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特集:JAは地域の生命線 国の力は地方にあり 農業新時代は協同の力で

2016.09.23 
【JA改革の本質を探る】JAの信用事業分離はなぜ問題か 農業から離れ、解体の道へ(上)一覧へ

失う総合事業性 農業振興に暗雲
福間 莞爾
総合JA研究会主宰

 JAは、正確に言うと総合農業協同組合である。総合農協とは、農水省の定義によれば信用事業を行う農協のことを言う。JAの信用事業の兼営は、古くは1906年の産業組合法の第2次改正に遡る。この改正で販売・購買・利用・信用の4種兼営産業組合が生まれた。その後、第二次大戦後のGHQによる農協法制定でも農協の信用事業の兼営は認められ、今日に至っている。

◆准組合員とセットの存在

福間氏 ここで注意すべきは、信用事業の兼営は准組合員とセットの存在であることだ。これは日本の農協が戦前の産業組合の仕組みを引き継いだからであり、産業組合においては、農家ではない地区住民を、農業振興を旨とする農協の組合員として包含する措置として准組合員制度が誕生したという経緯がある。
 このように、准組合員制度と信用事業の兼営は密接に関連しており、今回、全国的に准組合員数が正組合員数を上回るという状況の中で、政府は一気にこの問題の決着をはかろうとしているように見える。他方、JAには遅まきながら、これまでの延長線でない准組合員への本格的な対応が迫られているというべきである。
 これまでも「住専問題」、総務庁による「農協の行政監察」などのJA批判が行われてきたが、主務省の農水省は常にJAの味方であった。しかし今回は事情が違い、農水省自らが信用事業分離を打ち出してきており、この点に事態の深刻さがある。
 平成26年6月の閣議決定の「規制改革実施計画」は、JAを将来的に専門農協にして、信用事業をJAから切り離すという明確なグランドデザインのもとに描かれている。今回の農協法改正でそのほとんどが実現し、残された課題は信用・共済事業の株式会社化―JAからの信用・共済事業の分離である。
 だが、信用事業の株式会社化については、今後の金融再編にあたって金融庁も否定的とされており、実現は難しそうだ。そこで登場してくるのが、JA信用事業の信連・農林中金への事業譲渡である。これはすでに、信用事業再編強化法(JAバンク法)〈2001年制〉として措置済みであり、新たな法改正は必要とされない。

◆事業譲渡向け着々と布石

 そこで農水省は事業譲渡に的を絞って本格的に進めようとしている。それは准組合員の事業利用規制の検討期間の5年以内に実現に持ち込まれる公算が高い。すでに、その布石として、今年の3月16日の農林中金総代会で、JAバンク運営の考え方を示す「JAバンク基本方針」が改定されている。
 この方針では、JAが組織再編を行う場合、合併が基本となることに変わりはないが、JAが営農経済事業に注力するため自ら希望して信連または農林中金への信用事業譲渡(代理店化含む)を行う場合等について円滑な信用事業譲渡の実現を後押しするために必要な支援措置を設けるとしている。また、事業譲渡を行った場合の情報システムについても、農林中金の子会社をつくることで対応することとしている。
 さらに、事業譲渡を希望した場合の代理店手数料の試算、JA支店の統廃合のシミュレーションなどが行われている。もはや政府にとって事業譲渡は既定路線になっている。こうした政府の動きに対して、JAおよびJAグループの動きはいかにも鈍い。自由選択であり、JAが選ばなければ問題はないなどというのんきな考えも根強い。だが、こうした議論は安易すぎる。第一、自由選択なら今のJAにはその必要性など全くなく、どのJAもその道は選ばないだろう。
 JAにとって事業譲渡の必要性がないことを考えると、自由選択は全くの表向きの議論であって、農業振興のためという大義名分のもと、JAを事業譲渡に追い込むために、政府はすでに二つの道を用意しているように見える。
 一つは、人質にとられている准組合員の事業利用規制との天秤、つまり事業利用規制を取るか、事業譲渡の道を選ぶかの選択である。もう一つは、公認会計士監査移行にともなって内部統制等のレビューに耐えられないJAの事業譲渡の勧告である。また、すでに「JAバンク基本方針」によってJAのレベル格付けによる事業譲渡も用意されている。以上を考慮すれば、事業譲渡はJAの自由選択などではなく、政府は、すでにそうせざるを得ない状況をつくりだしてきている。これらの道が発動されれば、JAは強制的に事業譲渡に追い込まれることになる。もちろん、一概にJAと言っても都市地帯・農業地帯・中山間地帯等で置かれた状況が異なり、とりあえずは譲渡を進めやすい都市地帯や中山間地帯などのJAから進められることも想定される。

・農業から離れ、解体の道へ (上) (下)

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