農政:持続可能な世界を拓く SDGsと協同組合
鼎談:普天間・下小野田・大金 農業・農協はだれのものか(4)2020年1月17日
ワン・チームでJAの総合力発揮
普天間朝重・JAおきなわ代表理事理事長下小野田寛・JA鹿児島きもつき代表理事組合長、大金義昭文芸アナリスト
熱く語る普天間氏と下小野田氏
◆人づくり◆
対話の機会作り目線は組合員に
大金 JAの「強み」は、「協同活動」と「総合事業」(独自のソフト・サービス機能)にあると思っています。「強み」は放置すると「弱み」に転化する。お二人のお話を聞き、組合員や地域の目線でこれらの「強み」を普段からいかに鍛えるかがポイントなのだと思いました。JAの「強み」を「強み」として伸ばす役割を実際に担うのは、JAの職員です。わけてもいま、どのような職員がJAには求められているのでしょうか。
普天間 いかに「組合員目線」に立てるかですね。そのためには、組合員とのコミュニケーション能力が求められます。だからできるだけ率先してコミュニケーションの場をつくるべきです。私自身、理事長に就任したときもそうですが、各種の式典や会議などの挨拶などは、すべて自分で考え、自分の言葉で話すようにしています。
職員にはコミュニケーションを活性化する「わいわい・がやがや会議」の場をつくるよう呼びかけ、時間の許すかぎり、私も加わっています。TACの集まりや労使協議会などもそのひとつで、テーブルや机を取っ払い、膝を突き合わせて議論するように心がけています。プロジェクトチームなどの小人数の会議では、机の配置を(通常のロの字型ではなく)三角型にして議論したりします。そうすることで、トップの意向を伝えやすくなりますし、それを受けて職員も自ら考え行動するようになると思います。
大金 「神は細部に宿る」という言葉がありますが、そうした細かい配慮の積み重ねが欠かせないですね。
普天間 教育や人材育成という視点からは、幕末の長岡藩の「米百俵」が参考になります。戊辰戦争に敗れ、困窮していた長岡藩に支藩から贈られた米100俵を藩士に配らず、売却して学校の設立に充てたというものですが、「人材さえ養成しておいたら、どんなに衰えた国でも必ず盛り返せる」と藩士を説得したそうです。現在のマイナス金利のもとでのJA経営を見ると、今こそ人材の育成が必要だと感じています。
「チームきもつき」で心を一つに
下小野田 大先輩が多い組合員には失礼かも知れませんが、最近、なんとなく「組合員がかわいい」と感じることがあります。私は30代で両親を亡くしました。母親が保育園をやっていたので、園長の経験もあります。保育園で次世代を育てることと、JAで地域の次世代を育てることとが、相通じるからかも知れません。
いろんな会合にはできるだけ出席するようにしています。最初の就任から数えると、組合長8年目になります。最近思うのですが、組織のなかで自分の存在が希薄になればいいのではないかと感じています。組合長がいちいち指示して動く組織ではなく。職員が自分で考え動くようにならないと、組織はうまくやっていけないのではないか。組織がしっかり機能して時間が空けば、組合員のところを回りたいと思っています。
大金 いまも第一線で活躍するルポライターの鎌田慧さんが「労働者や市民が自ら意見や情報を発信できるようになれば、ルポライターのような職業はいずれなくなってもいいんだ」というようなことを、かつて言っていましたが、下小野田さんのお話とどこか重なるように思いますね。JA全中の副会長を務めた村上光雄さんにも、素敵な言葉がありました。村上さんは自らの石垣積みの経験から「どんな石でも収まる場所がある。捨てる石はない」と言っていますが、人づくりということでは通底するところがある。
◆青年・女性◆
直売所を基点に地域のリーダー
大金 JAの「協同活動」を支える組合員組織のなかでも、担い手や青年・女性組織はどのように位置づけていますか。
普天間 JAが支えられている感じですね。青年部や女性部の綱領の中には「JAを拠り所に」とありますが、JAも彼ら、彼女らを拠り所にしています。青年部の活動には力があり、その提言には説得力があります。いろいろなイベントを独自に実行しており、女性部もJAの一員としてJAを盛り上げています。定期的に意見交換も行っています。青年部員はJAおきなわが誕生して300人から600人に倍増しています。彼らは活動を楽しんでいる。それもこれも、JAという接着剤があってのことだと思います。
直売所の活動から地域のリーダーが生まれる
