海外依存品目の生産拡大や「地域計画実現総合対策」など 25年度重点事項 予算増は必須2024年8月21日
農林水産省は8月21日、自民党の総合農林調査会・農林部会合同会議に2025年度予算概算要求重点事項を説明した。
改正食料・農業・農村基本法の理念である▽食料安全保障の強化、▽環境と調和のとれた食料システムの確立、▽農業の持続的な発展、▽農村の振興等を図るため、6月決定の政府の骨太方針に基づき、農水省は農業の構造転換に向けた施策を「初動の5年間で集中的に実行する」ための予算を要求する。
食料安全保障の強化では海外依存度の高い麦・大豆など、水田での本作化や、畑地化による生産拡大、飼料作物の導入と定着などを水田活用の直接支払い交付金等で支援する。
小麦と大豆の国産化の推進に向け、作付けの団地化やブロックローテーションの取り組み、ストックセンター整備と民間主体の一定期間の保管による供給量の安定化などの取り組みを一体的に支援する事業も措置する。
また、米粉の特徴を生かした商品開発・製造、米粉製品の利用拡大に向けた情報発信の取り組みを支援する。
強い農業づくり総合支援交付金では、「地域計画」の実現やスマート農業技術の実装を図るモデル的な現場実装を支援する事業を創設するほか、産地の収益力強化・物流の効率化に向けた基幹施設、みどりの食料システム戦略の推進に必要な施設の新設・再編等を支援する。
畜産・酪農では肉用牛の出荷月齢の早期化や、乳用牛の長命連産性向上のための飼養管理の普及を支援する。
生産資材の確保と安定供給も課題だが、国内肥料資源の利用拡大と広域流通に向けたたい肥の高品質化・ペレット化に必要な施設整備とほ場での実証などを支援する。
飼料対策では、酪農・肉用牛経営者の連携による計画的な飼料増産や飼料品質向上の取り組み、「地域計画」に基づく飼料産地づくりの推進などを支援する。
農業の持続的な発展のための予算としては「地域計画実現総合対策」として、地域計画を核に現場の状況に応じた事業を総合的に実施することで、地域計画の実現を強力に後押しする。
地域農業の担い手への支援では中核となる担い手が必要な農機や施設を導入する際の支援や、農地の引受力向上や後継者育成などを「農地利用効率化等支援交付金」で支援する。
また、集落営農の連携・合併に向けたビジョンづくりや人材の確保の支援や、集落営農が行う農作業受託などの実態調査を「持続的地域営農確保総合対策」で支援する。
農業支援サービス事業体の育成・確保、多様な農業人材に対する研修機会の提供、多様な農業人材からなる集落営農の活性化などの支援も盛り込む。
環境負荷低減の取り組みでは、環境保全型農業直接支払交付金を措置する。来年度予算では有機農業について単収が低く営農が不安定になる慣行栽培からの移行期を重点的に支援する。
多面的機能支払交付金では活動組織の体制強化や、地域共同で行う環境負荷低減の取り組みを促進する。来年度から次期対策に移行する中山間地域等直接支払交付金は、集落協定のネットワーク化、スマート農業による作業の省力化への加算を充実させる。
合同会議では出席議員から生産現場では機械・資材や電力代など高騰しており、基盤整備事業など「コスト上昇に見合った予算額が必要だ」との声や、多面的機能支払に対する地域の期待は高いとして予算の充実を求める声が出された。
24年度当初予算は前年度より3億増の2兆2686億円となっている。改正基本法で位置づけた食料安全保障の強化や農業の持続的な発展の実現に向けた初年度予算として「ふさわしい予算額」となるか、その実現が求められている。農水省は27日に自民党の会合で予算額を説明する。
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