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農政:持続可能な世界を拓く SDGsと協同組合

鼎談:普天間・下小野田・大金 農業・農協はだれのものか(5)2020年1月20日

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「無作為」は最悪の選択肢
普天間朝重・JAおきなわ代表理事理事長下小野田寛・JA鹿児島きもつき代表理事組合長、大金義昭文芸アナリスト

 JAはいま歴史的ともいえる「農業・組織・経営」の大きな転換期に直面しているといえる。これまでの経験が通じない構造的な環境変化にどのように対処するのか。普天間理事長、下小野田組合長、大金氏3氏の鼎談最終回は、連合会・中央会への期待そして農政へいま一番訴えたいことです。

nous20011610_1.jpg左から大金氏、普天間理事長、下小野田組合長

【連合会・中央会へ】
◆厳しい支店経営 製糖工場も赤字

 大金 連合会や中央会には、どのようなことを期待しますか。

 普天間 信用事業については、農林中金に期待するところが大きくなります。JAおきなわでは、県単一JAで信連がありませんので、農中を直接利用しています。ところが現在のマイナス金利のもとでは農中も運用が難しく、日銀も金融緩和の出口を探るどころか、世界的な金利低下局面を迎えて、マイナス金利の深掘りを模索するというように歯車が逆回転している状況です

 そうした中で農中も奨励金の引き下げを始めていますので、利ざやの縮小と農中奨励金の減額がJA経営を著しく圧迫している状態です。農中には還元力を強化するとともに、奨励金の引き下げには慎重に対応して欲しいと期待するところです。

 一方、JA全中はこうした状況をしっかりと受け止め、対応策を講じるべきです。JAおきなわでは多くの離島を抱え、そこに支店を配置して対応していますが、支店経営は厳しい状況にあります。

 大金 離島は、どんな現状にあるのですか。

 普天間 離島の支店では定年退職で職員が退職すると、人口減少や若者離れのなかで地元での人員補充ができないため、本島から職員を派遣していますが、住居費や離島手当などかなりのコストがかかります。最近ではその人数があまりに多くなってきたため、住居が見つからないという厳しい状況です。離島の農業は主にサトウキビであり、JAでも製糖工場を運営していますが、工場経営は赤字です。つまり離島支店の経営は軒並み赤字ですが、打開策を見出しにくい状況にあります。

 JA全中は国に働きかけ、政策的に離島対策を講じてほしいと思います。「離島農業振興法」のようなものをつくり、製糖工場が黒字を確保できるような制度を整備し、JAの職員住宅建設にもきちんと予算がつくような仕組みをつくってほしい。

 また、沖縄にJA全農の事務所が欲しいですね。JAおきなわは輸出戦略室をつくり、輸出に力を入れていますが、JA全農の持つ輸出ノウハウを駆使して手伝っていただきたい。

さとうきびは島を守り島は国土を守る「さとうきびは島を守り島は国土を守る」と書かれた南大東島の製糖工場の煙突

◆農業は離島を守り 離島は国を守る

 大金 この際、普天間さんの〝離島論〟を聞かせてください。

 普天間 一部の担い手に農地を集積すると、沖縄の離島はどうなるか。人口は減少しており、農業がなくなると住む人がいなくなり、島は成り立たなくなります。大規模化や担い手企業だけでは、沖縄の離島は維持できません。

 また、離島では遊休農地を放っておくと、そのままだめになってしまいます。そこでJAが農業経営をして農地を維持しておき、その後、大規模経営したいという農家が出てくれば、JAは自ら拓いた農地を譲り渡せばよい。それによって新しい担い手を育成することができる。

 与那国島のサトウキビは3000トンの生産量でしたが、新工場の建設を機に耕作放棄地をJAが借り受けて作付けし、6000トンまで拡大しました。生産が軌道に乗ると、自分もやりたいという生産者が出て、その農地を譲りました。

 JAおきなわは多くの離島を抱え、支店を置いています。その支店を農林中金が担うことはできるはずもない。総合事業を展開するJAだからできるのであって、JAおきなわにとって信用事業の代理店化はどう考えても無理で、ありえないことです。

 しかしながら今のマイナス金利のもとで、JAの経営体力もかなり弱ってきていますし、とはいえ離島は守らなければいけないという難しい環境では、やはり離島問題は安全保障問題とも絡めて国民すべての問題です。「サトウキビは島を守り、島は国土を守る」という共通認識が必要だと思いますね。

