ミツバチの大量死で調査報告 農水省2014年6月23日
「蜜蜂被害事例調査」中間取りまとめ農家、養蜂家の情報共有が不十分
農水省は平成25年度から3年間で農薬によるミツバチの被害事例に関する調査を実施しているが、25年度(25年5月30日?26年3月31日)に報告のあった被害事例について中間取りまとめを行い、合わせて「被害軽減対策の推進について」を各地方農政局などに発出した。
◆蜂群崩壊症候群の懸念はなし
この調査期間中に69件の被害事例報告があった。その90%が7月中旬から9月中旬の水稲開花期、穂ぞろい期に発生している。また巣門前に1000匹/箱以上の死虫が観察された57件のうち、蜂群(一般的には1巣箱に数万匹)当たりの死虫数が蜂群の10%未満の2000匹/箱以下のものが36件と6割強を占めているが、1万匹/箱以上の被害があったものが3件あった。
しかし、死亡虫数が多い事例でも、蜜蜂の大量失踪は報告されておらず、働き蜂のほとんどが女王蜂や幼虫などを残したまま突然いなくなり、蜜蜂の群れが維持できなくなる「蜂群崩壊症候群(CCD)」の懸念を生じさせる事例は確認されていない。
水稲開花期に発生した46件のうち60%以上で、被害が発生する直前に周辺で水稲のカメムシ防除のため殺虫剤散布がおこなわれていたとの報告があった。そのうちの12件では死虫が採取され、その大部分から殺虫剤の成分が検出された。検出された9成分のうち6成分は水稲のカメムシ防除に用いられる殺虫成分で、その内訳は以下の通り。
○ネオニコチノイド系3成分・延べ7件(クロチアニジン5件、イミダクロプリド1件、ジノテフラン1件)
○ピレスロイド系2成分・延べ11件(エトフェンプロックス9件、シラフルオフェン2件)
○フェニルピラゾール系1成分・7件(エチプロール7件)
こうしたことから、蜜蜂被害は水稲開花期に多く、「カメムシ防除に使用した殺虫剤への直接曝露が原因の可能性があると考えられた」が、「検出された殺虫剤の有効成分の濃度からは、報告された被害の全てが殺虫剤によるものかどうかはわからなかった」としている。
◆情報提供と対策実施状況
69件の被害のうち、20%で農薬使用者側から養蜂家への農薬使用時期等の情報提供が「行われていなかった」。
また、農薬使用者側が情報提供を行ったと回答した事例においても、30%の養蜂家が「情報提供を受けていない」と回答。
こうしたことから「農家と養蜂家との情報の共有が不十分」で「有効な被害軽減対策が取られていなかったことが被害に結びついた事案が多い」と農水省は推測している。
こうしたことから、農水省は今後の対策として
▽蜜蜂が水稲開花期に蜂場周辺の水田に飛来する。そのときに、カメムシ防除の農薬の曝露で被害が生じる可能性があることを水稲農家、養蜂家に周知する。
▽都道府県の関係者は、蜂場の設置場所およびその周辺の水田の農薬散布計画等の情報を相互に提供・共有し、得た情報を個々の養蜂家、周辺の水稲農家に伝える。
▽被害軽減のために、
[1]カメムシ防除の殺虫剤に暴露する確立が高い場所にはできるだけ巣箱の設置を避けるか、水稲開花期に巣箱を退避させる
[2]水稲農家も養蜂家と協力して、地域の実情に合わせて、
○蜜蜂の活動が盛んな時間帯(午前中)の農薬散布を避ける、
○蜜蜂が暴露しにくい形態の農薬(粒剤等)を使用する
などを内容とする文書を6月20日に発出した。
これは7月下旬ころからはじまるカメムシ防除前に周知徹底したいとの考えからだ。
(関連記事)
・【現場で役立つ農薬の基礎知識 2014】[5]大豆の病害虫・雑草防除のポイント(宮城県古川農業試験場)(2014.05.19)
・【現場で役立つ農薬の基礎知識 2014】[4]春夏野菜の病害虫防除 いまが確実に防除できるチャンス(2014.04.14)
・農薬の使用規制でミツバチは救われるのか(2014.03.20)
・ネオニコチノイド系農薬の安全性で見解(2014.01.08)
・農薬の蜜蜂危害防止Q&Aを公表 農水省(2013.08.27)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】水稲の斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 山口県2025年7月8日
-
なぜ米がないのか? なぜ誰も怒らないのか? 令和の米騒動を考える2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【立憲民主党】「食農支払」で農地と農業者を守る 野田佳彦代表2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【自由民主党】別枠予算で農業を成長産業に 宮下一郎総合農林政策調査会長2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【日本共産党】価格保障・所得補償で家族農業守る 田村貴昭衆議院議員2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【れいわ新選組】農業予算倍増で所得補償・備蓄増を やはた愛議員2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】集落と農地 地域の要 営農事業部門・広島市農協組合長、広島県農協中央会会長 吉川清二氏2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】若者を育てる農協に 営農事業部門・北海道農協中央会前会長、常呂町農協前会長 小野寺俊幸氏2025年7月8日
-
トランプ政権の移民摘発 収穫できず腐る野菜「農家に大きな打撃」2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】常に農協、農家のため 営農事業部門・全農鳥取県本部上席主管 尾崎博章氏2025年7月8日
-
150年間受渡し不履行がなかった堂島米市場【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月8日
-
2025参院選・各党の農政公約まとめ2025年7月8日
-
米価 6週連続低下 3600円台に2025年7月8日
-
【JA人事】JA秋田しんせい(秋田県)佐藤茂良組合長を再任(6月27日)2025年7月8日
-
【JA人事】JA北九(福岡県) 新組合長に織田孝文氏(6月27日)2025年7月8日
-
【JA人事】JAかながわ西湘(神奈川県)天野信一組合長を再任(6月26日)2025年7月8日
-
【JA人事】JAえひめ中央(愛媛県)新理事長に武市佳久氏(6月24日)2025年7月8日
-
岡山の農業を楽しく学ぶ 夏休み特別企画「食の学校2025」 JA全農おかやま2025年7月8日
-
農業高校生研修を開催 秋田北鷹高等学校、増田高等学校の生徒が参加 JA全農あきた2025年7月8日
-
「にいがたフルーツプレゼントキャンペーン」 クイズ正解者5人に「新潟県産もも5kg」 にいがた園芸農産物宣伝会2025年7月8日