農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第31回 水稲の雑草防除22019年12月13日
厄介な水田雑草を上手に取り除くには、雑草が発生前かできるだけ小さい時にその雑草に効果のある除草剤を水田内に均一に広げておくとより成果があがる。
このような状態をつくるには、どんな雑草にどんな有効成分が効果あるのか、どん剤型があって、どんな使用方法が効果的なのかを知り、正しい使用方法を把握しておく必要がある。
以降、処理時期別の除草剤の種類と使い方を解説する。
1.初期除草剤
主に代かき後~移植7日前までか、移植直後からノビエ1葉期(およそ移植5日後くらい)までに使用する除草剤であり、主に、初期のノビエをはじめとした水田一年生雑草を対象に使用されることが多い。
その他の対象となる雑草は、マツバイ、ホタルイ、ヘラオモダカ、ヒルムシロ、ウリカワなどの初期発生個体である。
初期剤は、使用時期によって使い方が異なり、また、移植水稲か直播かによって使用する除草剤が異なってくる。
(1) 移植前使用
代かき時~移植前7日までに使用する。一般に、代かき直後から、ヒエ等の種子発生の一年生雑草が発生し、田植えまでに雑草の葉齢が進み、田植えの邪魔になったり、水稲の初期生育を邪魔したりするので、これらを抑えるために使用する。
移植前に使用した場合は移植7日前までに使用するようにする。田植えをする前は、田植えしやすいように事前前に水を落とすのが通例であるが、除草剤を使用後に7日間を経ずに落水した場合、水田水とともに除草剤の成分が水田外に流出する恐れがあるため、環境影響を抑える観点から、移植前処理は、移植の7日前までに行うことが必須である。
(2) 移植直後・田植同時施用
移植直後からノビエなど水田一年生雑草もイネに負けじと生育が活発になる。これを抑えるために初期剤が使用される。移植直後は、イネ苗自体も弱く、除草剤による薬害も受けやすい時期であるため、移植後から除草剤を処理する日数には十分に注意する。移植直後から使用できる除草剤は比較的安心して使用できるので、移植直後から使用できる除草剤を選ぶと良い。その目安となるのが、田植同時施用であり、その適用はある除草剤は田植え直後であっても安心して使用できる。
また、田植え同時であれば、田植え後の再び田んぼに行って除草剤を散布する作業が省けるので、労力軽減のために田植え同時処理を行っている生産者も多い。
(3) 移植後処理
最も一般的な使用方法で、一般的にヒエの1~1.5葉期までに使用される。移植直後には散布できない除草剤でも、できるだけ移植5日後までには使用するようにしたい。5日後を超えると、ヒエ等の葉齢が進み、初期剤では除草できない大きさになっている場合が多いからだ。適用が移植10日前まである場合でも、できるだけ早めに使う方が効果も安定する。
(4) 直播
文字通り、移植ではなく、種を直接播種する栽培方法に対応した除草剤である。
乾田直播と湛水直播とがあるので、使用する前にどちらの方法に登録を持っているかよく確認して使用するようにしてほしい。直播は移植水稲よりも雑草を受けやすく、播種、出芽直後のイネは除草剤の影響を受けやすいため、使用できる除草剤に限りがある。
また、イネが雑草の被害を受けることのない大きさになるまで雑草害から守ってやる必要があるため、移植水稲よりも何度も除草剤散布を行う必要がある場合もあるので注意が必要だ。
(5) 無人ヘリ
無人ヘリを利用して散布できる除草剤である。田んぼに自ら入る必要がなく、大面積を短時間に処理できるので、散布労力の軽減に役立つ。もし、使用する除草剤が無人ヘリ登録を持っているようであれば試してみるのも一考である。
無人ヘリ登録を持っている除草剤であれば、ドローン(マルチローター)でも散布できるので、山間地などでの除草作業を軽減できる可能性を秘めている。
(6) 水口施用
水量が豊富な場合には、省力的かつ効率的に散布できる方法である。
処理は、水口から除草剤を流し込むだけで、あとは入水時の水流にのって除草剤成分が拡散し、除草効果を発揮する。この方法は、水持ちが良く、水量が多いなどある程度の制限はあるが、もし条件が合致するようであれば一度試してみる価値のある方法である。
別表に、主な初期除草剤の一覧を示したので参考にしてほしい。
この場合、目安となる使用方法を示したのみなので、実際の使用の当たっては農薬ラベルをよく確認し、正しく、安全に使用するようにしてほしい。
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