農政 解説・提言詳細

2014.01.23 
【特別寄稿】組合員や地域住民の夢を実現する「あんしん」 池田陽子・JAあづみくらしの助けあいネットワーク"あんしん"理事長一覧へ

・あんしんして暮らせる地域を
・協同意識向上ねらい塾開く
・広がった実践活動
・「100歳まで農作業で達者が一番」
・NPO法人の存在意義高まる

 平成10年7月、JAあづみくらしの助けあいネットワーク"あんしん"は、高齢者の助け合い制度を再構築する形で、会員制の有償在宅サービスとしてスタートした。独りになっても、寝たきりや認知症になっても、可能な限り自宅で暮らすための支援を行う組織だ。以来、住みなれた地域、住みなれた家でつつがなくあんしんして暮らせる里づくりを目指して15年が経った。

地域づくりは自らの手で

平成24年8月のNPO法人設立記念の集い。聖路加国際病院の日野原名誉院長の指揮で「ありがとう」を合唱

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平成24年8月のNPO法人設立記念の集い。聖路加国際病院の日野原名誉院長の指揮で「ありがとう」を合唱

◆あんしんして暮らせる地域を

池田陽子・JAあづみくらしの助けあいネットワーク“あんしん”理事長 当時は、農業所得は低迷し、組合員の高齢化がすすみ、地域の協同意識が希薄化する時代であった。JAあづみでは、協同運動を基本にした農協事業に取り組むための方策を探っていたが、結果的には協同組合の原点に戻ることであった。
 そのために、組合員・地域住民の一人ひとりが持つ「何らかの活動に参加したい」というモチベーションを尊重し、参加・参画意識を明確に持ってもらおうと、既存の組織を母体にするのではなく、目的に向けて新たな組織をつくることにした。その新たな組織は、参加者の自主性をさらに高めるため、活動の企画や運営はもとより、資金計画まで参加者自身が行うことにした。あんしんして暮らせる地域は誰かにつくってもらうのではなく、住民自らの手でつくるものだからだ。

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池田陽子さん

◆協同意識向上ねらい塾開く

 それには、一人ひとりがどう生きどう住み続けるかを共有するため、協同意識の醸成が必要になる。平成11年7月には「JAあづみ生き活き塾」が始まった。
 塾での学習の柱は、農協であることにこだわり「農業、環境、福祉」の3つとした。学ぶだけではなく「家庭で実践、地域で実践」をモットーに、カルチャースクールなどとは一線を画したが、これが組合員や地域の共感を得て、毎期百数十名が受講してきた。
 元気なうちは、人づくり、仲間づくり、地域づくりを通じ、自分自身が地域で生き活きと自立したくらしができることを目指す。やがては「困ったときはお互い様」という支え合いづくりで、あんしんして暮らせる里づくりの実現につながる。そこは、子供たちもあんしんして暮らせる地域であり、高齢者たちが生きがいを持ちながら、なだらかに歳を重ねるソフトランディングの社会システムである。

◆広がった実践活動

 ここから生まれた様々な生きがい活動は、地域に実践活動の取り組みを広げてきた。「朗読ボランティア」「ふれあい市安曇野五づくり畑」「菜の花プロジェクト」「学校給食に食材を提供する会」「心身機能活性療法指導士の会」「童謡唱歌の会」であり、参加者自身の運営によるミニデイサービス「あんしん広場」活動は現在26カ所で毎月開催している。「ふれあい市安曇野五づくり畑」との協働で「あんしん広場」からは、買い物のお手伝いをする「御用聞き車“あんしん”号」も生まれた。
 これらは利用者のニーズを最大限尊重したものだが、協力会員からの願いもあった。年金をもらうようになっても、たまには孫に何か買ってやりたい。そのためには少し小遣い稼ぎをしたいとの想いであった。こうして活動のいくつかは仕事づくりにもつながった。

◆「100歳まで農作業で達者が一番」

 この地域づくりをさらに広げるためこれまでの活動を見直し、外部からの提言も取り入れて、平成21年、10年後を見据えて「“あんしん”ビジョン」を作成した。全体の目標を「住み慣れたところで、住み慣れた家で、あんしんして生き活きと暮らし続けることのできる里づくり」とし、みんなの目標を「100歳まで農作業で達者が一番」と決めた。
 その重点事項は、[1]100歳まで農業ができる健康な体と生きがいづくり、[2]いつまでも地域で暮らせる信頼できる仲間づくり、[3]安曇野の文化と自然を次の世代に残し伝える、[4]老いても自分らしい暮らしができる里づくり、である。
 平成23年には、目標を具現化させるために会員へのアンケートも行い、“あんしん”に期待するサービスが、移送と配食であることがわかり、さらに具体的に進めるため、「新しい“あんしん”のあり方を考える会」を立ち上げた。専門性を高めながら、私たちが高齢になるときにも継続的に活動していくためには、法人格を取得することが必要であるとの結論に達し、直ちに検討に入った。
 既に事業規模が年間で1000万円を超えていることや、平成20年に御用聞き車“あんしん”号の運用が始まった際、任意団体であるが故に資金はあっても車輌の所有ができなかった悔しい経験がそこにはあった。
 平成25年4月、それまでの任意団体としての“あんしん”を解散し、特定非営利活動法人(NPO法人)の設立総会を開いた。8月2日には県の認可を受け、同月4日には千國茂JAあづみ組合長、宮沢宗広安曇野市長、日野原重明聖路加病院名誉院長などをお招きして、NPO法人設立記念「“あんしん”の輪を広げる集い」を約800名の参加で開催した。
 それはこの組織が地域に開かれた組織であり、しっかりと認知されていることを示していた。設立の挨拶と支援の依頼をかねて、利用料金や年会費の値上げのお願いをして回ったが、反対はほとんどなく、地域の期待を犇犇(ひしひし)と感じた。

◆NPO法人の存在意義高まる

 平成25年8月に政府の社会保障制度改革国民会議が示した報告書には、「社会保障制度改革推進法の基本的な考え方」として、日本の社会保障制度は「自助」を基本としながら、自助の共同化としての「共助」が自助を支え、自助や共助では対応できない場合にのみ、公的扶助や社会福祉などの「公助」が補完する仕組みを基本とするとされている。
 とすれば、私たちの“あんしん”のような、参加者自身の自由な意志と自発的な活動によって地域や社会の問題に積極的に取組んでいこうというNPO法人の存在意義がますます高まっている。
 今、平成27年度の介護保険制度改正でサービスが縮小されることが確実になっているが、サービスを受けられなくなる「要支援」の人たちについて、安曇野市から提言を求められてもいる。
 これからも、私たちは目標に向かって、[1]地域や家庭の中に問題を潜在化させず、困った人が助けてといえる関係づくり、[2]くらしの最後の砦になれるように、どんな相談も真摯に受け止める、[3]JAを始め、行政、医療関係者など他の機関とのネットワークを形成する、などの努力を重ねていきたい。
 “あんしん”発足当初から掲げてきた「地域づくりは自らの手で」という時代がやってきた。

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