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農政:田代洋一・協同の現場を歩く

【田代洋一・協同の現場を歩く】集落協定の拡大模索 「直接支払い」が鍵・広島県三次市2024年2月26日

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集落営農、農協、生協といったさまざまな「協同」の取り組みの現場を訪ね、その息吹を伝える田代洋一横浜国立大学名誉教授のシリーズ。今回は広島県三次市の農事組合法人を紹介する。

広島県は農業従事者の高齢化率が全国2位、耕地減少率が4位と高く、集落営農が農地の28%を占めている。そこで、中国山系の県境に近い三次市で、2022年に表に示した3法人で集落営農の話を聞いた(以下ではABCでよぶ)。同市は古墳群で有名で、古くから山砂鉄、稲作で栄えた山間の盆地だ。

三次市の調査法人(2022年) 

3法人はいずれも大字(藩政村)をエリアとした農事組合法人。農業集落(むら)の多くは10戸にもみたず、大字単位の取り組みになったのだろう。A、B法人のきっかけはほ場整備事業に伴う農機導入のための全戸組織だ。しかしその後の歩みは異なった。

A法人の大字(58世帯)では、2000年の中山間地域等直接支払いに当たって、村全戸参加の集落協定を結び、交付金は個人配分しなかった。そして2003年に農用地利用改善団体を設立するとともに、「荒廃農地を出さないため」にA法人を立ち上げた(60戸)。中山間地域等直接支払いの2期目にはA法人の個別協定に改め、交付金がA法人に入るようにし、鳥獣害対策、農道補修、畦畔(けいはん)草対策に用いている。つまり直接支払いの集落協定と一体化した「ぐるみ方式」をとっている。

それに対してB法人の大字(250戸)では、機械導入を農事組合の1号法人(機械施設)として行い、オペレーターによる作業受託を主体にしていたが、「借りてくれ」という話が増え、92年にオペレーター7人による2号法人(20ha)が設立された。リーダーは、賃貸借の時代に「みんなで仲良く集落営農」は避けたわけだ。メンバーは大字・集落を異にし、兼業が多かった。1人は当時29歳で九州の大卒。

C法人が属する大字は16集落、102戸、82haからなる。ここでは数集落ごとに中山間地域等直接支払いの集落協定を結んできた。その構成員に対し「将来の農業をどう考えているか」のアンケートをとった結果、補助金(農地集積協力金)が出るということで、7集落、3集落協定の39haについて集落協定を統合しつつ、人・農地プランに取り組み、その中心的経営体としてC法人を立ち上げた。前身なしの「いきなりの法人立ち上げ」だった。11戸の参加で「ぐるみ」にはならなかった。行政の熱心な働きかけと、現在84歳の組合長(元農協役員)のリーダーシップが背景にある。補助金は法人の立ち上げ資金にした。理事8人、監事2人で、構成員≒役員の体制だ。

今日の全国の集落営農(法人)の多くが、2007年の品目横断的政策(経営所得安定対策)をきっかけとしているのに対し、以上の3事例はそれより早かったり(A、B)、中山間地域直接支払いの集落協定を足掛かりにしている(A、C)ことが特徴だ。

今一つ、地域的に共通する特徴がある。A法人の組合員のうち不在地主(東京から福岡まで)が22戸(3分の1)もいる。B法人の地権者131人のうち26人は不在地主(2割)だ。C法人の員外利用(貸し付け)17戸のうち10戸が不在地主(全地権者の3分の1)だ。遠隔中山間地域の特性として、法人が転出地権者の農地のお守役を務めているわけである。

さて現状はどうか。A法人の現組合長は三代目、70歳台後半に入ったが、その後継者も確保されている。課題は高収益作物を取り入れ雇用を確保すること。採種用稲を栽培しているA法人の収支からしても雇用は可能である。

B法人の現在の構成員は4人で、半分は従業員から。2020年に先の大卒者が代表になっている。常雇5人を入れ、近隣大字に規模拡大して現在は75ha。農機投資を抑えるため、市内30法人が参加したJA三次集落法人ネットワークが2000年に立ち上げられ、B法人は大豆コンバイン作業を受託している。借入田は黙っていても増えるが、高収益作物の導入が必要とされている。

C法人は、農地中間管理機構関連事業で地元負担ゼロになる50a区画へのほ場整備に取り組む。現在もアスパラのハウス栽培14a(露地6a)、ホウレンソウ9aに女性8人が取り組んでおり、高齢なので4人づつ組んで朝の2時間で作業を済ませている。

ほ場整備後には、ホウレンソウについて地元の株式会社K(担い手農家の経営継承で地元青年が立ち上げ、12haでホウレンソウ等の野菜や酪農に取り組む)の参入を予定している。C法人の願いは、大字全体で地域計画をつくり、大字1農場化し、若手を呼び込むことだ。しかしC法人が他地区によびかけるのは難しく、地域計画作りを通じる行政の呼びかけが不可欠だ。大字には「地域振興協議会」もあり話し合いの場になり得るとしている。

中山間地域における集落営農(法人)化の今日的原点は、中山間地域等直接支払いの集落協定だといえる。そして中山間地域農業の最大の課題は、収益作物の導入と担い手の確保だ。そのためには、集落協定の大字規模あるいはそれ以上への拡大が必須だ。集落と集落の間を取り持つのは今のところ行政支所の地域づくり係だ。そこには農協支店等への期待もある。地域農政を前進させる鍵はその辺のテコ入れにありそうだ。

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