農政:時論的随想 ―21世紀の農政にもの申す
(75)"決議"だけでは有権者、納得しない2013年7月8日
・重要な自民議連の決議
・変わらぬ安倍政権
・まだ、やるべきことはある
自民党の「TPP交渉における国益を守りぬく会」(同党国会議員の6割超の242人が参加)は、6月24日"国益を守りぬくとの基本方針を早急に示すことを政府に求める決議"を行った。参院選を目前にして、極めて重要な決議と私は考える。ポイントを紹介しておこう。
◆重要な自民議連の決議
TPP参加をきめてからの政府の動きについての国民の受け取り方についてだが、“国民は医療、農業、雇用などの分野における規制緩和がなされていることに対し、大きな不安を有している。この方向で、我が国の経済、社会を律するのではないのか、TPPについても妥協を重ねるのではないのかと、懸念を抱くに至っている”とする。その通りである。そう認識した上で、自民党および衆参両院の農林水産委員会が、“自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要5品目等やこれまで営々として築き上げてきた国民皆保険制度等の聖域(死活的利益)の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすることを決議”していることを指摘した上で、“政府は…早急に以下の取り組みを行い、国民の懸念を払しょくすべきである”とし、
“1.TPP交渉に臨むにあたり、[1]農林水産品における関税、[2]自動車等の工業製品の数値目標など、[3]国民皆保険、公的薬価制度、[4]食の安全安心の基準、[5]投資家・国家訴訟(ISD)条項、[6]政府調達・金融サービス業に関して、国益を守りぬくとの基本方針を早急に示すこと。(2.略)
3.国益の確保ができないと判断した場合は、交渉からの脱退も辞さないこと。“
と、決議している。安倍首相は、まだこの決議に応えていない。
◆変わらぬ安倍政権
この決議がなされるより4日前の6月20日に「参議院選挙公約2013」が発表されている。その「公約」では、
“TPPなどの経済連携交渉は、交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求する”
と、書かれているだけで、何を守るのかは不明だし、駄目だった時のことなどは何もふれていなかった。そして公約と同時に発表した総合政策集「Jファイル2013」に、“・農林水産物分野の重要5品目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)などの聖域を確保する。・農林水産分野の重要5品目などを確保できない場合は、脱退も辞さない”と書かれてはいた。が、この公約発表の際、?市早苗政調会長は「Jファイル」は、“公約とは分けて考えてほしい”と述べたという。“この発言に、同党の農林幹部は「公約ではないと言っているようなもの。自民党は重要5品目などを守る気がないととられる」と憤る”と、6月22日付「日本農業新聞」は伝えていた。当然ながら“21日の同党農林水産貿易対策委員会…では、党決議や衆参農林水産委員会の決議を守ってTPPに対応するよう、政府に求める意見が続出”したという。それで、6月24日の決議はなされたのである。
「TPP交渉における国益を守りぬく会」に参加されている自民党の先生方は、同じような決議を何度されていることだろうか。国会での決議を含めれば確か、今年で4度目である。それも、議院内閣制の下、政府と政府与党は常に双方、緊密な連携を堅持して、その債務を果たさなければならない“と明記したり、「今回の決議は党の議員連盟の決議を踏まえた議論を重ねてきたものだ。多くの国民や議員の思いが凝縮されている。それを踏まえ、政府は交渉にあたってほしい”との与党筆頭理事の談話つきで、である。
が、安倍政権のTPPへの対応姿勢に変化は見られない。
◆まだ、やるべきことはある
“私たちは決議しましたよ…”だけでは、有権者はもう納得しない段階にある。有権者の“懸念”に応えるために、まだやるべきこと、やれることがあるのではないか。古い話だが、“脱党で党にゆさぶりをかける”ことが功を奏したこともあった。
64、65年の北海道馬鈴薯は豊作だった。当然ながら、馬鈴薯でん粉の暴落が心配された。馬鈴薯でん粉は農産物価格安定法で価格が下がったときには政府買い上げになるが、当時の農林省試算は25kg917円だった。
「これは大変だ」ということで、北海道JA あげて50余人の陳情団を編成、上京して道選出衆・参議員の出席を求めて、でん粉値上げ要求大会をもち、各方面に要請運動を行った。
衆・参議員の先生方もよく動いてくれたが、いい返事は政府からは出てこない。そこで陳情団長だった太田寛一が考えたのが、“脱党で党にゆさぶりをかける”ことだった。その要請に苦渋の決断で中川一郎ら道選出自民党議員9名が応え、田中角栄幹事長に離党届を手渡して買い上げ価格引き上げを要望、田中幹事長もそれに応えざるを得ず、佐藤首相の指示で引き上げが改訂となった(最終価格1220円)。
TPPは国の“かたち”にかかわる。離党覚悟で党議決に従うことを求めてもいいのではないか。
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