農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第30回 水稲の雑草防除2019年12月6日
水稲栽培において雑草は、肥料分の収奪、光の競合、水の競合、生育場所の競合などによって水稲の生育に影響を与え、水稲の収量・品質を低下させることによって経済的被害を引き起こす。
この厄介な雑草を取り除く手段が除草剤であり、稲作労力の大きな部分を占める除草作業を大幅に軽労化できる資材である。
水稲除草剤は、有効成分の違い(枯らせる雑草の違い)や、使用時期、剤型の違いによって多数の製品があるので、自身の水田の性状(生える雑草、水持ち、土質など)に合わせて選択する必要がある。以下、除草剤の分類に関する概略を示す。
1.使用時期
除草剤は、その有効成分によって、水稲栽培においていつ頃使えばよいかが異なっており、その使用時期によって、初期除草剤、初期一発除草剤、初中期一発除草剤、中・後期除草剤などに分けられている。
(1)初期除草剤
主に代かき後~移植7日前までか、移植直後からノビエ1葉期(およそ移植5日後くらい)までに使用する除草剤であり、主に、初期のノビエ対象に使用されることが多い。
効果の持続期間は、処理条件や水管理によって変わるが、一般的に10日~14日程度であり、その後はまた雑草が生えてくる。このため、初期除草剤を使用した後には、一発除草剤や中期除草剤などの処理が必要だ。これを体系処理という。
(2)初期一発除草剤
移植初期(移植時~移植後7日後)くらいまでに使用する除草剤で、最初に登場した一発剤である。初期剤よりも長く効果を示す成分が含まれており、雑草の少ない水田などでは初期一発剤だけで雑草の被害を避けることができる場合がある。しかし、多くの場合、初期一発剤だけでは除草が追い付かず、中期剤や後期剤との体系で使用されることが多い。
(3)初中期一発除草剤
移植初期(移植時~ノビエ2.5葉期(およそ移植後14日後くらい)までに使用する除草剤で、長期に効果が持続するスルホニルウレア系除草剤が開発された際に登場した一発剤である。
一般的な効果の持続期間の目安は40日~50日程度であるが、近年はより長く効く有効成分も登場しているので、多くは、1回の処理でその作の除草が完了する。持続期間の長さなどは、土質などによって異なることが多いので、地域のJAや指導機関等によく確認して選ぶようにするとよい。
ただし、雑草の発生が多い水田では、一発除草剤を使用しても、後半の取りこぼしやクログワイやホタルイなど後発生の雑草が発生することがある。そのような場合には、発生している雑草に合わせ、中・後期剤が使用されることが多い。また、近年はヒエ剤の性能が向上し、ノビエの3葉期~4葉期まででも使用できる除草剤が多く登場しており、使用できる期間を長く取れるようになった。ただし、その場合でも、温暖化によって雑草の生育が早くなっているので、登録の範囲内でできるだけ早く使用する方が取りこぼしも少なく安定した除草効果が期待できる。
(4)中・後期除草剤
初期除草剤や一発剤と組み合わせて使用(体系処理)する除草剤である。効果の持続期間は、一般的に20日~30日程度であるので、発生している雑草などに合わせて除草剤を選定して使用する。

2.剤型
水稲除草剤には、1キロ粒剤、フロアブル剤、液剤、顆粒剤、ジャンボ剤といった剤型がある。それぞれで上手な使い方が異なるので、使用上の注意をよく確認して使用するようにする。
(1)1キロ粒剤
粒状の製剤を10aあたり1kg散布する除草剤である。この剤型はできるだけ均一に散布する方が効果が安定する。散布方法は背負い動噴による畦畔噴頭での散布が一般的だが、近年は田植え同時粒剤散布装置による散布といった方法も登場している。
(2)フロアブル剤
粘性のある液体(フロアブル)を希釈せずに10aあたり500mlを散布する製剤である。拡散性のある製剤なので、畦畔からの振り出し散布やドローンによる条状散布でも十分に効果を発揮する。近年はラジコンボートによる滴下散布や田植え同時滴下装置による田植え同時散布ができるようになっている(散布可能な方法は剤ごとに異なる)。
また、入水時に水口で散布する処理も開発されており、水量が豊富な水田では、除草作業の労力軽減に役立っている。
(3)顆粒剤
水にサラッと溶ける顆粒状の製材であり、水に希釈して10aあたり500mlを散布するか、水口で処理する製剤である。拡散性のある製剤なので、希釈水の500ml散布では、畦畔からの振り出し散布や専用散布機による条状散布でも十分に効果を発揮する。
本剤型は、入水時に水口に処理する方法が簡便なので水量が豊富な水田では、除草作業の労力軽減に大いに役立っている。
(4)ジャンボ剤
可用性のフィルム等にくるまれた製剤を、10aあたり10個とか20個を投げ入れるだけの簡単散布が売りの製材である。田面水に落ちて、製剤が拡散し、水田全域に行き渡るので、散布時に湛水状態が保たれていることが重要である。また、薬剤の拡散の邪魔になるので、表層剥離や藻の発生が無い状態で使用する必要がある。
(5)豆つぶ剤
大きなつぶの製材で、10aあたり250gを柄杓等で投げ入れるだけの簡単散布が売りの製材である。拡散性が非常によく、田面水に落ちて、製剤が拡散し、水田全域に行き渡るので、散布時に湛水状態が保たれていることが重要である。また、薬剤の拡散の邪魔になるので、表層剥離や藻の発生が無い状態で使用する必要なのは、ジャンボ剤と同様である。
(6)液剤
液状の製剤を水に希釈して散布する。希釈倍数と散布水量はラベルで良く確認する。
既に生えている雑草の茎葉に動噴などで直接散布することが必要で散布労力がかかる。特に、中後期での液剤散布は、重い動噴を背負って水田に入っての散布になるので、非常な重労働である。
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