令和5年度小麦の需要量 外食など回復で 4万t増の見込み 農水省2023年3月3日
農林水産省は3月1日の食糧部会に2023(令和5)年度の麦の需給見通しを示し了承された。コロナ禍による外食などの需要減が回復基調にあることから前年度より4万t増の562万tとした。部会では国産小麦や米粉の増産へ構造転換が必要だとの意見が出た。
食糧用小麦の総需要量は2020、21年はコロナ禍で外食などの需要減で減少したが、22年度は回復基調から前年比4万t増の558万tに見込みで同101%となる。
23年度についても同様に対前年度比として562万tと見通した。
このうち国産小麦の生産量は23年産の作付け予定面積21.9万haと直近3か年の単収と、2030年に108万tを生産努力目標としている基本計画をふまえて対前年比増加率3.1%を加味し101万tと見通した。年度内の流通量は前年産からの繰り越しと合わせて94万tとした。
また、米粉の2022年産生産量は4.5万tで前年より0.3万t増。23年産も
増産傾向が続くとみて生産量は4.8万tと見通した。年度内の流通量は前年産からの繰り越しと合わせて4.8万tとした。
外国産麦の輸入量は国産小麦流通量94万tと国産米粉流通量5万tを総需要量562万tから差し引いた463万tと見通した。
備蓄は外国産食糧用小麦の需要量の2.3か月分の備蓄を行っていることから23年度の備蓄目標は89万tとする。
また、食糧用大麦とはだか麦の総需要量のうち主食用の需要は一時消費が増えたもち麦などが減少傾向にある。一方で焼酎の家庭内需要や麦茶のノンカフェイン需要が増えており、さらに外食の需要回復で発泡酒などの需要が見込まれ、需要は全体として堅調と見通して対前年比106%の33万tとした。
このうち国産大麦とはだか麦の生産量は15万tと前年度と同水準を見込む。
食糧部会は農水省が示した需給見通しを了承したうえで生産と流通などの課題を議論した。
日清製粉の山田貴夫社長は新型コロナウイルス感染症の扱いが5類に以降することから消費増が期待されるものの、食パンの価格改定で消費が漸減するなど「市場環境は不透明」と指摘したほか、輸入小麦の政府売り渡し価格を据え置いたことで、電気料金などの値上げを製品に転嫁できないなどの問題点を指摘した。
4月の価格改定に向けて政府は激変緩和措置を検討しているが、委員からは据え置きを疑問視する意見や、また、全中の馬場利彦専務は「輸入麦価は国内の小麦価格と連動している。生産資材価格が高騰するなか、輸入の小麦の価格据え置きは、生産現場にも影響を与えかねない」と生産者への影響を懸念した。
そのほか、国産小麦を使用する製品が増えていることから、食料安全保障の観点から国産小麦、米粉の増産に向け構造転換が必要との意見が相次いだ。
ただ、製粉メーカーからは「国産にすぐにシフトできるのか。外国産と同品質になっていないため、結果として需要がない」と問題点を挙げ、ニーズに合った小麦生産の努力と、新たな小麦商品の開発に力点をおくべきと強調した。
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