農薬:防除学習帖
農薬の上手な施用法1【防除学習帖】第81回2020年12月11日
これまで防除学習帖では、水稲や野菜の病害虫雑草の防除法の基本を紹介してきた。
そのいずれにおいても、効率的に防除を行うには、多くの場合、農薬は必須な資材である。
この農薬には様々な製剤があって使い方も様々であり、これを安全にかつ上手に使いこなすためには、農薬の取り扱いやそれぞれに応じた施用法を知る必要がある。
そこで、今回から複数に分けて、農薬の製剤や上手な施用法について紹介する。
1.農薬とは
農薬とは、農薬取締法において、「農薬とは、農作物(樹木及び農林産物を含む)を害する菌、センチュウ、ダニ、昆虫、ねずみ、草その他の動植物またはウイルスの防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤、その他の薬剤(その薬剤を原料または材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む)および、農作物等の生理機能の増進または抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。なお、上記の防除のために利用される天敵は、これを農薬とみなす。」と定義されている。
この定義によれば、農薬に当てはまるのは、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、殺線虫剤、除草剤、殺鼠剤、展着剤、植物成長調整剤、農薬入り肥料があり、およそ作物の病害虫雑草の防除に使われるもの全ての薬剤等が含まれる。
農薬は、農林水産省によって登録されて初めて農業現場で使用することができるが、登録される項目は、登録番号や、農薬の種類、名称、物理化学的性状並びに有効成分とその他の成分、各成分の種類および含有量、内容量、適用病害虫雑草、使用方法、人畜毒があるものについては解毒方法、水産動植物への影響、引火性、爆発性、皮膚への害、貯蔵上の注意事項、製造場所の名称・住所、最終有効年月など多岐に渡る。
実際の農薬ラベルにはこれらを表記しなければならないことになっているが、実際の使用にあたり使用者が特に遵守しなければならない項目は、「適用作物」、「使用量または希釈倍数」、「収穫前使用日数」、「使用回数」の4つである。これらは、散布された農薬の残留に大きな影響を及ぼす項目であり、使用した農産物の安全性に影響のある項目である。
2.農薬の名称
農薬散布の際に使われる農薬の名称は、一般的には「商品名」が使われる。この他、「有効成分名」「一般名」、「ISO名」、「化学名」があるが、農薬を使用する場合に認識しておかなければならないのは、「商品名」と「有効成分名」である。
商品名は、基本的に名前+剤型という形をとり、○○乳剤や◇◇粒剤などある程度の使い方が類推できるものがほとんどである。一般的な利用ではこの商品名だけで十分なのだが、抵抗性害虫や耐性菌、抵抗性雑草対応を行う場合や、複数の有効成分を含む混合剤を使用するような場合には、「有効成分名」を把握しておく必要がある。
抵抗性や耐性は同じ有効成分を繰り返し使用し続けることで発生するため、抵抗性や耐性を回避あるいは対策するためには、異なる作用性を示す「有効成分」を使用する必要があるためである。このため、抵抗性や耐性が発生している病害虫に対して農薬を使用する場合は、商品名だけでなく有効成分を確認する必要があることを理解しておいてほしい。
一方、農薬の使用回数をカウントする場合、有効成分に注意しなければならないケースというのは、混合剤を使用する場合である。一般に農薬商品名と有効成分名は全く無関係である場合が多く、同じ有効成分を含有する農薬であっても、商品名が違うというケースが多くある。ところが、1作期あたりの農薬の使用回数は有効成分ごとに決められており、農薬の残留検査が行われる場合は「商品名」ではなく「有効成分名」ごとに行われる。このため、使用回数をカウントする場合は、有効成分でカウントする必要があるので、常に有効成分は何かを意識しておかなければならないのである。
3.分類
農薬を上手に使用する際に必要な分類は「剤型」によるものと、「有効成分」によるものである。特に「剤型」は、用いる施用方法や使い勝手、散布労力、環境影響に大きく影響する要素である。
(1)剤型による分類
農薬が効果を発揮するためには、有効成分をムラなく農作物に付着させる必要があり、そのことを実現し、散布しやすいように工夫されているのが剤型である。剤型は、有効成分の性状(固体か液体か、水に溶けるか溶けないか)に合わせて多数のものがある。
大きく分けて、水に希釈して散布するもの(水和剤、エマルション剤、液剤、フロアブル剤、SC剤、水和剤、水溶剤など)と製剤をそのまま散布するもの(粉剤、粒剤、糞粒剤、ジャンボ剤など)、煙化して充満させるもの(くん煙剤)、ガス状の有効成分を直接施用するもの(くん蒸剤)、そのまま塗り付けるもの(塗付剤、ペースト)、製剤そのものを食べさせるもの(ベイト剤)、液体そのものを希釈せずに使用するもの(油剤)、肥料に農薬を混ぜたもの(農薬入り肥料)などがある。
今回は、水に希釈して散布する製剤の概略を紹介する。
重要な記事
最新の記事
-
【第46回農協人文化賞】地域包括医療を推進 厚生事業部門部門・長野県厚生連佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏2025年7月15日
-
【特殊報】ナシにフタモンマダラメイガ 県内で初めて確認 島根県2025年7月15日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 島根県内全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
【注意報】野菜類、花き類、ダイズにオオタバコガ 滋賀県内全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 栃木県全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
米価 7週連続で低下 5kg3602円2025年7月15日
-
農業法人 米販売先 農協系統がメインは23% 日本農業法人協会2025年7月15日
-
2025年産米 前年比56万t増の見込み 意向調査概要2025年7月15日
-
テキサス洪水被害は対岸の火事か 公務員削減が安全・安心を脅かす 農林水産行政にも影響2025年7月15日
-
コメ増産政策に転換で加工用米制度も見直しが急務【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月15日
-
青森米パックご飯ご愛顧感謝キャンペーン 抽選で200人にQUOカード JA全農あおもり2025年7月15日
-
農機担当者向け「コンプライアンス研修会」を初開催 JA全農やまなし2025年7月15日
-
農機フェア2025を開催 2日間で5309人が来場 富山県JAグループ2025年7月15日
-
GREEN×EXPO2027 特別仕様ナンバープレート交付記念セレモニー開く 横浜市2025年7月15日
-
「幻の卵屋さん」アリオ北砂で5年ぶり出店 日本たまごかけごはん研究所2025年7月15日
-
子ども向け農業体験プログラム「KUBOTA AGRI FRONTの夏休み2025」開催 クボタ2025年7月15日
-
香春町と包括連携協定締結 東洋ライス2025年7月15日
-
官民連携 南相馬市みらい農業学校生へ農業経営相談機能等を提供 AgriweB2025年7月15日
-
鳥インフル 米ワシントン州などからの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年7月15日
-
鳥インフル ブラジルからの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年7月15日