大金 愛知県JA愛知東の会長を務める河合勝正さんなどは「女性部からいただいた提案には、JAとしてすべて応えてきた」と明言しています。そんな地域の女性は元気ですし、JAの大きな支えになっています。
下小野田 女性部の皆さんのご意見は、いろいろな意味で刺激になりますね。特に男性と異なる視点からの提案には、気づかされることが少なくありません。青壮年部は力強いですよ。来る4月には初めての直売所(ファーマーズマーケット)をオープンさせますが、売り場面積では県内一の規模で、生産者や地域住民、准組合員の皆さんの交流の場にしたいと思っています。その場から何か新しいアイデアや地域の皆さんとの関係が生まれてくることを楽しみにしています。名称は、方言で「たくさん」という意味の「どっ菜(さい)市場」です。
普天間 直売所ができると、地域のリーダーが生まれますよ。JAおきなわには11か所に直売所があり、現在の青壮年部委員長は直売所の生産者の会長です。出荷者の中から、地域の生産者のまとめ役が生まれますよ。
◆准組合員◆
准組の利用規制 現実離れの議論
大金 JAの正・准組合員数の逆転などを背景に、JAの弱体化を狙う規制改革会議などが「准組合員の利用規制」を唱えてきましたが、この問題についてはどう考えていますか。政権与党は先の夏の参院選挙公約で「組合員の自主的な判断に委ねる」といった見解を明らかにしていますが、JAの「自己改革」では准組合員の運営参画などがさまざまに議論されていますね。
普天間 規制改革会議が取り上げるから問題になっているのであり、現場ではまったく意識していません。特に離島では、農業であれ、生活であれ生きていくためにはJAが頼りなんです。そんなところで准組合員の利用制限など、できるわけがない。組合員も正なのか、准なのか意識していませんよ。
下小野田 同じですね。特別な対策をとっているわけではありません。JAは地域に向き合っているので、一緒に農協の事業を盛り上げていただく相手であり、直売所を含めてJAの利用をさらに増やしていきたいと思っています。
普天間 准組合員の位置づけについても、「農業のサポーター」でいいのかどうか。私たちは総代会の後に各支店で報告会を開いていますが、正・准組合員の区別などしません。区別していたら、JAは成り立ちません。
下小野田 我々のJAでも、准組合員がこれから増えるでしょうが、そのことは農業協同組合としては大きな課題だと思っています。その課題は意識しながらも、一緒に、地域を支える仲間として、チームとして取り組んでいきたい
◆消費者・地域対策◆
地元の販売重視 食と農の接近を
大金 地域住民や消費者への働きかけは、どのようにしていますか。
普天間 ひとことで地域といっても、あまりに違いがあります。人口減少で過疎化や高齢化が進み、古くからある沖縄独自の「共同売店」も経営が成り立たなくなっています。そこにJAは移動購買車を出していますが、離島にとってもJAの購買店舗が命綱です。JAは地域の生命線という気持ちで臨んでいます。
消費者に対しては食の安全・安心の重要性と食料自給率37%の危険性を訴えたいですね。具体的には地産地消への理解の浸透です。JAでは毎年1月最後の週の土・日に地産地消をテーマにした「花と食のフェスティバル」を沖縄県と連携して開いています。15万人ほどが訪れる県内最大の農林水産物フェアです。
下小野田 今年の4月に開店予定の直売所(ファーマーズマーケット)は、食と農は近いということを発信する場にしたいと思っています。そのために農家レストランも予定しています。
昨年11月には、JA直営のラーメン店を開店しました。全国で2例目だそうですが、とんこつベースのスープや地元野菜の具を使い、地元産をアピールしています。これまで農畜産物の販売促進は都市部で展開していましたが、これからは地元の人たちにも地元の農畜産物を知ってもらうことを重視していきたいと思っています。
普天間 JAおきなわでは女性部員が法人をつくり、直売所の中でレストランを営業しています。最初は女性部でということでしたが、手挙げ方式で責任ある人が集まって運営することにしました。沖縄では子どもの貧困率が全国平均よりも高いということもあって、直売所の生産者会がNPO法人の運営する「こども食堂」を無料で提供しているところもあります。
※第5回に続く
【リンク】
鼎談:普天間・下小野田・大金 農業・農協はだれのものか(1)
鼎談:普天間・下小野田・大金 農業・農協はだれのものか(2)
鼎談:普天間・下小野田・大金 農業・農協はだれのものか(3)
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