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農政:迫る食料危機 悲鳴をあげる生産者

【迫る食料危機 悲鳴をあげる生産者】出血続き危機直面 酪農経営に早急対応を<上> 蔵王酪農センター冨士重夫理事長2022年7月1日

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コロナ禍による生乳需要の減退、ロシアのウクライナ侵攻を発端としたエネルギー危機や食料危機による生産コスト高騰など、酪農経営はかつてない危機に直面している。現場が抱える課題への対応や今後の酪農政策について蔵王酪農センターの冨士重夫理事長に提言してもらった。

蔵王酪農センター冨士重夫理事長たて.jpg蔵王酪農センター冨士重夫理事長

コロナ禍によって、学校給食需要、インバウンドを含む観光需要などの減退が引き起こされた。こうした生乳需要のマイナスが少子高齢化による全体需要の減少に拍車をかけて、脱紛・バターなどの乳製品在庫の累増となり、昨年末には、生乳廃棄の危機という事態に陥ることになった酪農経営。

今、それに加えてロシアによるウクライナへの侵略という戦争によって引き起こされたエネルギー危機、食料危機と円安によって、生産コストが高騰し、酪農経営は4月から出血し続け、経営危機に直面している。

戦争から4カ月を経て、石油、LPガス、鉱物資源、そして、小麦、トウモロコシ、油脂など飼料、食料資源や水産資源などの価格が高騰し、供給逼迫の事態となり、まさに世界的なインフレーションを引き起こしている。

これに、さらに日米の金融政策の違いによって円安が引きおこされ、輸入に依存する光熱動力費、肥料、配合飼料原料、乾牧草、小麦、大豆などの食料価格の高騰に拍車をかけている。こうしたエネルギー資源、食料資源の価格高騰という事態は、今後さらに長期化して行くと想定されている。

(1)乳価期中改定の緊急措置を早急に

蔵王酪農センターの生産コスト高騰の実態は、3月と5月の対比でみると、電気代が約140%、燃料代が約150%。飼料関係では、圧ペントウモロコシ、ヘイキューブ、ビートパルプなどの配合飼料原料が約140%、チモシー、フェスクストローなどの輸入乾牧草が約130%の高騰となっている。この結果、令和4年度に入り酪農経営は赤字が増大しつづけており、深刻な経営不安と危機に直面している。

蔵王酪農センターは、それでも70haの牧草地を有しており、自給飼料により、ある程度生産コスト高騰の打撃を緩和できるが、自給飼料基盤が少なく、輸入飼料への依存度が極めて高い都府県の経営危機は、より一層深刻となっている。高齢化、後継者不在の酪農経営は、出血が拡大し、止まらなければ離農の決断を迫られる事態で、もはや借金の余地や時間的余裕はない。

配合飼料安定基金による補てんは、財源の範囲内での価格上昇への一時的な補てんである。飼料価格が高止まりしたら補てんは少なくなり、やがて無くなる。

ましてや輸入乾牧草は、配合飼料ではないので、何の措置も無い。輸入牧草の使用割合が極めて高い酪農経営は、畜産農家より、北海道酪農より打撃は大きい。

生産者の率直な気持ちは、生産資材や食品価格は、メーカーなどの意思で値上げできるが、農家は乳代や子牛など生産した農畜産物価格を、コストを反映した価格に設定して売ることができない。なぜ農家だけが転嫁できずに赤字に陥り、苦しむのか。農産物価格もコストと連動するような仕組みにしてもらいたい。乳価を、コスト高騰に見合う水準に引き上げて、赤字の出血を、離農を、止めてもらいたい。

令和4年度の飲用乳価、加工原料乳価、加工原料乳補給金などの引き上げを期中改定する緊急措置を早急に講じてもらいたい。

また、乳業メーカーと指定団体の交渉を後押しし、早期に妥結に導くためにも、加工原料乳補給金の改定を、政治主導で、参議院選挙終了後、直ちに実施して、民間交渉の環境整備をはかる、一刻も早い対応を、してもらいたい。

(2)中長期政策の確立、農業基本法改正のポイント

緊急措置を講ずると共に、輸入資材、食料価格の高騰と供給逼迫の長期化を踏まえた、将来展望のある、中長期的な政策を打ち出す必要がある。飼料、食料の国産シェアを高めていかなければ、今後、耕種農業も畜産・酪農経営も安定は図れない。

食料危機を踏まえた、食料安全保障の立場から、日本の多様な農業生産基盤を強化する政策を抜本的に立案し、実行に移して行く好機である。まさに今、農業基本法改正の議論も始まっている。

今の基本法は、WTO体制下で、全ての関税を引き下げ、ゼロとする「貿易促進」と「国内農業政策」を黄色の政策、緑の政策との区分を行い、価格支持、不足払い、所得補償などの関連政策の予算の極小化、農業予算全体の削減といった枠締めする一方、予算を使う助成対象をプロ農家という専業農家である担い手に集中して行くという理念の下に構築されている。今や、この理念をひっくり返し、大きく転換しなければならない時代の節目を迎えている。「貿易の促進」については、TPP、RCEP、日米・日欧EPAなどによって関税水準や制度の枠組みは固まった。多国間におけるルールでも同様となる。

「国内政策」枠締めについては、黄色とか緑色とかにとらわれることなく、現場のニーズや作目や畜種ごとの特性に応じて、食料安全保障強化の視点から、様々な政策を構築して行くことができる状況にある。

助成対象も専業農家の担い手だけでなく、作目・畜種ごとの多様な担い手、地域農業という枠で様々な活動をして支える人々、直接間接を問わず農業関係者、農業と様々な形でつながる多様な人々を幅広く対象として、地域の再生、振興、活性化に取り組む人的資源を育成して行かなければならない状況となっている。

「食料安全保障」については、国内では過剰という需給状況にとらわれるのではなく、逼迫している世界、国際情勢を踏まえ、需要のある多様な用途へ、国産を仕向ける仕組みを作り、裏作も含め、農地や家畜頭数、果樹を最大限利活用して、生産基盤を強化する政策を構築して、将来に備えて行くことが求められている。

【迫る食料危機 悲鳴をあげる生産者】
出血続き危機直面 酪農経営に早急対応を<下>

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