者の理解、適切な価格形成の必要性も強調された。
藤木政務官(右)に答申する大山部会長代理
加工原料乳生産者補給金の単価は、初妊牛価格の下落や労働時間の減少という単価下げ要因があったものの、飼料価格の高騰と子牛価格の下落による副産物収入の下落という上げ要因が上回り、43銭引き上げ1kg当たり8円69銭となった。
集送乳調整金も輸送単価が増加し6銭引き上げ1kg当たり2円65銭となった。合わせて49銭引き上げ11円34銭となった。
農水省が示した案に対して、北海道十勝で酪農を営む(株)マドリンの角倉円佳代表は「期待していたが正直残念。計算式は理解できるが、それ以上の緊急事態」と話し、諮問には賛成したものの現場の窮状を訴えた。来年度も生産抑制に取り組むが「一度、生産を抑えると、次にもっと搾っていいと言われても簡単に牛は乳量を増やせない。(現場で)捨てている農家もいる。一方、自由な出荷をしている酪農家もいる」と指摘、「農家と指定団体、乳業が一体というのが酪農のいいところと思っていたが、バラバラになっていくのが不安」と話した。また、牛乳乳製品の重要性を国民に理解してもらうための施策と、若い酪農家が離農しないよう支援する必要性を強調した。
串田雅樹JA北海道副会長は、過去にない生産費の上昇など情勢の変化をふまえ、今後は「算定式の見直し」が必要と指摘するとともに、指定団体が生産抑制の取り組みをする一方、自由に販売している酪農家もいる実態に対して「国全体の安定的な生産、供給のため、改正畜安法の改正」を求めた。
栃木県の小山農場の小山京子氏は、周囲の畜産農家には多額の負債を抱え、関係者が多く廃業することもできない人もいる実態だという。同時に円高で輸入飼料に頼って多頭化してきたことも現実だとして、水田放牧などで飼料を自給する畜産など耕畜連携への取り組みを強調した。
養鶏生産者は多発する鳥インフルエンザへの危機感を伝えた。畠中育雛場の畠中五恵子代表取締役は「既成概念では追いつけない変化が起きている」として省庁を横断した相談窓口の設置を求めると同時に「将来の食料安保を考え、日本の食における畜産を守る支援を」と訴えた。
彦坂誠神奈川中央養鶏農協代表理事組合長は、肥料価格も高騰するなか、鶏糞から堆肥を作るなど、資源循環の取り組みを今まで以上に支援する必要があることや、国産飼料の安定確保の観点から飼料用米への支援継続を求めた。
また、和牛の一貫生産をしている福永畜産の福永充代表取締役は、コストが3割上昇する一方、子牛価格は昨年より2割下落しているとして「このままでは生産意欲が失われてしまうのではないか」として肉用子牛の保証基準価格の引き上げなどの支援策のほか、円滑に借り入れができる金融支援も求めた。
JA全中の馬場利彦専務は、飼料価格の高止まりに対する機動的な支援と生乳の生産抑制の取り組みへの支援を求めるとともに、酪農家から需給調整への取り組みに公平感がないと批判が出ている改正畜産法について「検証を行って見直しを」と述べるとともに、将来にわたって経営を安定させていくには「適切な価格形成が必要」として国もコスト上昇分を価格転嫁できる環境や仕組みを整備するよう求めた。
部会長代理の大山憲二神戸大大学院農学研究科教授は「中長期的には価格転嫁していくマーケットにしていくことが大事。国民に食料安保や環境と景観、健康と暮らしを守る農業の価値を納得してもらい価格をつけることが必要だ」と話した。
農水省は生乳の需給調整については、系統外の酪農事業者に対して「個別に需給状況を説明していく」とするとともに、価格転嫁ができる環境づくりに取り組むという。
答申を受け取った藤木眞也農林水産大臣政務官は「委員からの意見を十分に参考にしたい。これまでに経験したことのない大きな局面を迎えている。世界的な食料安保のリスクが高まっており情勢変化に対応していきたい」と述べた。
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