 大金 極東の島国である、この国の農業が抱える問題や課題の縮図とも言えるようなお話ですね。日本の農業が置かれている現状を、沖縄県の離島が象徴しているようにもお聞きしました。

 下小野田 JAの「強み」は「総合事業」と言いますが、縦割り組織の全国連は本当にそう思い、その「強み」を生かそうとしているのでしょうか。我々の目の前には、組合員がいます。そのことを良く分かっていただきたい。店舗統廃合というけれど、目の前には組合員がいるのです。そう簡単にはいかない。店舗には経営だけではない、いろんな機能があります。我々は「組合員とともに」をモットーにしていますが、全国連は「JAとともに」あることをもっと強く意識していただきたい。

 大金 おっしゃる通り、総合JAの「強み」を発揮するためには、全国機関の横の連携も不可欠ですね。

地域・組合員とのつながりを深める地域・組合員とのつながりを深める(家畜市場で組合員と話す下小野田組合長)

◆危機意識を持ち食料安定確保へ

 大金 農政について、いま最も訴えたいことは何ですか。

 普天間 食料自給率の向上ですね。政府は45%を目標にしていますが、現実には年々低下して、今や過去最低の37%です。日銀の金融政策と同様に、ここでも歯車が逆回転しています。人口が減り、高齢化で日本人の胃袋が縮小しているなかでTPPや日欧EPA、日米貿易協定で食料輸入が増える。だから国産は輸出せよという。こんな循環でいいのか。

 世界的な人口増加、それに気象変動やCSF(豚コレラ)などもあり、将来的に食料不足になることは明らかです。いつまでも輸入に頼るわけにはいかない。食料輸出国は自国が不作になれば、輸出を制限したり、禁止したりすることは過去にも経験しています。国が国民の食料を守るのは当然の責任である。もっと長い目で見た農政を展開してほしいですね。

 下小野田 同感です。食料の自給率と安全保障について、危機意識をしっかり持って政策を進めていただきたい。困難な農業に挑み、国民の胃袋を支えているのは地方です。従って、農業や地方の危機は結果的に都市に住む人びとの危機でもあるのです。このことを国はしっかり認識し、農業政策や地域政策に取り組んでほしい。JA全中が中心になり、グループが一丸となって、抱える問題を粘り強く国民に訴えていかなければなりません。

 大金 農業・農村・JAは、この島国で国民が安心して豊かに暮らしていくための「生命維持装置」ですからね。「だれ一人取り残さない」SDGs(持続可能な開発目標)を実現していくためにも、食料・農業・農村が抱える問題を我が事として広く国民に理解していただき、力を貸してもらう必要があります。
最後に、新年の抱負をお聞かせください。

 普天間 今年は経営的に厳しい1年になるでしょう。職員には、どんなに苦しくても逃げることなく、前に進もうと言っています。難しい時代を乗り切るために、経済事業の赤字解消や店舗統廃合など、いろんな選択肢があると思いますが、最悪の選択肢は何もしないことです。自動操縦で安全飛行できる時代ではありません。手動に切り替え、すぐに手を打つべきです。

 下小野田 日本が抱える食料・農業・農村の危機に対処するために、JAの総力を発揮する年です。個々の力は強くなくても、「チーム」としてまとまれば大きな力になります。令和の時代は「ワン・チーム」で農業を通じ、地方からこの国を盛り上げていく時代ではないでしょうか。

 大金 JAの「進化」を推し進めるためにも、下小野田さんが言われる「イノベーション」が求められているというわけすね。身の引き締まるようなメッセージや元気づけられるお話を大変ありがとうございました。

鼎談(大金他).jpg


【鼎談を終えて】
 なんと若々しく清新で骨太の思想を抱いた真摯なお二人なのだろう、と心を揺さぶられた。艱難を乗り越え、実践に鍛え上げられた信念から、説得力のあるメッセージが飛び出してくる。JA新時代を切り拓く「ニューリーダー」にふさわしい切れ味が、出会いの爽快感とともに迫って来た。ご自愛を切に祈りたい。
(大金)

【リンク】
鼎談:普天間・下小野田・大金 農業・農協はだれのものか(1)
鼎談:普天間・下小野田・大金 農業・農協はだれのものか(2)
鼎談:普天間・下小野田・大金 農業・農協はだれのものか(3)
鼎談:普天間・下小野田・大金 農業・農協はだれのものか(4)

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